表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第二章 デスゲーム開始
92/225

91話 まさかの伏兵

 向かって来る魔物の数を確認する。


 クレイジーラットが30、レッドボアが7匹、フライングスネイクが12匹、ライジングホースが4匹、ロブスタークラブが5匹だった。

 それぞれ移動速度が違うため、種類ごとに集団となってこちらへ向かって来ている。


 ははは、大量じゃねえかよ。


 各個撃破するには都合が良かったんだろうが、手榴弾でまとめて始末したいんだよな。

 俺としてはむしろ面倒だ。


 う~ん、やはり速度が一番速いライジングホースが突出してるな。


 どうする?

 先にバトルライフルで仕留めてしまうか?


 だけど、弾はなるべく節約したい。

 なんとか足を止めさせて、1匹でも手榴弾でまとめて倒したい。


 これは、レッグスナイプで足を止めるしかないでしょう。


 こいつらの足首から下は鉄でできているらしいから、まきびしは効果が無いんだよね。

 でも、膝の関節を狙うレッグスナイプなら問題無いんだ。


 まったく、凄いスキルを編み出してしまったもんだぜ。


 だが、足が速いから次の矢を装填している時間は無いだろう。

 だから、うまく狙っても弾を節約できるのは2匹だけだな。


 残り2匹はバトルライフルで始末する。


 よし! 作戦は決まった。



 ボウガンの射程に入った瞬間、先頭を走っていたライジングホースの膝の関節部分を狙って射る。

 すると、狙い通り膝を撃ち抜かれたライジングホースが派手に転がった。


 しかし、ここで予想外の事が起きた。

 なんと、すぐ後ろを走っていた2匹のライジングホースも転倒に巻き込まれて転がったのだ。


 こいつはラッキーだ。


 心の中で思わずガッツポーズをする。


 弾を節約できた事にホクホク顔になって、装填されていた2本目の矢で残り1匹のライジングホースの足も潰す。

 関節部の面積がでかい上に、まっすぐにこちらに向かって来るため当てるのは容易たやすかった。


 転倒に巻き込まれたライジングホースはすぐに起き上がっていたが、かなりの速度で転倒したので怪我でもしたのかよろよろしている。

 その脇をクレイジーラットとフライングスネークの集団があざ笑うかのように追い抜いて行った。

 思わず笑みが零れる。


 よーし、いいぞ。

 どうやら、ライジングホースも巻き込んで火炎瓶を使えそうだ。



 フライングスネークとクレイジーラットがついにまきびし地帯に突入する。

 転倒しただけのライジングホースも遅れて到着するが、まきびしを踏みつけて転げまわっているクレイジーラットとフライングスネークが邪魔になって前に進むことができないようだった。

 小部屋への入り口の通路の前で押し合いへし合いの渋滞を作る。


 頃合を見計らい火炎瓶を投げつける。


 ボン! という音と同時に、何匹ものクレイジーラットとフライングスネークが火達磨になる。

 足を引きずっていたライジングホースにも炎が移ると、もだえながら炎の壁の前に立ち往生していた。


 どうだ!

 地の利を活かしてタイミングさえ合えば、たった1本の火炎瓶でもこの大戦果だ。


 もっとも、魔物達の主力であるロブスタークラブだけは未だ後方を移動中で無傷なわけだが。


 まあ、問題無い。

 こいつはもともと火炎瓶も効果は無いからな。


 突入する時に邪魔にならないように、入り口付近の邪魔なまきびしを処理する。

 炎の方は手榴弾の爆風で消えるだろう。


 ロブスタークラブが戦場に到着した頃には火炎瓶の火勢は大分弱くなっていた。


 M67破裂手榴弾を2つガンボックスから取り出す。

 レバーをにぎるとピンを抜く。


 よし! やるぞ。


 入り口の壁を遮蔽物しゃへいぶつにして手榴弾を2つ同時に放り投げる。

 5秒程するとババーン! と大きな炸裂音が2回ほぼ同時に鳴り響く。


 入り口からそっと覗いてみると、心許なかった火炎瓶の炎は爆風で完全に消えていた。

 魔物の様子を窺う。


 爆心地に群れていた魔物達の大半はバラバラの肉片になっていた。

 かろうじて生き残っていた魔物はどいつもこいつも慢心相違なようで、体中に突き刺さっていた破片の先から紫色の体液をだらだらと零していた。

 密集していただけに、たった2つの手榴弾でほとんど壊滅状態である。


 自分でやっておいてなんだが、かなりグロイ……

 凄まじい威力だ。


 そして、入り口付近に蒔いていたまきびしも爆風で完全に散っているようだった。

 これなら、突入には問題無さそうである。


 ガンボックスからM84スタングレネードを1つ取り出す。

 ピンを抜くと、まだ生き残っていた魔物の群れに向かって放り込んだ。


 バーン! という大きい炸裂音と同時に背にしていた入り口から強烈な光が漏れる。


 バトルライフルを握る手に力を込めると間髪入れずに魔物の群れに突撃した。



 粉塵が舞い散っていた戦場。

 視界はとてもではないが良好とは言えない。


 しかし、魔物達は強烈な音と光で完全に無力化しているようで、俺が目の前に姿をさらしているというのに何の反応も示さなかった。


 スタングレネードの効果が有効であることを確認すると、粉塵を掻き分けて視界が確保できる近距離まで肉薄する。

 戦闘可能な魔物の状態をHPを見ながら確認する。


 クレイジーラットとフライングスネークの大半が即死で、レッドボアも即死かHPが1桁の瀕死状態。

 ライジングホースは弱っているがHPがそこそこ残っていて、ロブスタークラブはダメージを受けているが1匹も死んでいない。


 まあ、想定内だ。


 バトルライフルで倒すターゲットを確認する。

 フライングスネーク2匹、クレイジーラット1匹、レッドボア1匹、ライジングホース2匹だ。

 ロブスタークラブ5匹は、ショットガンのベネリM3のスラグ弾で始末する。


 クレイジーラットにライフルの弾はもったいないが、接近戦では一瞬の判断ミスがすぐに死に繋がる。

 だから、弾の節約のためにベレッタに持ち替えるなどはしないで、反撃を許さずにバトルライフルのまま速攻で始末する。


 戦闘にイレギュラーはつきもの。

 作戦はなるべくシンプルであるべきだ。


 数瞬の間にどうするのかを決めると、バトルライフルのHK417のトリガーを引き連射する。

 ズァーオン、ズァーオンと、まるで金属が擦れるような重厚な音が魔物の残骸が散らばっている戦場じごくに鳴り響く。


 肩に伝わってきたリコイルの強さは完全にいかれていた。

 こいつの前ではアサルトライフルは豆鉄砲のようなものだろう。


 バトルライフルの弾が着弾すると魔物の肉片がえぐり取られる様に弾け飛ぶ。

 被弾した魔物は1匹の例外も無くその場で即死していた。


 あとはロブスタークラブだけだ。


 ロブスタークラブは足が欠けていたり片方の鋏が無くなっていたが、概ね5匹すべてが健在だった。

 あわよくば手榴弾でと思っていたのだが、案の定駄目だったようだ。


 まあ、どちらにせよ、すでに勝敗は決している。


 おそらくは未だに目がくらんでいるのだろう。

 ロブスタークラブは完全に棒立ち状態だった。


 ベネリM3のショットガンを取り出す。

 モードはセミオートで装填している弾はスラグ弾だ。


 こいつの威力は4000ジュールはある。

 アンチマテリアルライフルには到底及ばないが、手で持って発射できる銃器の中では最強クラスだろう。


 1ジュールは、100gの重さを1m移動させるのに必要なエネルギーで、エアガンの威力が1ジュールである。

 9mmの弾は500ジュールくらいだから、スラグ弾装着のベネリM3はベレッタのおおよそ8倍くらいの威力になるわけだ。


 ちなみに、HK417のバトルライフルが3200ジュールほどで、アサルトライフルでもっとも有名なM4カービンが1500ジュールほどである。


 小気味好い音をリズミカルに鳴らして、5匹のロブスタークラブに鼻歌交じりで弾丸を連続で撃ち込んでいく。

 叩きこまれた弾丸は、ドボン、ドポンと大きな石を水の中に投げ入れたようなくぐもった音を鳴らして、まるで障子を撃ち抜くかのように軽々と貫通していた。


 兵器を使った近代戦術の前では異世界の魔物と言えど所詮はこの程度である。

 淡々とした作業のような戦闘に高揚としていた心はだんだんと白けていった。


 圧倒的な強者とはかくあるものなのだろうな。

 だけど、これは兵器の力で俺の力ではない。


 そして、弾が無くなれば……


 撃ち終わった後には、ロブスタークラブのどてっぱらに大きなクレーターが出来上がっていた。


 「スラグ弾を使うまでも無かったな」


 甲羅の装甲がどの程度かわからなかったとは言え、スラグ弾の使用は完全にオーバーキルだ。


 さてと、あとは瀕死の重傷で転がっているクレイジーラットとフライングスネークだけだ。


 だが、虫の息とは言え油断はしない。

 窮鼠猫を噛むなど洒落にならないからな。


 魔物には決して近づかない。

 狡猾に投げナイフと手裏剣で遠距離から止めを刺すと、油断無くHPの残っている魔物が1匹もいない事を確認した。



 魔物を殲滅した頃には憂鬱な気持ちはすっかりと晴れていた。

 そして、完全勝利した事による高揚感が沸き上がってくる。


 今回は、さすがに完全に決まったな。

 主人公の面目躍如と言った所か。


 フフフと笑いながら目を閉じて格好をつけて歩く。


 「いぎゃぁああ」


 突如、足に強烈な痛みを感じてその場に倒れる。


 まさか伏兵かと思いきや、どうやら自分で蒔いたまきびしを踏んづけてしまっただけのようだった。

 しくしく。


 どうしても決まらない男、達也の戦いはつづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ