81話 恐怖に打ち勝つ秘密兵器
今日もレギオンのダンジョンに来ている。
レギオンのダンジョンの前には、昨日には姿の見えなかった商人さんがいた。
討伐クエストが出ると冒険者が多く集まってくるため、その冒険者目当てに商人さんが臨時に出張買取に来るのだ。
ただ、商人達はダンジョンに潜った人から戦利品を購入しているのだが、当然ながら買い取り価格は町で売るより安い。
しかし、町まで戻らずにまたダンジョンへと行けるので大半の者が利用するのである。
昨日は討伐クエストが発令されたばかりで誰も居なかったようだが、今日は他にも冒険者の姿がちらほら見える。
火炎瓶を大量に持ってきたのだが、使う時は注意しなければいけないだろう。
そういえばレベルが上がったんだった。
日坂部達也 年齢18
冒険者レベル12→13
HP65→70
MP0
力55→60
魔力0
体力55→60
速さ60→65
命中120→130
装備
ベレッタMODEL92(攻撃力100)9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×15発
2連装ボウガン(攻撃力60×2)
矢筒 鉄の矢×50(攻撃力20)
ロングソード(攻撃力10)
ナイフ(解体用)
革のラウンドシールド改(防御力30)
革の鎧改(防御力40)
ポシェット 火炎瓶×3 ソーン(最高品質)×10 特効薬(最高品質)×7 毒消し×4
ジッポライター
まきびし
リュック
お金
1061220エル
アイテム
皮のマント 水筒(水)弦(予備) コッキング紐 矢筒(木の矢×3 鉄の矢尻の矢×40)
火炎瓶×7 小型ハンマー(採取用) なめし皮の風呂敷
在庫
真珠×20 革のヘルメットランプ(防御力10) ナイフ(採取用)
POINT 1
GUNBOX
BENELLI MODEL 3(攻撃力50×15)12GAUGE(00バックショット)×7
HK417D(攻撃力600)7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×20
9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×20発
12GAUGE(ライフルドスラグ)×6
12GAUGE(BBバードショット)×4
12GAUGE(00バックショット)×4
7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×20
M67 FRAGMENTATION GRENADE(攻撃力1000)×5
M84 STUN GRENADE×3
VICTORINOX SOLDIER(アーミーナイフ)
NIGHT VISION ATN PS15-3I FOM 1400(暗視ゴーグル)
NEW EQUIP
革のラウンドシールド改
革の鎧改
M84 STUN GRENADE
殺人兎を40匹仕留めたことでスタングレネードを入手した。
こいつは殺傷能力はないが、大きな音と光が出て敵をショック状態にすることができる。
最低でも5秒間は目標を完全に無力化できる優れものだ。
1.5m程の距離に100万カンデラの強烈な光と180デシベルの爆音を轟かして、レバーが外れてから1~2秒という短い時間で爆発する。
誤爆しても死ぬ事はないので使い勝手を考えて短く作ってあるのだ。
鎧と盾の改造はしたが、まだナイフや手裏剣を仕込んでいないので防御力は変わらない。
火炎瓶は10個持ってきた。
ソーンと特効薬は多めに持ってきている。
さて、それじゃあ行ってみましょう。
ダンジョンに入ろうとすると、入り口から2人の冒険者が逃げるように飛び出してきた。
全身傷だらけで酷い怪我をしている。
「ちきしょう! みんな死んじまった」
「おい、大丈夫か?」
心配して声を掛けると、悔しそうに地面を拳で殴っていた冒険者が顔を上げる。
「ああ、大丈夫だ。お前達も今から行くのか? なら大部屋には行くなよ? 絶対に死ぬぞ」
罰が悪そうな顔をして立ち上がった冒険者の2人は、それだけ言うとよろよろと何処かへ歩いて行った。
そして、間髪入れずに違う冒険者達がダンジョンから飛び出してきた。
「だめだ、次から次へと魔物が襲ってきて対処できねえ」
「魔物の数が多すぎるんだよ」
「どうするんだよ? 戦ってる最中にどんどん他の場所からも集まってきやがるんだぞ」
「ギルドの討伐クエスト発令が遅すぎたんだよ」
どうやら、かなり旗色が悪いようだ。
そして、モンスターパニックとも違うらしい。
何があったのか、逃げてきた冒険者に話しを聞いてみる。
「すいません。いったいダンジョンの中で何があったんですか?」
「あん? ああ、魔物が大部屋から大量に溢れてきたんだよ」
詳しく話を聞くと、大部屋までは何の問題も無く行けたのだそうだが、大部屋から大量の魔物が雪崩の如く溢れ出してきたそうで、そのあまりの数の多さに探索していた冒険者達が総崩れになったそうだ。
そして、その魔物の集団がダンジョン中に連鎖して、今頃は阿鼻叫喚の地獄絵図になっているだろうとの事だった。
「師匠……僕たちは大丈夫なんでしょうか?」
デールが不安そうな顔で尋ねてくる。
「何事も絶対はないからな。そうならないように最善を尽くそう」
弟子達3人がブルブルと震えていた。
秘氷のダンジョンで死に掛けた事を思い出したのかもしれない。
まずいな、恐怖で竦んでしまっているみたいだ。
今日は中止するという選択肢もあるのだが、俺達が行けば助けられる命もあるだろう。
そして、弟子達のは精神的な問題であって戦力的には充分やれる。
しょうがない、勇気が出るように秘密兵器の紹介でもしておくか。
いずれにせよ、先に説明しておかないと混乱するだろうしな。
ダンジョンの入り口から離れた静かな場所に移動すると、士気を上げるために弟子達の前でデモンストレーションをする。
「弟子よ! 恐れることはない。なぜなら、俺達には秘密兵器があるのだ。今から説明するので心して聞くように」
恐怖を払拭させるために、なるべく独裁者の演説みたいに雄大にそれでいてユーモラスに語ってみせる。
3人は震えながらだったが真剣な表情で頷いていた。
「まず、これはまきびしと言う。こうして蒔いて踏むと痛いわけだ。これで魔物が怯んだ所を攻撃して倒すんだ」
「「「師匠! それは汚いのではありませんか?」」」
3人揃って汚いと突っ込んできた。
「うるさい、戦いに卑怯も汚いもないのだ」
この世界の人達はみんなまきびしが汚いと言うよな?
そんなに汚いかな?
それとも、汚いと感じない俺の心が、すでに汚れてしまっているのだろうか?
…………なるべく人前で使うのは止めておこう。
次に火炎瓶について3人に説明する。
火炎瓶の蒸留酒を少しこぼしてジッポライターで火を点けると、3人は火を点けた瞬間にびくりとしていた。
どうやら、火炎瓶の前にジッポライターに驚いたようだ。
さらに、火が点いた液体にも驚いたようで大きく開いた口をぱくぱくとさせていた。
「これは火炎瓶と言う秘密兵器だ。こいつを魔物の集団に投げつけてやれば、一気に焼き殺して殲滅する事ができる。俺の切り札なんでな、他の冒険者には内緒にしておいてくれよ」
弟子達3人は、まだ驚きで声が出ないのかコクコクと頷いて返事をしていた。
こいつはインパクトがあったようだな。
3人の目を見てみると、すでに恐怖は無くなっているようで怯えの色は見当たらない。
どうやら、上手くいったようだ。




