74話 別れ、そして新たなる冒険へ
ダンジョンから出ると、自分の力不足についてセリア達に考えていたことを伝える。
「今の俺では、お前達と力の差がありすぎて完全に場違いみたいなんだ。だから……」
「やだぁ! たっつんはセレナと一緒にいるのぅ」
説明の途中、セレナが叫びながら抱きついてきた。
セリアの方は予想していたのか、いつもの腕を組んだ体勢でじっと俺を見ていた。
「待ってくれ、セレナ。あくまで少しの間だけなんだ。俺が鍛えて強くなるまでの間だけだ」
「だったら、セレナが魔物を瀕死にするから、たっつんがそれに留めを刺せばいいのぅ」
倒させてあげると言われて、情けない自分に苦渋の顔でセレナの言葉を黙って聞いていた。
「セレナ! 止めなさい。達也がそれを望んでいるのなら、いくらでもその機会はあったでしょう? なら、達也はそれを良しとしないのよ。だったら、セレナの言っている事は、弱い達也に魔物を倒させてあげると朝蹴っているのと同じ事よ。達也の事を思うのなら、これ以上達也の自尊心を傷つけるような真似は止めなさい」
セリアがセレナを諌めてくれた。
はは、まったく。
セリアはいい女だ。
セリア達におんぶで抱っこで倒して貰ってレベルだけ上がっても俺は強くはならない。
自分より圧倒的にステータスの低い相手に勝てるだけの、戦い方を知らない間抜けが出来あがるだけだ。
だから、自分の力でやらないと意味がないんだ。
前回は救助される立場だったが、今は共に戦う仲間なんだ。
戦えないやつなんか、いらないんだよ。
もっとも、これは今までの志の問題においての建前だ。
実際の所は、デスゲームの所為でもっと切実な問題に変わってしまっている。
デスゲームの内容がどんなものになるのかはまだわからない。
しかし、予測はできる。
マイクエストの討伐条件に仲間可や銃可があった。
ここから、デスゲームでの条件がどういったものになるのかを予測できるか?
そう、1人だけで戦えるようにしておかなければいけない。
そして、銃器を扱わずに戦えるようにしなければいけない。
そうしないと、危険だと判断したのだ。
セレナは目に涙をためると『たっつん、ごめんなさい』と泣きながら謝ってきた。
気にしてないよと頭を撫でると、さっきまで泣いていたセレナはもうニコニコと笑っていた。
ほんとにセレナは子供だよな。
ギルドへ戻ると分け前を受け取る。
受け取った金額は80万エルだった。
ほとんど何もしてないのに80万エルだ。
3人で分けたのだから240万エルも稼いだことになる。
時間ができたからと、急遽探したちょっとしたクエストだぜ?
確か、セリア達はBランク冒険者だったな。
高ランク冒険者のクエストは割りがいいんだろうな。
そして、後は解散するだけとなった。
「達也、私達もどんどん強くなるだろうから、ちんたらしてると差がさらに広がるだけだからね」
「わかってるよ。なんとかするさ」
「たっつん、たまには遊びに来てもいいんだよね?」
「ああ、もちろんだ」
「やた!」
『何か連絡がある時はギルドに』と言うとセリア達と別れた。
別れ際にセリアが『ほんとに馬鹿ね、まあそういう男は嫌いじゃないけどね』と呟いていたのだが、俺には聞こえていなかった。




