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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第二章 デスゲーム開始
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73話 実力の差

 それにしても、俺が魔物を倒すことができてないな。


 大きく息を吸って深呼吸する。


 セリア達とレベル差がありすぎなんだよ。

 あいつらレベル30台だもんな。

 俺なんかレベル12だぜ?

 このレベル差だからな、しょうがないさ。

 ははは。


 「…………」


 まあ、1匹でも倒せればレベルは上がるんだ。

 これから頑張ればいい。



 しかし、その後も俺は雑魚の魔物以外は倒せなかった。


 セリア達は次に何をするのかがわかっていた。

 即座に適切に動いて魔物を確実に始末する。


 ステータスやレベル差だけでは無くて、戦闘における錬度がまるで違ったのだ。


 目的の植物を発見すると俺だけがリュックに大量に入れる。

 セリアに俺だけが持つのか聞くと『分け前を均等にあげるのだから当然でしょ?』と返答された。


 どうやら、俺は荷物持ちらしいぜ。


 まあ、確かにこの2人に荷物を持たせると戦力がダウンしそうだ。

 特にセレナはスピードが命だからな。


 それに正直な所、俺はほとんど役に立ってない。

 妥当な判断だろう。

 はは、情けねえ。


 そして、帰り道の途中に中型の魔物が現れた。


 キラーパンサー

 レベル25

 HP120

 MP0

 力180

 魔力

 体力100

 速さ220

 命中150


 「達也! 気をつけて。こいつは結構速いわよ? 油断すれば咽をがぶりだから」


 セリアが警告してきた。


 その瞬間、キラーパンサーが動いたようだった。

 セレナも同時に動いていたようだが、俺はその姿を捉える事ができていない。


 どこに行った? と思った時には、視界の左端でセレナとキラーパンサーが戦っていた。


 うぅ、これは……無理だ。

 戦いの次元が違う。


 おろおろしてセリアを見る。


 「邪魔になるから手は出さないで」


 セリアはそう言うと、槍を構えながらキラーパンサーとの間合いを少しづつ詰めていた。


 槍の間合いに入るとセリアの体に雷が走る。

 次の瞬間にはキラーパンサーの頭が弾け飛んでいた。


 あきらかに次元の違う戦いに俺は呆然となる。

 強いとはわかっていたつもりなんだけど、ここまで違うとはな。


 どうしよう?

 俺は完全に場違いだ。


 俺がこの2人とパーティを組んでいるのはあきらかにおかしい。


 俺は確かに昔より強くなった。

 雑魚が相手なら無双できるくらいにはなった。

 でもそれは、低きを見てそれより強いと慢心していただけなんだ。


 俺は、上には上がいるという事を失念していた。


 そういえば、エミリーさんに『達也君は強いの?』と聞かれて、ゴブリンなら50匹くらい相手にできますよとか、見栄を張ってしまったな。


 ああ、死にたい。

 完全に黒歴史だ。

 今ならはっきりと『俺は弱いです』と答えるだろう。


 「達也、キラーパンサーを解体するから手伝って」


 戦闘が終わるとセリアが呼びかけてきた。

 ショックを隠しきれず、項垂うなだれながらセリアの傍へ向かう。


 「キラーパンサーの毛皮は高値で売れるのよ。だから、毛皮を傷つけないように、セレナには手加減させて注意を引いて貰ったんだから」


 セリアの言葉に愕然とする。


 あれでまだ手加減をしていただと?


 そういえば、セレナの速度は327だった。

 速度220程度のキラーパンサーでは相手にならないだろう。


 あまりのショックに、しょんぼりとしながら解体作業を手伝う。


 「たっつん、どしたのぅ?」


 ショックで元気のなかった俺を見て心配したのか、セレナが声を掛けてくる。

 俺はうつむいて何も答えない。


 「ほっときなさい。自分との力の差を目の当たりにしてしまって、気後れしているのよ」


 手厳しいな。

 だが、その通りだ。


 ダンジョンの入り口へ戻るまでの間、俺はずっと黙っていた。

 そんな俺を、セレナが心配そうな顔でちらちらと見てくる。


 「……そんなの承知の上で仲間になってるのよ? 荷物を運んで貰えるだけでこっちは大助かりなんだから」


 セリアも何か慰めような言葉を言っていたようだが、しかし、セリアのそんな言葉も今の俺の耳には入っていなかった。

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