72話 密林のダンジョン
ここは密林のダンジョンである。
洞窟の中だというのに、なぜか草や木が生い茂っていた。
植物独特の青臭い匂いが周辺に立ち込めている。
どういう原理なのかはわからないが、さすがはファンタジー世界といった所だ。
ここで火を使ったら大惨事になるから火炎瓶は封印だろう。
そして、ここは密林だけあって多彩な魔物が出現する。
植物系の魔物から虫系の魔物、さらには中型の動物系の魔物までと盛りだくさんだ。
カワゲイラ
レベル6
HP30
MP0
力30
魔力0
体力30
速さ50
命中20
ハゲアキ
レベル14
HP120
MP0
力80
魔力0
体力110
速さ20
命中35
クロメリメン
レベル18
HP150
MP0
力100
魔力0
体力80
速さ120
命中60
ブラッドプラント
レベル22
HP210
MP0
力180
魔力0
体力200
速さ20
命中50
カワゲイラ20匹、ハゲアキ7匹、クロメリメン15匹、ブラッドプラント3匹が来た。
「達也は飛ぶやつを落として、後は雑魚を始末して。セレナはいつも通りに撹乱しながら数を減らして。私は、あのタフなブラッドプラントをやるわ」
セリアが指示を出す。
雑魚はカワゲイラだよな?
こいつはシロアリをでかくしたみたいなやつだ。
飛ぶやつはクロメリメンで上半身が白い蛾みたいなやつだ。
こいつらは羽の部分に穴を開けてやればすぐに落ちる。
セレナが疾風の如く飛び出したかと思うと、すでに敵陣で魔物を斬りつけていた。
相変わらず速い。
俺としては素早く動き回るセレナに誤射が怖いので、極力援護射撃はしないようにしている。
まあ、セレナが苦戦する事はまったくないんだけどね。
念のためセレナとは射線が反対になるように矢を射る。
俺がカワゲイラ2匹を仕留めてから次の矢の装填が終わるまでに、セレナは10匹くらいは斬っていた。
殲滅速度が桁違いだ。
セレナを見ると、剣には風が纏わりついているのか剣の周りの空間が少し歪んで見える。
2~3匹をまとめて斬っているようで剣のリーチがあきらかにおかしかった。
たぶん、ソニックブレードのスキルだろう。
俺はまったく役に立ってないぞ?
そして、クロメリンが飛んだ。
「よっしゃあ! 俺にまかせろ!」
鼻息を荒くして叫ぶと、どうだと言わんばかりにすぐに射落とす。
セリア達が強いのはわかってるんだが、これでは俺の立つ瀬がないからな。
しかし、俺が射落とすと同時にクロメリン10匹以上が一斉に飛びまわった。
ちょっと、手に負えないんですけど?
俺が唖然としているとすぐにセレナが宙を舞った。
セレナは3秒間くらい浮遊すると次々とクロメリンの羽を斬り落とす。
斬られたクロメリンは木の実のようにぽとりと地面に落ちて、後にはただ、斬り落とされた薄羽がひらひらと空中を漂っていた。
空を華麗に舞うセレナが幻想的で思わず魅入ってしまう。
「達也!」
「あっ! すまん!」
セリアの声で我に返ると、まだ空中に残っていたクロメリンを急いで射落とす。
地上を見ると、羽を切り落とされたクロメリンが地べたを這いずるようにゆっくりと移動している。
飛べないクロメリンはただの動きの遅い芋虫だ。
あとはセレナが斬り続けて殲滅するだけだろう。
下手に俺が援護するとセレナに当たりそうだ。
セリアを援護しよう。
セリアはすでに1匹のブラッドプラントを仕留めていた。
すぐに残っているブラッドプラントに矢を射る。
ドスドスと2発連続して矢が刺さるが、ブラットプラントはほとんど無反応。
ブラッドプラントに突き系の攻撃は効果が薄いみたいで、ダメージが5しか入っていなかった。
セリアの戦闘をちらりと見ると、やはりというか槍を使うセリアは相性が悪いようで、槍を突くのではなく刃先で払うように戦っていた。
ずいぶんと戦い難そうだ。
何かダメージを多く与える方法は無いか?
そうだ! 鉄の矢尻の矢を使ってみよう。
矢尻の部分がトランプのスペードのように広がっているから、斬撃のような効果があるんだ。
さらに掠めて斬るように射れば切り裂くこともできるかもしれない。
急所の位置がわかれば良かったんだけど、下調べをしてないからわからないんだよな。
まあ、わかっていてもなかなか当てられないんだけど。
リュックの中から鉄の矢尻の矢を取り出すと、急いで装填して即座に射る。
予想通り20もダメージが入った。
しかし、射る事ができたのはそれだけだった。
残りは、矢尻の矢をリュックから取り出している間にセリアが倒してしまっていたからだ。
それならばと、セレナの方を見るとニコニコとした笑顔で俺を見ている。
戦闘はすでに終わっていた。
小細工など通用しない。
本物の強さを見せつけられる。
俺は、まったく役に立っていなかった。




