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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第二章 デスゲーム開始
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60話 パーティ結成

 「たっつん、これなあにぃ?」


 「これか? これはまきびしと言ってな、忍者という世を忍ぶ者が使う道具だ。追いかけてくる敵がいるだろ? こうやって蒔いて、踏んだら痛くなる」


 「あんた、よくそんな汚いことを思いつくわね?」


 「あははは、忍者汚い! 忍者!」


 「うるさい、戦いに卑怯も汚いもないのだ」



 今は休憩中だ。

 さすがに連戦による連戦で疲れた。


 だから、最後の大部屋を前に休憩をしようとなって、そしてまたセレナの質問攻めが始まっていたと言うわけだ。


 あれから、俺のレベルは上がらなかった。

 セリアとセレナが、あっという間にすべて倒してしまっていたからだ。

 しかも、油断する事も無くすべて確実に息の根を止めて。


 俺はと言えば、空に飛んでる魔物を撃ち落とすだけ。

 ボウガンでは火力が足りないから、魔物に止めをさす事ができなくて経験値も入らない。

 甘くはないと言う事か。


 それよりも、戦闘の方は本当に楽だったんだよね。

 いつもみたいに距離を取るために走り回る必要がなかったからかな?


 前衛職がいるだけで後衛職がこんなに楽なんて知らなかったぜ。


 あれ? ちょっと待って。

 何かおかしくね?


 普通の状態なら後衛職の人は前衛職がいるんだよね?


 俺がボッチで不遇なだけじゃねえか!

 しくしく。



 「そういえば、達也はダンジョン探索は1人でするの?」


 「そうだけど?」


 俺が1人、心の中で自虐しているとセリアが訊ねてきた。


 「なんで……ああそうか、あの誹謗中傷の所為か」


 「セリア達こそ、他の人達とパーティを組まないと聞いているけど何か理由があるのか?」


 「そうね……。悪意を持って近づいてくる人達ばかりだったから」


 セリアが疲れたようなあきらめたような顔で答える。


 まあ、あれだけ強くてかわいければ何処も狙ってくるだろうからな。

 どうやら、セリア達も大変らしい。


 「さあ、そろそろ休憩もいいでしょう。行きましょう」


 俺達は最後の大部屋へと向かった。

 セリアが言うには、そこには大量の魔物がいるだろうとのことだ。



 大部屋の広さは200m四方はあった。

 ちらりと覗くと間違いなく150匹は居て、中央付近に集まって何かを食べているようだった。


 どうするんだこの数?

 いくらセレナとセリアでも1度に捌き切れる量じゃないだろ?


 「おい、ちょっと数が多くないか?」


 「確かに、予想していた数よりは多いわね」


 「あきらめて戻るか?」


 「いいえ、何も問題無いわ。まず、私とセレナで魔法による先制攻撃をするから、気づかれないように注意して」


 セリアが、大した事ではないと言わんばかりな顔で答える。


 どうやら、余裕みたいだ。


 魔物に気づかれないように身を隠していると、セリアとセレナがなにやらぶつぶつと呪文を唱え始めた。


 「サイクロン!」


 セレナが叫ぶと、魔物達の中心部で50mくらいの規模の竜巻が発生する。


 中央付近にいたすべての魔物が一瞬で竜巻に巻き込まれる。

 竜巻が消えると、魔物が中央に折り重なるように集められていた。


 「サンダーボルト!」


 竜巻が収まると同時にセリアが叫ぶ。

 魔物達の上空からピシャアと轟音と同時に巨大な雷が落ちた。


 セリアの放った強烈な一撃が決まると、魔物達の70~80匹が一瞬にして黒焦げになり、生き残っていた魔物も相当なダメージを受けたのかよろよろふらふらだった。

 たった2つの呪文で150匹近くいた魔物達の集団が一瞬にして半壊していた。


 圧倒的なまでの魔法の殲滅力。


 そういえばナタリアさんが言っていた。

 上級冒険者になるための条件が魔法を使える事だと。



 セリアが魔法を打ち終わると同時に、セレナが魔物達に突っ込んで弱っていた魔物達に次々と止めを刺していた。

 しかし、そのせいで多勢の魔物に囲まれて逃げ道が無くなってしまう。

 あわやと思うも、次の瞬間には空に浮かんであっけなく囲みから脱出すると、空中で旋回してまた敵陣へと突っ込んで行った。

 セレナは機動力を遺憾なく発揮してまさに獅子奮迅の活躍だった。


 それとは対称的にセリアは足を止め1匹づつ確実に敵を殲滅していた。

 その堅実でまったく隙のない立ち回りは歴戦の戦士そのもので、俺は安心してセリアの後ろから援護射撃をすることができた。


 しばらくすると、魔物たちは動きを捉えられないセレナに業を煮やしたのか動きを止めているセリアに向かって殺到した。


 襲い掛かってきた魔物の数は全部で7体。

 これはやばいと、矢で援護してなんとか2匹は足止めをするが、残りの5匹の魔物は四方から同時にセリアに襲い掛かっていた。


 次の瞬間、セリアの体からいなずまが走る。

 セリアの体が残像を残してぶれたと思ったら、雷が落ちたかのような何かが破裂するような音がして、気づいたら襲い掛かっていたすべての魔物の頭が弾け飛んでいた。


 速すぎて何も見えなかったが、おそらくはセリアがとんでもない速さで突きを放ったのだろう。

 援護なんてまったく必要なかったみたいだ。


 その後は完全に消化試合で、セレナが突っ込んで撹乱してはセリアが止めを刺していた。

 俺はと言えば、2人の戦いの邪魔にならないように離れた位置にいる魔物を中心に攻撃しているだけだった。



 そして、お目当てのきのこを採取すると帰路につく。


 「たっつんと、もうお別れなのぅ?」


 ダンジョンの帰り道、セレナはしょんぼりしてセリアの顔を見ては何度も言っていた。

 これでお別れかと思うと俺も名残惜しくなる。


 ダンジョンから出るとセリアがセレナに何事かを言っていた。

 そして、セレナが何処かに行ってしまう。


 「達也、1つ質問したいことがあるの。達也はセレナの事をどう思う?」


 礼を言って去ろうかと思っているとセリアが話し掛けてきた。


 「え? いや……かわいいかなと」


 「そうじゃなくて、仕草とか雰囲気とかよ」


 セリアがもどかしそうに何かを伝えようとしていた。

 セリアの言葉に、俺はなんとなくだが何を言いたいのかの察しがついた。


 「子供っぽいと言いたいのか? いや、あれは子供だな。幼児退行か何かなのか? 強い精神的ショックを受けた時なんかになってしまうと聞いた事があるが」


 「そう……それを知っているのなら話しは早いわ。10年前にね、私達の両親が殺されたのよ。私はその時いなかったのだけど、セレナはその場所に居合わせてしまったらしくて。そして、その時に心を閉ざしてしまったのよ」


 セリアは昔の事を辛そうに語り始めた。

 今の元気なセレナからは想像できないような過去の話に思わず動揺してしまう。


 「セレナは廃人のような絶望的な状態だったわ。それが、5年前くらいに急に回復してきてやっと今の状態まで回復したのよ。だから、体は大人でも精神年齢は5歳の女の子と変わらないの」


 なるほど。

 セレナが子供のような理由はわかった。


 そして、疑問に思った事を質問する。


 「どうして、その話しを俺にしたんだ?」


 「本題に入るわね、セレナの状態を理解したうえで私達とパーティを組まない?」


 セリアの願ってもない提案に、二つ返事で答えてしまいそうになるが堪える。

 自分で言って悲しくなるが、俺みたいな雑魚とパーティを組んでも2人のメリットは少ないはずだ。


 「どうして俺なんだ? 他のやつらは断ったんだろ?」


 「セレナは昔の心の傷の所為で悪意に対してとても敏感なのよ。だから、悪意のある人には決して懐かない。そのセレナが達也にあんなに懐いていたからよ。達也が意外と戦えるのもわかったしね」


 「……そうか。それなら、俺としても願ったりだ」


 「当然だけど、セレナに手を出さないと言う条件付きだけどね」


 「わかってるよ。俺もさすがに子供には手を出さんよ」


 話しがまとまるとセリアがセレナを呼んだ。

 セリアがセレナにパーティを組む事になったと伝えると、セレナが嬉しそうに俺に抱きついてきた。


 「たっつん!」


 「ぎゃわぁああ」


 いきなりで、びっくりしてしまった。


 それにしても、胸の感触がたまらん。

 うへへへへ。


 セレナの胸の感触に思わずへらへらしてしていると、しばらくして後ろにいるセリアの殺気に気づく。

 セリアは左手を右肘に右手を左肘に握るように腕を組んで、俺をゴミを見るような目でめつけていた。


 まずい!

 これは、気持ち良くなんかないと、何でもないとアピールして誤魔化さねば。


 セリアに愛想笑いを向けて、思わずニマニマとにやけてしまう顔を必死で隠す。


 こうして俺は、セリアとセレナの双子とパーティを組む事になった。

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