表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
52/225

51話 産業スパイ?

 洞穴のダンジョンは完全に踏破とうはした。


 今日は近場にある他のダンジョンへと行ってみるか?


 「お兄ちゃん、買い物に行きたいんだけど、少しだけ店番をお願いしてもいい?」


 次のダンジョンの事を考えていると、ミュルリが店番を頼んできた。

 最近はお店が忙しくて買い物も満足に行けなかったらしい。


 ミュルリは『すぐ戻ってくるから、それまでお願いね』と、買い物へ行ってしまった。


 う~ん、新しいダンジョンへ行きたかったんだがしょうがないか。

 こういった時に他にも従業員がいればいいのだけどね。


 特効薬を売りに出してから何人も雇用して欲しいという人が訪ねてきていた。

 しかし、親方は『特効薬の製法を盗むためだけに来た連中だ』と言って頑として雇わなかったんだ。


 親方曰く『見ればわかる』だそうだ。


 俺も、親方のように人を見る目を養いたいもんだね。



 どれくらい時間が経っただろう?

 そろそろミュルリが帰ってきてもいいんじゃないか? と思っていた頃だっただろうか?


 ニット帽を目深に被ったいかにも怪しいおじさんがお店に入ってくると、突然店内を挙動不審にキョロキョロとしだしたのだ。


 俺はぴーんときたね。

 あれは親方が言っていた産業スパイだ、とね。


 俺の目は誤魔化せないよ?


 そんな事を考えながら不審なおじさんを見ていると、向こうから話しかけてきた。


 「すいませんが、貴方は誰ですか? この家とはどんな関係ですか?」


 この人はいきなり何を言ってるんだ? と思ったが、しかし俺はすぐに従業員の素性調査だろうなと見抜いていた。


 なるほどね、従業員から懐柔するわけか。

 そうはさせんぞ!


 「俺は達也といいます。この家の家族みたいなもんです。」


 俺が毅然とした態度ではっきりと答えると、不審なおじさんはショックを受けていたようだった。


 ただの従業員なら簡単に懐柔できると思ったのだろうな。

 だが、この俺がいる限りやらせはせんぞ!


 そうこうしていると、ミュルリが戻ってきた。


 「ただいま、あれ? お客さん? いらっしゃいま……」


 ミュルリが不審な男の顔を見ると、動きが止まった。


 「おとうさ~ん! うぁぁぁん」


 そして、泣きながらその男に抱きついていた。


 違いました。

 産業スパイではありませんでした。

 どうやら、親方の息子さんだったみたいです。


 ミュルリに親方を呼んでくると伝えると研究室へと走る。


 「親方! 息子さんが戻ってきましたよ」


 「またわしを騙すつもりか?」


 「今、お店でミュルリと一緒ですよ」


 「む、息子や~!」


 俺を見ていぶかんでいた親方は、叫びながら研究室を出て行った。


 工房から店の中を覗くと、親方は息子さんと涙しながら謝り合っている所だった。


 とりあえず、今日は店仕舞いですな。


 ナタリアさんに連絡してきますと伝え、店の看板をそっと準備中に変えるとギルドへ向かった。



 ギルドに着くとナタリアさんとエミリーさんに挨拶する。

 ナタリアさんの『昨日はごちそうさまでした』というお礼に軽く答えると、旦那さんが帰ってきた事を伝えた。


 ガタン! とイスを鳴らしてナタリアさんが立ち上がる。


 「ああ、ロイド」


 ナタリアさんが旦那さんの名前を愛おしそうに呟いていた。


 きっと、すぐにでも会いに行きたいのだろう。

 しかし、仕事があるためかそわそわとしてもどかしそうにしていた。


 すると、事情を察したようすのエミリーさんが『私に任せなさい』と言って事務所の奥へ消えて行った。

 そして、しばらくするとあの腹の出たギルド長をつれて戻って来た。


 「事情は聞きました。ナタリア君、エミリー君が頑張ってくれるそうですから会いに行ってあげなさい」


 ナタリアさんはギルド長とエミリーさんに何度もお礼を言うと事務所へ消える。

 ギルド長の後ろではエミリーさんが親指を立てていた。


 俺はエミリーさんを見直したよ。

 やっぱりナタリアさんの友達なんだよな。

 それに、ギルド長もなんだかんだで良い人なんだな。


 ナタリアさんは、着替えをして戻って来るとそのまま工房へと向かったようだった。

 ギルド長はすぐに奥へ戻って行ったので、残っていたエミリーさんと話しをする。


 「それにしても、俺はエミリーさんの事を見直しましたよ」


 俺が褒めると、エミリーさんは『見直すとはどういうこと?』と最初は怒っていたが『まあね』とまんざらでもなさそうな顔をしていた。


 「それにしても、あのギルド長がよく許可してくれましたね」


 「ああ、それね。ギルドの上層部の方で特効薬の効果が正式に実証されたのよ。それで、ナタリアは特効薬の発明者の身内だから重要人物として認識されてるってわけ。要はVIPあつかいよ」


 「はあ、裏があったんですね。でも、何でそんな事をエミリーさんが知ってるんです?」


 「それは、ひ、み、つ」


 エミリーさんが人差し指を口に当てウインクしていた。


 どうやら裏があったようだ。

 それにしても、どうしてそんな情報をエミリーさんが知っているのだろう?


 エミリーさんは謎の人だよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ