49話 戦利品の価値
町に戻ると真珠を25個売った。
買取価格が安くなることを想定して少し多めに売ったのだが、平均6万エルくらいで売れたために150万エルといった大金になっていた。
素材屋さんに『こんなに売っても値崩れしないのだろうか?』と聞くと笑いながら問題ないよと言われた。
いくらでも持ってきてくれとの事だ。
どうやら真珠の市場の規模がまるで違うらしい。
西の都か帝都へ持って行くと高値で売れるんだそうだ。
次に肉屋のおばちゃんの所へ行く。
久しぶりに顔を出すと、おばちゃんの方から嬉しそうに声を掛けてきた。
『達也ちゃんは、殺人兎にでも殺られてしまったんじゃないかと思ってたよ』と、おばちゃんは縁起でもない冗談を言って笑っていた。
はははと、愛想笑いをして答える。
「それで、今日は何の肉を持ってきたんだい?」
「殺人兎の肉を持ってきました」
陽気に聞いてきたおばちゃんに殺人兎の肉を3匹分出す。
おばちゃんはパンと手を叩いて、やったと大喜びだ。
かなりおいしいと聞いていただけあって、やっぱり人気のある肉らしい。
1匹4000エルでの買い取りと高額だった。
販売の売値は2倍くらいなのかな?
何気なく殺人兎の販売値段を見ると、1kg12000エルと書いてあった。
兎肉は1匹2kgはある。
おいおい、6倍で販売してるのか?
あまりの暴利に値段を見て噴出すと、おばちゃんはその太った体で慌てたように値札を隠していた。
「達也ちゃんはしょうがないね、おまけで1匹5000エルにするよ」
どうやら、かなり高級なお肉らしいです。
15000エルを受け取ると武器屋へ向かった。
「親父! 殺人兎の鉈を持ってきてやったぞ」
「なに!? 達坊この馬鹿野郎! 殺人兎はまだ危険だから手を出すなと言っただろう」
武器屋に入って、いつものように声を掛けるも親父は怒っていた。
まあ、これは想定内だよな。
俺だって殺人兎と戦うつもりはまったくなかったしね。
面倒だが何とか説得しないとな。
まずは、自分のレベルとステータスを見せる。
親父は思わず『ウッ』と唸ると『真珠貝タートルか?』と聞いてきた。
自信満々に、こくりと頷き肯定する。
親父は蒸留酒で倒せることを知ってるからな。
「もうレベルが9になってやがる……いったい何十匹の真珠貝タートルを狩ったんだ?」
「30匹」
親父は絶句していた。
そして、親父の頭がフリーズ状態の間に『たまたま弱っていた殺人兎1匹と遭遇したから倒した』としれっと嘘をついた。
まあ、親父は俺が銃という兵器を持ってる事を知らないからな。
嘘も方便というやつだ。
許してくれ。
親父に殺人兎の鉈を8000エルで売ると2連装ボウガンの制作を依頼する。
資金に余裕があったので鉄の矢も20本購入した。
使う矢の差で劇的に威力が変わるのを知ってるからな。
使う道具に掛ける金はケチらんよ。
当然ながら、ライトボウガンは2連装ボウガンができるまでの繋ぎで売らずに持っておく。
最後に、殺人兎の肉を親父にプレゼントすると伝える。
「達坊、お前、殺人兎の肉がいくらか知っているのか?」
親父はさすがに貰えないと思ったのか、神妙な顔をして確認してくる。
「1キロ12000エルだった。親父には世話になってるからなあ。2連装ボウガンの制作を頼むぜ?」
「うぉおおお! 達坊~! おっしゃあ、最高の仕上がりにしてやるからな」
涙しながら感動しているようすの親父を尻目に、工房へと戻った。
工房へ戻ると、ミュルリに殺人兎の肉を渡す。
ナタリアさんにも持って行ってくれと頼むと『お母さん受け取るかなあ?』とやっぱり娘からでも駄目みたいだ。
さすがはナタリアさん。
筋金入りの生真面目さだ。
まあ、駄目元でいいからとミュルリにお願いだけはしておく。
よし! 後はギルドへ行くだけだ。




