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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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47話 恐怖の殺人兎

 「いやぁあああ!」


 それは、2階層の出口の中間くらいまで戻って来たくらいの事だろうか。

 どこからか、女性の悲鳴が聞こえてきた。


 同時に魔物の叫び声のようなものも聞こえてくる。

 どうやら、魔物に追われて逃げているようだ。


 そして、だんだんと大きくなっている声の調子から、どうやらこちらへ近づいて来ているようである。


 助けに入るべきか?


 しかし、ここで追われて逃げ切れないような魔物といったら……

 とりあえず、岩場の影に隠れよう。



 岩場の影に身を隠している間に、2人の女性冒険者の姿が視界に入ってきた。


 年齢は15歳くらいだろうか?

 女性の1人は、露出度の高い赤いビキニアーマーのような軽装で腰にはレイピアを装備していた。

 逆立った鮮やかな赤髪が妙に印象的な美少女だ。


 もう1人の女性は、胸までしかない赤いベストに腰に布をスカーフのように巻いただけの露出度の高い服を着て、手には短弓のような小さい弓を握っていた。

 そして、腰まで伸びた長い銀髪は後ろで束ねて、細長い青い宝石が付いたイヤリングを耳からぶら下げている。

 何より特徴的なのは銀髪から突き出ている長い耳、あれはエルフか?

 こちらもかなりの軽装で2人ともかなりの美人だった。


 そして、その後ろからは、やはりというか殺人兎の集団が迫ってきていた。


 う~ん、これはだめですな。


 追いかけてくる殺人兎は全部で5匹で、逃げている2人も相当足が速いようだが殺人兎の方が速い。

 もう2つ3つ角を曲がる頃にはきっと追いつかれているだろう。


 俺が強かったらなあ……


 こう、さっそうと現れて殺人兎を瞬殺。

 そして、お嬢さん大丈夫ですか?

 好きです! 結婚して下さい! とか言われちゃうんだろうけどな。


 しかし、現実では俺の方が殺人兎に瞬殺されてしまうのである。

 しくしく。


 よし! 見なかった事にしよう。


 岩場の影からこっそりと顔を出して、逃げている2人の女性冒険者を傍観する。


 それにしても、なんて露出度の高い服だ! 実にけしからん!

 そして、走るたびに、たゆんたゆんと揺れる胸! 実にいい! いやいや、実にけしからん!


 興奮して覗いていると、なぜか弓を持ったエルフの女性と目が合ってしまった。

 エルフの女性はにこりと俺に微笑ほほえむと、相方に合図をしてこちらへと向けて進路を変更してきた。


 なんだと?

 こんな岩の隙間に身を隠している、この俺に気づくというのか?

 まさかニュー○イプか?


 「あれ?」


 しかし、自分の現在地を確認すると愕然とする。

 何時いつの間にか、岩場の影から身を乗り出していた。




 「こっちに来るな!」


 叫んで、慌てて岩場から逃げ出す。


 赤髪の女性は『薄情者!』と叫びながら接近してくる。

 エルフの女性の方は無言だった。


 あいつら俺に殺人兎を擦り付けるつもりだ。


 そして、2人組の女性の方が俺よりあきらかに足が速い。

 じりじりと距離を詰められる。


 このままだと完全に擦り付けられるぞ?

 何とかしなければ。


 前方に見えてきた岩場を見てひらめく。


 よし! あの岩場の影を利用する。

 2人の姿が見えなくなった瞬間が勝負だ。


 そして、岩場の影に差し掛かると進路をこっそりと左へと転進させた。


 俺が進路を変更した事に気づかなかったようで、2人組の女性の方は真っ直ぐ進んで行く。

 そして、こちらに気づいた時にはもう遅い。


 赤髪の女性は『死んじゃえ馬鹿!』とこちらを見て罵っていたが、エルフの女性は呪文? だろうか何事かブツブツと呟いていた。


 殺人兎との距離はあいつらの方が10mは近い。

 間違いなく殺人兎はあちらへと向かうだろう。


 冗談じゃないっての。

 殺人兎に手を出すからだろう?

 自業自得だ。


 そして、俺は安堵のため息をつ……けなかった。


 殺人兎が、なぜかこちらへ進路を変更したのだ。


 殺人兎

 レベル10

 HP50

 MP0

 力40

 魔力0

 体力40

 速さ90

 命中40


 赤髪の女性は『ばーか! ばーか! ざまあみろ!』と遠くで叫ぶと角を曲がり見えなくなる。

 エルフの女性の方は終始無言でこちらを見つめていて、見えなくなる直前に『ごめんなさい』と言ったように見えた。


 ちきしょう!

 なんでこうなるんだ?


 すでに、後方10mくらいに殺人兎3匹が迫っていた。

 その50m離れて残り2匹。


 くそっ!


 「仕方が無い」


 ベレッタを懐から抜いて安全装置を解除すると、振り向きざまに3連射した。


 固まっていた3匹の真ん中にいた殺人兎に当たったようで、1匹が転がるようにして倒れる。


 振り向いた時には、すでに5mくらいの距離まで肉薄されていた。

 予想以上に速い。


 残り2匹に銃口を向けると、左と右へと大きく逃げて距離を取られた。

 すぐに、後方にいる残り2匹に狙いを変更するも、しかし殺人兎達は大きく左右に移動してジグザグに動き始める。

 これは、十中八九弾を当てられない。


 そう、今までの俺ならここで詰んでいただろう。

 だが、今の俺にはショットガンがあった。



 手に持っていたベレッタをガンボックスに仕舞うと、ショットガンのベネリM3を装備する。

 モードはポンプアクションの手動だ。

 接近戦でジャム(薬莢詰まり)は命取りだから、ここでは手動による信頼性が欲しい。


 殺人兎はジグザグに回避行動を取っていた。

 残念ながら、今の俺はその動きをほとんど認識することができていない。


 左に大きく跳んだ殺人兎が間髪いれずに俺に襲い掛かってきた。

 殺人兎へ銃口を向けると狙いなど定めずにすぐにトリガーを引いた。


 ズバァーンと爽快な轟音が鳴り響く。

 至近距離で散弾を受けた殺人兎は、まるでトラックにでもねられたかのように吹き飛んで転がった。


 カシャと軽快な音を鳴らしてすぐにポンプアクションで次弾を装填する。

 そして、続けざまに右から突っ込もうとしていた殺人兎も吹き飛ばす。


 ショットガンは接近戦で強いと思われがちだが、あまりに近すぎると弾がばらけて(広がる)くれないから命中率が落ちる。

 威力の減衰が少なくて、弾も50~100センチくらいばらけてくれる10m~20mくらいがベストな距離だ。


 当然ながら今は近すぎだった。

 だから、少しでも距離が離れている間にと、狙いなど定めずに勘だけで撃ったのだ。


 よし、間近の脅威は排除した。

 これより、接近戦から近接戦へと移行する。


 モードをセミオートへと切り替えて、20mほど後方にいる残り2匹と戦闘を開始する。


 ジグザグに近づいてくる2匹が交差する瞬間に、タイミングだけでトリガーを引く。

 そして、そのまま連射しようとして……


 最初の1発だけで戦闘が終了している事に気がついた。


 終わってみれば、ショットガンによる圧倒的な制圧力を見せつけられた戦いだった。

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