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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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42話 営業がたりなぁぁぁい!

 なんてことだ! 作戦2は完全に失敗だった。


 ちきしょう、まさか注文が逆に増えるとは。

 これじゃあ、前よりも多く作らないといけないのかよ。


 悔しさで地団太を踏む。

 しかし、何か腑に落ちない事に気が付いて地団駄を踏むのを止める。


 あれ? ちょっと待てよ?

 良く考えてみようか?


 特効薬になった時点で、俺の労力は変わらないんじゃないのか?

 特効薬を作るのは親方なんだから。


 そうだよ!

 俺は何も損なんかしていなかったんだ。

 ただ、得をしなかっただけ。

 今までと状況は何も変わってないんだよ。


 ノーカン! ノーカン! ノーカン! はい! ノーカウント! ノーカウントです。


 そこまで考えが至ると気持ちが楽になってきた。


 深呼吸をして気持ちを落ち着けていると、ミュルリが戻ってきた親方に特効薬が100個も売れたと嬉しそうに報告していた。

 親方は『それみたことか!』と大はしゃぎで『こうしては居れん、今までは午前中だけだったが午後からも作るぞ!』と気合を入れていた。


 なんですと?


 ハニワのような呆けた顔になってしまう。


 うぎゃあああ!

 まずい、まずい、まずい。

 親方がやる気になってしまった。


 なんとか阻止せねば!


 「親方! 親方はもう歳なんですから無理をすると体を壊しますよ」


 「うるさい! 今のわしは、誰にも止められんのじゃあ!」


 親方はうるさそうに俺を突き飛ばすと、張り切ったように特効薬を作り始めた。


 …………終わった。

 こうなると親方は誰にも止められない。


 がくりと膝をついて崩れる。


 いやいやいや、落ち着け俺。

 あきらめたらそこで試合終了だぞ?

 この問題を解決する方法を考えるんだ。


 特効薬を作っている親方の隣で腕を組んで考える。


 えーと、そもそもの問題は何だ?


 それは、息子さんが帰って来ないことだ。

 息子さんが居れば、俺がここまでソーン作りをする事も無かったはずなんだ。

 だから、息子さんが帰ってくればすべて解決する。

 つまり、この問題を解決するにはどうやったら息子さんが帰ってくるか? と考えればいいわけだ。


 そこまで考えがまとまると、ではどうするのか? と手段の模索へ思考が移行する。


 今までは、特効薬が完成したらという不確かな条件だった。

 しかし、現在は完成した。

 そうなると以前に親方に言った通り、特効薬を広める事がもっとも有効な手段になる。


 ならば……


 作戦3

 ファイナルミッションを開始する。




 「親方、お話しがあるのですが?」


 「なんじゃ?」


 俺が話しかけると、親方は特効薬作りに忙しいのかうるさそうに答えていた。


 まずは、親方に特効薬が売れない理由を説明する。

 親方は『うーん』と気難しい顔で唸りながらも黙って聞いていた。


 以前の親方なら聞く耳持たぬだったのだが、成長がみられて少し嬉しい。

 人生、生きている限り成長期だ。


 次に、商売を成功させるための3大要素を説明する。

 それは、営業、商品、接客である。


 親方の作った特効薬という商品、ミュルリのきめ細やかなで丁寧な接客と、2つは完璧にそろっている。

 しかし、肝心の営業に至っては商品を店に並べているだけというお粗末な状態だった。

 どんなに良い商品を用意しても、どんなに良い接客をしようと、お客さんがそれを知らなければ何の意味もないのである。


 それを説明すると親方は『むむ、ではどうすれば良いのじゃ?』と納得したようで対策を聞いてきた。

 親方にその手段の説明をする。


 俺が提案したのは、無料でサンプル品として特効薬を配る事である。

 特効薬の効能は親方の折り紙つきなので、最初の何人かに認識されれば後は勝手に広まって行くのだ。


 親方はあんぐりと口を開けて『無料で配る? お前は何を言っているんだ?』と理解に苦しむような怪訝な顔をしていた。

 しかし、俺が『最初に1個だけ配って、使ってみて良かったら次からは購入して下さい』と渡すのだと説明すると、やっと理解してくれたみたいだった。


 もちろん配る相手は選ぶ。

 無料で配布するにも経費が掛かるし、購入できない人達へ配っても何の意味も無いからな。

 ずばり、ターゲット層はBランク以上の上級冒険者達だ。


 ミュルリにも同様の説明をすると、説明の途中で俺がどうするのかを言ってきた。

 やはり、ミュルリは賢い。


 さてと、後は。


 2人の了承を得た後、特効薬を持ってギルドへと足を運んだ。

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