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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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41話 ブラックミュルリ再臨

 サムソンさんが店にやってきた。


 まだ、連絡をしてから数時間と経っていない。

 早い、さすがは魔大陸の商人である。


 そして、まさかこんなに早く来るとは思っていなかったため、現在は親方が出かけてしまっていて不在だった。

 急遽、親方の代わりに俺がサムソンさんの応対をする。



 「すいませんサムソンさん。まさか、こんなに早く来てもらえるとは思わなかったもので」


 「いえいえ、まあ、お気になさらず。では、早速詳しい話しを聞かせてもらえますか?」


 「はい、えーとですね……」


 サムソンさんに親方が特効薬を開発した事を伝える。

 効能を伝えると、サムソンさんは飛び上がらんまでに驚いていた。

 まあ、当然だよね。


 そして、値段の説明の段階になると『う~ん』と唸り渋い返事になる。

 サムソンさんが言うには、効能が事実なら親方が言ったように100万エルは破格なのだそうだ。

 しかし、額が額である。

 2つ返事で出せる金額ではない。


 やっぱり、100万エルは高いよね。


 サムソンさんに揉み手で近づき、ソーンの購入数を減らしてその分の特効薬を購入するように薦める。


 「効能は俺が保障しますよ」


 俺がビシリと決めて説得するが、サムソンさんはどうにも渋い顔である。


 しかし、俺の隣からひょっこりと顔を出したミュルリから『お爺ちゃんが怪我をした時に使用して効能は確認しています』と説明されると、サムソンさんは『ミュルリちゃんが言うなら安心だな、契約しましょう』と即座に言っていた。


 ほほう、つまりサムソンさんは俺の言う事は信用できぬとおっしゃるのですな?


 ジト目でサムソンさんを見ていると『それにしても、自ら怪我をしてまで効能を確認しようとするとはゼンさんは薬師の鏡だな』とサムソンさんは慌てたように話題を逸らして誤魔化してきた。


 サムソンさんの勘違いにミュルリが困ったような顔をして俺の顔を見てくる。


 まあ、事実は小説より奇なりだ。

 言わぬが花、知らぬが仏である。


 俺は、黙って首を左右に振った。


 まあ、いいけどね。

 俺としては、ソーンを作る数が減りさえすればいいのだから。



 サムソンさんは、とりあえずお試しという事で100個注文した。

 思わず『ぶっ!』と噴出してしまう。


 特効薬100個は1億エルですよ?

 まあ、俺としては予約分のソーンが1000個分少なくなれば御の字なわけなんだが。

 それにしても、これは明日からでもダンジョンに行けそうだ。


 しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 ルンルン気分でサムソンさんに『予約していたソーンの数は1000個少なくていいですね?』と聞くと『何を言っているのかね?』と疑問系で返答された。


 あれ?

 何かおかしいぞ?

 このパターンは……嫌な予感がする。


 「ソーンはソーンで購入させてもらうよ。そして、追加で特効薬100個を注文させてもらう」


 ぎゃあああ! 魔大陸の商人の資金力をなめていた。

 まさか、追加で増えるなんて予想外だ。


 大慌てで『無理です』とサムソンさんに伝えるも『いやいや、達也君なら問題ない』と素知らぬ顔。

 そして、そこに『できるよね?』といつものエンドレスミュルリ。

 これは、以前にもあった嫌な流れ。

 それどころか、何で商売の邪魔をするのかな? お兄ちゃんは敵? 敵なの? と言わんばかりの恐ろしいスマイルまでミュルリが追加してきた。


 いやー、だーくえんじぇるミュルリさんがパワーアップしている!


 しかし、今回は断固として断るのだ!

 石に齧りついてでも断るのだ!


 断固拒否すると抵抗を続けていると、ミュルリが『おじいちゃんが研究のためと言って、何千万エルとお金を使ってしまって困ってたの。でも、この契約で問題無くなって良かった……だから、できるよね?』と、にこにこ笑顔でさらりと恐ろしいことを言ってきた。


 え?

 あれ?

 ひょっとして、危ない経営状態だったの?

 ミュルリさん? 冗談だよね?


 俺はおろおろとしながら、いつもと変わらないようすのミュルリの笑顔を見る。

 そこに商機ありと見たのか、サムソンさんがすかさず値を吊り上げて商談を畳み掛けてきた。


 「ミュルリちゃんも大変だ。いつか従業員の人達が戻ってくると信じて、何百人の職人さんが働ける工房の維持もしてるんだもんな。よし、1個120万エルで注文しよう」


 「ありがとうございます。契約書はこちらになります」


 ミュルリが即座にサムソンさんに契約書を渡す。


 『あの……その』と俺が言い淀んでいると、サムソンさんはすばやく契約書にサインして『良い商売ができた』と嬉しそうに帰って行った。

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