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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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3話 初めてのクエスト

 腹が減った……


 俺の予想では、30分も歩けば村か町が見えてくるはずだったんだ。

 だが、あれから2時間くらいは歩き続けたってのに村や町の影すら見えてこない。

 そのため、俺のいらいらはピークに達していた。


 うん? その予想はなぜかって?


 例えば、村や町が近いとその村や町に向かう道が合流するために、各地から集まって来た人や荷物を運ぶ馬車なんかが高い頻度で通るだろ?

 なら、ゴブリンはきっと村や町の近くで監視をやっていただろうと思ったからだよ。

 人がほとんど通らないような場所で待ち伏せとか、馬鹿のやることだからな。


 それが、あの場所から2時間も歩いたというのに村や町のありそうな気配すら見えないのだ。


 所詮しょせんはゴブリンだったか……


 「馬鹿なんだよ! 馬鹿!」


 少しは頭を使って効率を考えようよ?


 ゴブリンに理不尽な八つ当たりをする。

 睡眠不足、疲労、空腹の3重苦で、俺は少し壊れ気味になっていた。


 1日半くらいは何も食って無いからな。

 運動した後のご飯はおいしいが、運動した後にご飯が食べられないのは地獄である。


 ぶつぶつと独り言を呟きながら歩いていると、前方からわらを山のように積んだ馬車が車輪をガタガタ揺すらせながらやって来た。

 どうやら、馬車にはおじさんが1人乗っているようだった。


 第一村人発見。


 大声を出して飛び出して行きたい気持ちを抑える。

 まだ、安全かはわからないからな。


 とりあえず、ステータス確認はしておくか。

 ゴブリンの時は注意深く見るだけで表示されたから、見ようとすれば見れるよね?


 やってみると、問題なくステータスが表示された。


 これは名前や年齢まで見えるのか?

 プライバシーも何も無いな。

 人のステータスを見るのは必要最低限だけにしよう。


 ステータスを見ると弱い。

 力が5しかない。


 戦闘力たったの5……ゴミめ。

 そして、俺の戦闘力も5……俺も所詮はゴミ。

 しょぼーん。


 ずっと1人だったせいか、1人ボケ1人突っ込みが身についてしまった。


 人は狂いそうになると笑うと言う。

 心が壊れてしまわないように笑いを求めるからだ。


 精神的にかなりまずい状態である。


 おじさんの馬車とすれ違う頃になると、人もまばらなのどかな田舎町の風景が見えてきていた。

 よし! よし! よし! と心の中でガッツポーズをしておじさんにコンタクトを取る。


 「すいません、あの町の冒険者ギルドは何処にありますか?」


 「うん? ああ、町を入って真っ直ぐ行けば見えて来るよ。大きな建物がそうだ」


 話し掛けると、おじさんはわざわざ馬車を止めて親切丁寧に教えてくれた。

 軽く会釈をしながらおじさんに礼を言うと、ほとんど走るような速度で町へと入る。


 フフフ、冒険者ギルドがあるのはわかっていたぞ。

 なんせ、自分のステータス画面に思いっきり冒険者と表示されていたからな。

 そして、言葉が通じるか? は話しかければわかること。

 さすが俺! 完璧な理論だ。


 自画自賛をして、限界まで来ている眠気や空腹を誤魔化した。



 冒険者ギルドの建物の前に来ると、臆さずに扉を開けて即座に中に入る。


 何にもわからないけど体裁なんか気にしてられない。

 この世界の常識とか詳しいことはわからないが、何かおかしなことがあってもごり押しする覚悟だ。

 もう、いろいろ限界だしね。


 ギルドの中に入ると、田舎物丸出しできょろきょろと室内を見渡す。

 受付のお姉さんを発見すると、一直線に向かって行って話しかける。


 「すいません、冒険者登録をしたいのですが?」


 「は、はい、ご用件は何でしょうか?」


 目を見開いてお姉さんに迫るように話し掛けると、受付のお姉さんは少し引き気味だったが丁寧に対応してくれた。

 ちなみに、受付のお姉さんの名前はナタリアさんと言うらしい。


 「では、こちらの石の上に手を載せて下さい」


 ナタリアさんの指示に従い石の上に手を載せる。

 石が光ると台座の取り出し口のような場所からカードのような物が出てきた。


 「お名前は、日坂部達也ひさかべ たつやさんでよろしいですね?」


 俺が頷くとカードを渡される。


 名前を言ってないのに全部わかるんだな。

 どういった構造なのかわからないが便利なもんだ。


 「では、冒険者ギルドの説明をさせて頂きます」


 ナタリアさんの説明を眠気と空腹に耐えながら聞く。

 俺の早く説明を終わらせてくれ、という無言の圧力を感じたのかナタリアさんは最低限の説明だけにしてくれた。


 内容はこんな感じだ。


 冒険者にはランクがあるそうで、そのランクはG~Aへと上がっていき最後にAの上に特別に作られた規格外のSランクがあるそうだ。

 ランクに応じて受けられるクエストが決まっているそうで、内容と成功回数で昇格が決まるということだった。


 そして、受けられるクエストの種類は、討伐クエスト、採集クエスト、受注クエストの3種類があるとのことだ。


 ちなみに、この世界は共通の通貨として金貨、銀貨、銅貨などのその物質自体に価値のある硬貨が主に使われているそうだが、この国というかエル大陸ではエルという単位の紙幣が一般に使われているとのことだ。


 凄いよな。

 紙幣なんてのはただの紙きれなわけだから、その国によほどの信用がないと一般にまで普及されて利用されることはまず無いんだ。

 つまり、信用と言うのは長い実績の積み重ねによってのみ築かれるものだから、エル紙幣を発行している国はそうとう古い歴史と強い力を持った大国だということだ。


 この世界で何かするなら、この国には注意した方が良さそうだ。



 一通りの説明が終わった頃に、ふと重大な事に気づいた。


 ギルド登録にお金が掛かるのだろうか? 

 今の俺は無一文だぞ?

 お金が掛かるなら、普通は最初に言ってくるよな?

 お金無いよ?


 逮捕とかされるんだろうか?

 俺としては、もう牢屋の飯でもいい気分なんだけど。

 俺はそれでもかまわんよ?


 まあ、再発行にはお金が掛かるだけで登録は無料だったわけだけど。


 さて、俺の受けられるクエストは薬草の採集かゴブリン5匹の討伐だな。

 後は、酒場の皿洗いや倉庫の整理などの受注クエストのバイトくらいしかない。


 これはゴブリン討伐しかないな。

 薬草など何処に生えているかわかないし、バイトはすぐに金を貰えない。

 しかし、ゴブリンなら居る場所に心当たりがあるんだ。


 討伐クエは、倒したゴブリンの死体でも持ってくればいいのだろうか?


 ナタリアさんに確認する。

 すると、どういう仕掛けになっているのかわからないが、冒険者カードに倒した敵と数が自動で表示されると教えてくれた。


 ほう、それは便利だな。


 礼を言ってゴブリン討伐へ行こうと席を立つとナタリアさんが慌てたように止めてきた。


 「まさか、ゴブリン討伐へ行くつもりなんですか? 達也さんはまだレベル1でまともな装備もしてないのですよ? 1人でゴブリン討伐は無謀です!」


 ナタリアさんにかなり強い口調で説得される。


 問題ないと伝えて受付に背を向けて出口へ向かう。


 俺にはベレッタがあるんだよ。


 「貴方のステータスでは、死にに行くようなものですよー!」


 なにやら、ナタリアさんが悲痛な声で叫んでいたようだが俺にはまったく聞こえていない。


 なぜなら、俺はすでにギルドの扉を閉めて外に出ていたからだ。



 この時の俺は、正常な判断がまったくできていなかった。

 疲労、空腹、睡眠不足と3重苦で限界だったからだ。

 さらに、最初の戦闘を無傷で勝利したことで、銃の力を過信してしまったのも要因ではあったのだけど。


 この後、俺は銃がなければ何処にでもいる、ただの弱い人間なのだと思い知ることになるのだ。

冒険者カードの表示は装備が表示されないだけでステータス画面と同じです。


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