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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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36話 秘密兵器の威力は?

 地下へと下る道を歩きながら2階層を眺めると、壮大に広がっている空間が見えてきた。

 広いなあと言うのが素直な感想だ。


 なんせ、今まで戦闘を繰り広げてきた1階層は道幅5mくらいから広くても10mくらいの幅の道が延々と続くだけだった。

 それが、2階層ではまるで大きなフロアのようになっている空間が広がっているのだから。

 ここから見える空間だけでも半径500mくらいはある。


 そして、天井を見上げれば鍾乳洞にあるような石のつららが垂れ下がっていて、所々で地面まで繋がって視界を塞いでいるようだった。

 魔物が待ち伏せしているかもしれないので索敵には注意が必要そうだ。

 良く見ると、天井の高さは東と西の方で違うようで、東の方は20m西側の方は低くて5mくらいの高さになっている。

 空を飛べるミニテラーバットが厄介になりそうなので、天井の高い東側ではなるべく戦闘を避けた方がいいだろう。


 最後に、フロアの端、壁面になっている部分の3方向にはさらに奥へと道が続いていた。

 つまり、2階層はここだけではない。

 気を引き締めて探索を開始する。



 2階層に下ってきて最初の道が、北と南の左右に枝分かれしていた。


 まあ、天井が高くなっている東側の方向に行かなければいい。

 どちらでもいいので、とりあえず南の方向の右へと行ってみる。


 角を曲がってその先が見えてくると、ミニテラーバッドが天井にぶら下がっていた。

 早速戦闘かと思いきや、ここで問題が発生する。

 なんと5匹の群れだったのだ。


 来た道を急いで戻り道の角に身を隠す。

 こっそりと角から顔を出してミニテラーバッドの様子を確認すると、どうやらまだこちらには気づいていないようだった。


 どうするかな?

 まだこいつとは戦ったことがないんだよな。

 それに5匹はきついよな。


 無理にこちらの道を通る必要はないので、あきらめて反対の道へ向かう。

 すると、こちらでもまたミニテラーバッドが現れた。

 こちらは3匹だ。


 また複数かよ。

 こいつらは群れる習性があるのかな?


 最初の分かれ道はどちらかしか通れないのでやるしかない。

 やるなら数の少ないこっちだ。


 ミニテラーバッド

 レベル4

 HP5

 MP0

 力5

 魔力0

 体力5

 速さ40

 命中20


 そして、今日の俺は1つの作戦を実行しようと考えていた。

 その名は、ヒットアンドエスケープである。


 遠距離から攻撃したら速攻で逃げて隠れる。


 「…………」


 え? 卑怯? 情けない?

 うるさい!

 戦いに、卑怯も汚いもないのだ。


 ミニテラーバッドは4m~5mくらいの高さの天井にぶら下がっていた。


 必殺!


 ライトボウガンで狙いを定めると撃った、そして逃げた。

 そして、騒ぎが収まるまで隠れました。

 うへへへ。


 スタートダッシュが異常なまでに早かったから追撃は絶対に不可能。

 恐らくミニテラーバッドは俺の姿すら確認できなかったはずだ。

 我ながら自分の逃げ足の速さには才能を感じる。


 さてと、経験値はどうかな?

 逃げる時に後ろでキィキィと大騒ぎだったから当たったと思うんだが。


 安全な場所でこそこそとステータス画面を確認すると経験値が増えていた。

 どうやら上手くいったようである。


 ほとぼりが冷めた頃を見計らって現場に戻ると、こっそりと覗いてどうなったか確認してみる。


 すると、1匹のミニテラーバッドが矢に串刺しになり地面に転がっていた。

 残りの2匹は、まるで何事も無かったかのように先程と同じ場所に止まっている。


 所詮しょせんは獣の知能よ。

 10分も経てば忘れる。


 にやりと笑みを作る。


 「さあ、死ぬがよい」


 そして、先程と同じ戦術で2匹とも抹殺した。


 転がっていたミニテラーバッドの死骸から突き刺さった矢を回収する。

 そして、採取用のナイフで羽の剃刀の部分を切り取る。


 残りの2匹を倒す時に逃げる途中で後ろをこっそりと振り返って動きを見てみたんだが、正直あれはまずい。

 速さ40で飛び回る10cm程度の小さな的だから、まともにやったら攻撃は当てられないだろう。


 今日の本命はこいつではない。

 さっさと移動しよう。



 そして、そいつは我がもの顔でそこにいた。


 真珠貝タートル

 レベル7

 HP80

 MP0

 力50

 魔力0

 体力60

 速さ10

 命中10


 呑気に貝の口を大きく開けていた真珠貝タートルに先制攻撃の矢尻の矢を叩き込んでやる。


 必殺!


 HPが30近く一気に減る。

 弱い部分に当たれば大ダメージだ。

 防御の固い奴も変わらん。


 真珠貝タートルは貝の口を閉じると凄い勢いでこちらへ突進してきた。


 矢を装填し直すと剥き出しになっている足へ向けて射る。

 いつもの戦術で何度も矢を射るが、2~5くらいしかダメージが入っていなかった。


 かなりのタフネスである。


 しかし、ダメージが通りそうな箇所はここしかないのでしつこく狙う。

 根気強く狙い続けていると、真珠貝タートルは足を引っ込めて貝の口を閉じたまま動かなくなった。


 刺さっていた矢が外れて地面に転がる。

 5本ほど矢が引っ込めた足との隙間に挟まって抜けなかった。


 まあ、ここで普通の冒険者はこの硬い甲羅を鉄槌なんかでドカドカと叩いて壊す必要があるわけなんだが……


 はい、ここで秘密兵器の登場です。


 転がっていた矢を回収するとリュックから皮袋に入った蒸留酒を取り出す。


 蒸留酒の入った皮袋の紐を解くと真珠貝タートルにどばどばと豪快に掛ける。

 そして距離を取ると、導火線代わりに地面にちょろちょろと滴らせた蒸留酒にカチカチと音を鳴らして火打ち石で着火する。


 次の瞬間、サーと炎が地面を走ったかと思うと、ボッと一瞬で真珠貝タートルが火達磨ひだるまになった。


 最初は何事もなかったように炎に包まれながら沈黙していた真珠貝タートルも、しかし数秒もすると炎を撒き散らすようにどったんばったんと苦しそうにのたうち回り始めた。


 「がははははは! 燃えろ! すべて燃えてしまえ!」


 炎に巻かれて苦しむ真珠貝タートルを見ながら、何処かの危ない放火魔のような言動で悦に浸る。


 真珠貝タートルのHPがみるみるうちに0になる。

 そして、ふと気づくと真珠貝タートルに刺さっていた鉄の矢尻の矢も一緒になって燃えていた。


 「ぎぃやあああ!」


 燃えている矢尻の矢を見てムンクの叫びのような顔で悲鳴を上げる。


 「ああ、ホントに……すべて燃えてしまった。1本5000エルもしたのに」


 魂が抜けたようにがっくりとその場に膝をつく。

 しくしく。


 まあ、悔やんでもしょうがない。


 気を取り直して真珠貝タートルの解体をしようとして、矢が燃え尽きた場所に鉄の矢尻の部分が転がっているのを発見する。


 この部分は鉄なんだよな?

 親父に渡せば買い取ってもらえるかもしれない。


 転んでもただでは起きないのだ!


 せこせこと矢尻の部分を回収する。


 「さあてと、こいつを解体しないとな」


 真珠貝タートルを見ると口を閉じた状態で死んでいた。


 真珠貝タートルの貝の口の隙間からそっと腕を差し入れる。

 採集用のナイフを使って貝柱の部分を切ると、バクンと音が鳴って貝の口が勢い良く開いた。


 貝の中の中央付近で、デンと鎮座していた白い身の袋の部分に軽くナイフを入れる。

 スッと開いた切り口から、パチンコ玉くらいの白い珠がポロリと出てきた。


 あったあった。

 こいつが高く売れるんだよね。


 出てきた真珠を取り出してリュックに大切に仕舞う。


 さあ、お楽しみのランチタイムだ。



 貝の大きさに比べて、白い身の方は予想していたよりもかなり小さかった。

 まあ、それでも30cmくらいの大きさはあるのだが、食べられそうな箇所は10cmくらいで厚みはあるけどちょっと少ない。

 飯を抜いてきたから腹が減ってるんだけどな。


 そして、早速実食する。

 採取用のナイフで薄く身を切ると、まずはそのまま食べる。


 旨い!

 これは、完全にあさりの酒蒸しだ!


 アルコールは炎でしっかり抜けていて、ほんのりとお酒の甘みと風味がいい感じになっている。


 お次は、塩を掛けて食べてみる。


 こちらもなかなかいける。

 だが、酒蒸し状態なのでそのまま食べた方が絶対に美味しい。

 どちらかと言えば醤油が合うと思う。

 塩を掛けるのなら生の方がいいだろう。


 そして、塩のせいか喉が渇いたので水を飲む。


 うーん、お茶を持ってくれば良かった。

 次はお茶を持ってこよう。


 気分は完全にピクニックだ。


 これで、かわいい女の子でもいれば最高なんだけど。

 しかし、俺はボッチだ。

 悲しいぜ。


 丸焼けになっていた無残な姿の真珠貝タートルをまじまじと見る。


 それにしても、これは蒸留酒を掛け過ぎだな。

 次からは足の付け根の隙間から少し流す程度でいいかもしれん。


 そして、次は是非とも生で食いたい。

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