33話 銃を持っても調子に乗るな
あれから、5匹のホーンラビットを仕留めていた。
不意を突けば1発で終わる。
しかし、見つかれば泥仕合だ。
3匹は不意打ちで仕留める事ができたのだが、残り2匹には気づかれての無様な殴り合いだった。
「あいたたた」
ソーンを使って傷を癒す。
これでソーンを3つも使ってしまった。
やれやれだな。
ソーンに余裕がある間に撤退しよう。
ダンジョンの入り口へと戻っている途中にオオトカゲとエンカウントする。
こいつはちょうどいい。
弾に余裕ができたら試してみようと思っていたことがあるんだよね。
のそのそと緩慢な動きで距離を縮めてくるオオトカゲに気合を入れる。
さあ、俺のベレッタが火を噴くぜ。
ベレッタを胸元から格好よく引き抜くとオオトカゲにゆっくりと銃口を向ける。
そして、口上に合わせて格好良くトリガーを絞る。
「運が無かったな……お前が弱いんじゃない、俺が強すぎるん……ん? あれ?」
しかし、なぜかトリガーが引けない。
おっと、安全装置を解除してなかった。
久しぶりだから忘れてた。
めんご、めんご。
「オホン!」
のそのそとゆっくり近づいてきていたオオトカゲをちらりと確認する。
落ち着いて安全装置を解除すると今度こそトリガーを引いた。
パァアアアン!
「うぎゃー! 耳がああああ」
洞窟内で大きな音が反響して鳴り響いた。
大きな音で耳が聞こえなくなる。
しかも、薄暗い洞窟でのマズルフラッシュで目も眩んでしまっていた。
やばい、やばい、やばい。
目が眩み、耳も聞こえずでパニックになりそうになる。
落ち着くんだ俺! まだ焦る時間じゃない。
とりあえず壁を背にしてオオトカゲが襲ってくる方向を限定させるんだ。
這いずるように壁まで移動すると壁を背にする。
銃を握り締めて構えると、まだ白くちかちかする視界で必死にオオトカゲが居る辺りを見る。
「い、いつでも来やがれ!」
虚勢だと自分でもわかっているがそれでも大きな声を張り上げて威嚇する。
少しでもオオトカゲが躊躇してくれれば、目と耳が回復するまでのわずかな時間を稼ぐことができるのだ。
少しだけ目が見えるようになると、通路の真ん中で微動だにしないオオトカゲの輪郭がぼんやりとだが確認できた。
今か今かと待ち構えるがいつまでたってもオオトカゲは向かって来ない。
なぜ襲ってこない?
視力が回復すると通路の真ん中で鎮座していたオオトカゲの様子を確認する。
オオトカゲは頭がぐしゃぐしゃになって死んでいた。
ベレッタの……ブラックタロンのたった1発の攻撃で死んでいたのだ。
銃の強さと怖さを改めて認識する。
「はあ、やっちまった。親父にあれだけ調子に乗って油断するなと忠告されていたのにな」
それと、洞窟で銃を使う時の事を考えないと。
考えなければいけない問題は、狭い洞窟での音の反響と薄暗い洞窟での銃の先から出る噴射炎。
この2つだ。
マズルフラッシュに関しては、見ないように注意すればいいだけだから問題ない。
音の反響の方は耳栓があればいい。
だけど、耳栓をつけると周囲の微かな音が聞き取れなくて危ないんだよな。
うーん、耳の中に軽く綿を挟んでおくくらいでいいか。
しかし、ベレッタが予想以上の威力だったな。
まさか、1発で倒してしまうなんてな。
だけど、結局は実験できなかったし弾も無駄になってしまった。
うーん、とりあえずオオトカゲの肉と皮を回収したら今日はこれで終わりにしよう。
ダンジョンの入り口に戻るまでにホーンラビット2匹と髭モグラ3匹を倒した。
今日の戦果
髭モグラ9、ホーンラビット9、オオトカゲ1
ホーンラビットの毛皮が3つだめになった。
今日の収益
78100エル
俺も冒険者らしくなってきたのだろうか?




