27話 遠距離無双
俺は、ダンジョンの入り口で立ち竦んでいた。
あの日の恐怖を思い出したからだ。
あの戦いは激戦だった。
あと1撃……あと1撃、攻撃を食らっていたら死んでいたんだ。
覚悟を決めてダンジョンに足を踏み入れると、突然ズキュンと雷が走ったような衝撃が体に走る。
わからない、わからないがなぜか股間がズキズキと痛い。
なぜだ?
疑問を抱きつつも、ダンジョンを進んで行った。
日坂部達也 年齢18
冒険者レベル2
HP15
MP0
力7
魔力0
体力7
速さ10
命中20
装備
ベレッタMODEL92(攻撃力100)9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×15発
ライトボウガン(攻撃力30)
矢筒 木の矢×10(攻撃力1)
ロングソード(攻撃力10)
ナイフ(採取用)
木の盾(防御力10)
革の鎧(防御力40)
リュック
お金
20エル
アイテム
ソーン(最高品質)×5 毒消し×2 皮のマント 水筒(水)
なめし皮の風呂敷
NEW EQUIP
ライトボウガン
矢筒
木の矢
現在の俺はライトボウガンを両手で持っている状態で、矢筒とロングソードは左右の腰に木の盾はリュックに引っ掛けていた。
ロングソードを使う時にはライトボウガンは腰のベルトに引っ掛けて戦うことになるだろう。
ソーンは何個必要になるかわからないので適当に5個持ってきた。
そして、このダンジョンには毒を持ってる魔物はいないんだけど毒消しも持ってきた。
俺の場合は、必要な時にうっかりと持っていく事を忘れる事があるから常備しておくんだ。
転ばぬ先のなんとやらだ。
後は、喉が渇いた時のために水筒くらいかな?
料理までするつもりはないから調味料は持ってきていない。
なめし皮の風呂敷は肉を確保した時用だ。
左右の道幅が5mくらいの洞穴のダンジョンを進んで行く。
長い直線だと50mくらいは続いているだろうか? 基本的には10~20mくらいの間隔で左右に歪曲するような入り組んだ道が続いていた。
ライトボウガンの有効射程は10m~20mと短いのだが、洞穴のダンジョンはまさに絶好のポイントだろう。
そして、恐怖の根源であるやつと出会った。
すぐに内股になって戦闘態勢に入る。
さあ、かかってこい!
ガードは完璧だ!
髭モグラ
レベル1
HP10
MP0
力10
魔力0
体力10
速さ5
命中5
親父から教わった戦術はヒットアンドアウェイである。
足を使って距離を取りながら逃げ撃ちを繰り返す、アウトレンジから一方的に攻撃する引き撃ち戦術だ。
正面から足を止めて戦うと地力の差で勝てないからな。
まあ、苦肉の策と言うやつだ。
20mくらいの距離まで近づくと攻撃を開始する。
幸いにも、髭モグラは体がでかいうえに動きは遅かった。
遠くから狙撃するには恰好の的だ。
そして、余裕の先制攻撃が見事に決まると、攻撃を受けた髭モグラが怒ったように髭を振り回しながらこちらに向かってきた。
まだ距離があるためその場で2本目を装填してすぐに射る。
2本目も見事に当たるがまだ倒れない。
髭モグラが目前まで迫ってきたので後ろに走って距離を取ると3本目を装填して射る。
そして、髭モグラが動かなくなった。
ステータス画面で確認すると確かに髭モグラのHPは0になっている。
前回の戦闘で苦戦したのが嘘のようなあっけないくらいの完全勝利。
ガードポジション(内股)を解除すると、勝利したことによる高揚感が込み上げてきた。
動かない髭モグラに人差し指を突き出してビシリとポーズを決める。
「髭モグラよ、お前には致命的に足りないものがある。それは……速さが足りなぁぁぁい!」
奴もまた、強敵だった。
くぅ~! これだよ、これ!
これが俺の求めていた主人公無双の姿。
誰でもできるような事なのだが思わず過剰なくらいに喜んでしまう。
まあ、自分でもわかってるんだけどね。
親父が『最初の頃だけの雑魚にしか通用しない戦術だ』と言っていたのだが、ここでは頭の片隅においておく。
今はただ勝利を喜ぼう。
さっそく戦利品の回収を行う。
髭モグラの場合は、1mくらいの長さのあるこの髭が売れる。
肉は臭くて食えないらしいので回収はしない。
採取用のナイフしかなかったが髭を切るくらいならこれで充分だ。
早いとこ解体用の大きなナイフが欲しい。
ゴブリンの時は別として、この記念すべき初の戦利品はナタリアさんにでもプレゼントしよう。
俺がどうなったか心配してるだろうしな。
帰りに顔を見せる時にでも渡そう。
そう決めると狩を再開する。
さあ、ショータイムの始まりだ!




