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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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25話 助けてマッチョ!

 ニコニコとさわやかな笑みを見せているナタリアさんと、ニマニマと邪悪な含み笑いをしているエミリーさん。

 そして『潰す、潰す、潰す』と小声で繰り返しがら、殺気を撒き散らしているナタリアさんのファンの方々に見送られてギルドを後にする。


 あの後、ナタリアさんに『でも、どうしたらいいのでしょう』と聞かれて、俺は『まあ、パーティが組めないなら、1人で何とかする方法を考えますよ』と格好をつけて出てきたわけなんだが。


 でも、本当にどうするかな?

 そもそも、どうするかわからないからナタリアさんに相談に来たんだよな?


 うおー! いまさら、助けてナタリエモンとか言えない。


 う~ん、どうするか?


 よし、武器屋の親父にでも相談してみよう。

 助けてマッチョ。


 そして、俺は武器屋へと足を運んだ。



 武器屋の近くまで来ると、入り口付近に2人の女性の冒険者が佇んでいた。

 どうやら、今から武器屋に入ろうとしているお客さんみたいだ。


 珍しい……この店に客なのか?

 しかも女性?


 興味が沸いたので、少しだけ様子をうかがってみる。

 特に、女性だったからなのは言うまでもないだろう。


 「いやー、購入できて良かったよね」


 「ええ、最高品質のソーンと聞いていたので、売り切れているかもと心配していました」


 「ゼン爺さんの店は以前から品質がいいとは思ってたけど……まさかここにきて最高品質のソーンを出してくるなんて」


 「ふふ、何かに目覚めてしまったのかもしれませんね」


 2人の話し声を盗み聞いてみると、どうやら俺の作ったソーンの噂を聞いて購入しにきたようで、何度も此処に来ることになるだろうから武器の手入れなどは此処の武器屋を利用しようか? などと話していた。

 しきりにソーンの出来を褒めていた女性冒険者達に『まいったなあ』と思わずニマニマしてしまう。


 俺がグフフと自分の世界に浸っている間に女性冒険者達が話しながら店内に入って行った。


 俺に感謝しろよ親父? などと思っていると、女性冒険者達がすぐに店から逃げ出すようにして飛び出してくる。

 何だ何だ? と思う間も無く何処かへ行ってしまった。


 もしやと思い急いで店内へ突入する。

 すると、店の中では親父が半裸でいつものポージングを決めていた。


 「親父~それを止めろぉおお!」


 「おう、達坊いきなりなんだ?」


 いぶかしげな表情をしていた親父に女性のお客が逃げてしまう理由を説明する。


 親父は『だははは』と笑うと『恥ずかしがり屋さんなんだな』と頓珍漢な事を言っていた。


 「違う、そうじゃない。半裸で不気味なポーズをしてたらお客さんが気味悪がって逃げるから、止めろと言ってるんだ」


 「これは、俺のアイデンティティだ」


 親父がポージングを決めたままビシリと答える。


 どうやら、止めるつもりはないらしい。

 しょうがねえ親父だ。


 やれやれと嘆息すると、当初の目的であるここに来た理由を親父に話した。



 「達坊、おめえ最強の武器と鎧は何だと思う?」


 「剣? 槍? 鎧はわからんな」


 自分の現状を説明し終えると親父が唐突に質問してきた。


 意図のわからない質問を反射的に答えると、親父はフッと悟ったような顔をして『最強の武器は拳で、鎧は筋肉だ!』とポージングを決めながら大胸筋をぴくぴくとさせていた。


 これは相談する相手を間違えたかな? 


 後悔していると、ふと親父の胸にある傷が増えている事に気づいた。


 「親父、胸の傷が前より増えてないか?」


 突如、親父の表情が真剣なものに変わる。


 何かとてつもない秘密でもあるのだろうか?

 ごくりと息を飲む。


 「達坊、お前は筋肉で刃が受けとめられると言ったら信じるか?」


 「え? さすがにそれは無理でしょう」


 いきなり分けのわからない事を言い始めた親父に、困惑しながら答える。


 「だよなあ」


 すると、親父は嵌め殺しの窓枠に頬杖を付いて、がっかりしたような顔をして黄昏たそがれてしまう。


 親父……まさか?


 「親父、まさか自分で刃を大胸筋で受けとめて、その怪我をしたのか?」


 「おうよ! まあ、若気の至りってやつよ」


 親父は鼻の頭を親指でこするような動作をして、格好をつけて答える。


 何をやってるんだこの親父は……

 それに傷が増えてるってことは最近だよね?


 「いつまで若いんだよ? それに危ないから止めろ!」


 突っ込みを入れながら忠告する。

 しかし、俺の忠告にも親父は『だはははは』と豪快に笑っていた。


 「特に左胸の下には心臓があるだろ? 死ぬから止めろ」


 「だははは……は?」


 俺の言葉に、親父の笑いが途中で止まった。

 口をあんぐり開けたまま真っ青な顔になる。


 親父、気づいてなかったな? 

 脳みそまで筋肉でできてるんじゃないのか?


 まったく、何をやっているんだこの親父は……

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