表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
2/225

1話 生存への道

 まずは、荷物の確認からだ。


 ズボンのポケットに手を突っ込むと、上着のポケットまで丹念に調べる。


 こういう時は荷物の確認をするといい。

 自分の身に危険が迫っているのに、やるべき事がわからないからパニックになってしまうのだ。

 生き延びる為に有効な手段を講じているんだという安心感が、精神を安定させて落ち着かせてくれる。



 持ち物は、財布となぜか持ってるベレッタだけだった。

 たばこは吸わない為、火を起こせるライターのひとつも持っていない。


 「まあ、コンビニへ行く途中だったからな」


 ポケットに突っ込んでいた手を引き抜くと独りごちる。


 それより、このベレッタは本物なのか?


 なぜか手に持っていたずっしりと重量感のあるベレッタを確認してみる。


 本物の銃なのかを調べる方法は簡単だ。

 

 まずは、リリースボタンを押してマガジンを取り出しておもちゃで使うBB弾ではないか弾の確認をする。

 大半はこれでわかる。

 おもちゃの場合は、そもそもリリースボタンがイミテーション(飾り)だったりする。 


 次に、スライドを引いてチャンバー(薬室)に弾が装填されてないかの安全を確認してから、銃口を覗いて弾が出る幅とバレルに溝があるかを確認する。

 銃口の幅を測ったりライフリングの溝を作るのにはお金が掛かるので、おもちゃの場合はなかったり銃口のサイズがおかしかったりする。


 最後に、軽くトリガーを引きながらスライドを戻してマガジンを装着し直すと、ハンマー(撃鉄)付近にある安全装置を下ろしてロックした。


 「本物……だよな?」


 最終的には撃ってみないとわからないが、弾の数が15発しかないのでそれはできない。


 わけがわからないが、とりあえずなぜか最初から体に装備されていたホルスターへとベレッタを収める。

 嫌な予感が頭の中をよぎる。


 これは異界転移とかそういうやつだよな?

 いやいや、まだ異世界とは限らないか。


 銃を持っているのは、何かと戦うことになるんだろうか?

 レベルとかの表示があったから、何かを倒して強くなるとか?


 でも弾とかどうするんだ? すぐ無くなるよな?

 レベルが上がれば貰えるとか?


 わからない。


 何度目になるかわからない深いため息をつくと、また現状を把握することに戻る。


 水も食料も無い。

 右も左もわからない。


 ……何処だここは?


 絶望的な現状を再認識すると再び危機感が蘇ってきた。

 少しだけ落ち着いていた心臓がまたバクバクと早鐘のように鳴り始める。


 こういう時はどうすればいいんだっけ?


 ええと、森で遭難した時はその場所から下手に動かない方がいいんだ。

 森だと景色が似ているから方向感覚が狂って同じ場所をぐるぐると回ってしまって、最後には動けなくなって死んでしまう可能性が高くなるからだ。


 もっとも、それは救助が期待できる時の話だ。

 だから、俺の場合は動かなければいけないんだ。


 そして、最低でも水だけは3日以内に確保しなければいけないだろう。

 何も食べなくても水があれば2週間くらいはもつが、水が無ければ3日もすれば脱水症状になって意識を失って死んでしまうからだ。


 いや、慌てるな。

 ここは森だから、葉に付いた朝露なんかで水はなんとかなるじゃないか!


 「くそっ! 恐怖で頭が上手く働かない」


 とにかく、ここから移動しよう。


 恐怖と焦燥感にさいなまされながらもその場から移動を開始した。




 1時間くらい黙々と獣道を進むと、なんとか人為的に草がより分けられたような歩道らしき場所に出ることができた。


 「はあ、助かった」


 最悪の状況からは抜け出せた事に少しだけ安堵する。

 あのままぐるぐると、森の中を彷徨さまようことになるかと思ったよ。


 さて、どちらの道に進む?

 右か左か選択肢。


 よし、わからん。

 現状では判断する材料が無いから、どっちでもいい。


 落ちていた棒を立てて倒れた左へと進む。

 それから一昼夜眠らずに歩き続けた。


 え? なぜ眠らずに歩き続けたのかだって?

 それはだな、月明かりが明るくて夜道がそれほど暗くはなかったからだよ。


 …………すみません、わたくし嘘を付いておりました。

 本当は、夜の森が独特の雰囲気を醸し出していて、怖くて眠れそうになかったからなんだよ。

 ヘタレでごめんね。



 夜も明けた次の日。

 まぶたをこすりながら草についた朝露で喉を潤すと、再び眠気に耐えながら1時間程歩く。

 なだらかな起伏のある丘を登りきった所で眼下に視線を向けると、木陰に小さな人影を発見した。


 思わず小躍りするように、おーい! と声を出しそうになった口を慌てて閉じる。

 何かがおかしい。


 よく見ると体が緑色の小人だった。

 あきらかに人ではない。

 しかも、道ではなく森の木にまるで隠れるように佇んでいる。


 これは、どう考えても怪しい。


 あれはなんだと、緑色の小人を注意深く見る。

 すると、目の前にステータス画面が出現してゴブリンと表示された。


 ゴブリン

 レベル5

 HP30

 MP0

 力25

 魔力0

 体力20

 速さ50

 命中20


 うぉ! 何だこれ?

 相手のステータス画面が見えるのか?


 いきなり出現したステータス画面にびっくりしつつも、急いで近くの木に隠れてゴブリンの様子をちらりと窺う。

 ゴブリンは、こちらとは反対方向の道をじっと凝視しているようだった。


 どうやら気づかれてはいないようだが、この道を通りかかる人を襲うために待ち伏せでもしているのだろうか?


 やっぱり、異世界だったな。

 あんなのいるわけないもんな。

 変なステータス画面が見えた時に覚悟はしてたんだよ。


 「はあ……」


 深い溜息をつくと、気を取り直して今度はじっくりとゴブリンの観察をする。

 ゴブリンは手にナイフを持っていた。


 あれは絶対に襲い掛かってくるよな?

 ナイフを手に持って隠れて待ち伏せをしていて、お友達になろうはさすがにないだろう。


 あれで刺されたら俺は死ぬだろうな……。

 刃物を持った相手がこんなに怖いとは。

 こっちは拳銃を持ってるってのに……情けねえ。


 ぶるぶると震えてきてしまった体に、首を左右にぶんぶんと振ってなんとか落ち着こうと努力する。


 なんとか戦闘を避ける術はないだろうか?

 森を迂回して戦闘を避けるとか?


 う~ん、駄目だな。


 下手に森に入ると、方向がわからなくなって遭難してしまう可能性の方が高い。

 拳銃を持っている現状では、ゴブリンとの戦闘の方がまだ危険が少ないだろう。


 来た道を戻るか?


 それも駄目だ。


 一昼夜も歩いてここまで来たんだ。

 戻るのなら、その時間とその向こうにあるかもしれない町までの距離となる。

 そっちの方が生存確率はさらに下がる。


 「はあ、やっぱり……戦うしかないか」


 ベレッタを懐から取り出すと無言で安全装置を外す。

 大きく息を吸うと、スライドを引いてチャンバーへと弾を装填した。


 戦闘開始だ。

薬室から弾を取り出しても、安全装置は掛けるのです。

薬室から弾を取り出し忘れる事があるため、その時に安全装置が作動するように、2重の安全対策を講じるのです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ