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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第一章 特効薬開発
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18話 新兵器の威力

 武器屋に入ると誰も居ない店内で、親父がボディービルダーがやるようなポージングをドヤ顔で決めていた。


 しかし、気にせず親父に話しかける。


 「親父、石臼を作って欲しいんだが?」


 「達坊、お前はいきなり来て何を言ってるんだ?」


 知らないであろう石臼の注文をすると、親父はお前頭大丈夫か? といった困惑したような顔をしてきた。


 しかし、俺の方こそ親父は何をやっているんだ? と逆に突っ込みを入れたい。




 「ふむ、簡単な物だ。これなら材料さえあれば1日で出来るぞ」


 理由と用途を説明して石臼の構造を簡単に説明する。

 親父は面白い事を考えるもんだと感心したように頷いていた。


 「水晶を粉状にすり潰したいんだけど、耐久性の方は大丈夫かな?」


 「ああ、その程度なら問題ないぞ」


 親父が二つ返事で頷く。


 それにしても、まさか1日で出来るとは……。

 そういえば、前もロングソードを研いでもらう仕事を前日の夕方に依頼して次の日の朝には出来ていたな。


 仕事が早いというか……


 ハッとして、店内を見ると客が誰も居ない。

 前に来た時も誰も居なかった。


 親父? ひょっとして暇なのか?

 仕事が無いのか?


 心配になった俺は親父に聞いてみた。


 親父は『うっ!』と痛い所を突かれたような呻き声を出すと『だはははは』と笑って誤魔化して、ここから東にレーベンの都市があるから皆そっちへ買いに行っちまうんだと教えてくれた。


 親父すまねえ。

 自分も苦しいのに俺におまけしてくれてたんだな。

 仕事があったら親父に持ってきてやるからな。


 ちなみに、武器屋と工房はすぐ近くにあるご近所さんだ。

 親方と親父は酒飲み仲間なんだそうだ。


 工房に戻ると、明日の下ごしらえのために水晶の荒砕きをする。

 荒砕きをしている時に、いらいらとした様子の親方が通り過ぎて『どうしても水晶の粉が混ざらない』とブツブツと独り言を言っていた。


 どうやら、特効薬作りにずいぶんと苦戦しているようだ。

 あまり無理をしないと良いのだけど。



 翌日、朝早くに開店前の武器屋へ乗り込む。

 勝手知ったるなんとやらだ。


 「達坊、お前なあ」


 「まあまあ、何かあったら他にも仕事を持ってくるから」


 早朝の訪問に親父は終始文句を言っていたが、仕事を持ってくると宥めると渋々とだが石臼を持ってきてくれた。


 親父すまねえ。

 時間が無いんだよ。



 工房に戻ると、石臼の高さを調整して昨日粗砕きした水晶を投入する。


 「上手く言ってくれよ! では、回しまーす!」


 パンパンと手を叩いてお祈りしてからゴリゴリと慎重に石臼を回し始める。


 一回転、二回転と石臼が回るがなかなか粉が出て来ない。


 あれ? 何で出てこない?


 中々出てこない粉に焦りを感じながらそれでも一心不乱に石臼を回す。


 すると、10回ほど回した頃だろうか? 石臼の割れ目の部分から粉が零れるように出てきた。

 粉が出始めると次から次に出てくる。


 「おっしゃあ!」


 一旦回すのをストップして出てきた水晶の粉を指で摘んでこすってみる。

 粉はまるでパウダーのように滑らかで、これはやばいんじゃないの? という極上品質だった。


 ちなみに、ソーンの品質はこの水晶の木目きめの細かさによって変わると言っても過言ではない。

 親方はここを時間を掛けて丁寧にやる。


 「ふっふっふ、これは凄いぞ」


 まさか、早くできるだけではなく品質まで上がってしまうとは…………

 さすがは俺! 親父もいい仕事をしてくれたもんだぜ。


 うんうんと一人自分の仕事の出来に頷く。


 念のため出来たソーンを親方に確認してもらう為、親方のいる工房の奥の部屋に向かう。


 「親方! ちょっとこれ見てもらえますか?」


 「ええい、なんじゃ!? わしは今忙しいのじゃ……むっ!? これは!」


 「どうですかね? 問題は無いですか?」


 「……ああ、問題は、無い」


 出来を確認してもらうと、親方は何かを考えているような神妙な顔でこくりと頷いた。


 どうやら問題はないようである。

 いや、それどころか親方は一瞬眉間にしわを寄せて、ぼそりとだが確かに『見事な出来だ』とまで言っていた。


 工房の作業場に戻ると、鼻歌交じりでゴリゴリと削りまくる。

 その日に作ることのできたソーンの数は、なんと優に200を超えていた。


 圧倒的な成果である。

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