表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第四章 為すべきこと
171/225

170話 達也レベルあぁぁぁっぷ!

 「セレナ! 次だ!」


 「わかったぁ! いくよぉ?」


 セレナが剣で軽く押し出すようにして、こちらに魔物を1匹誘導する。

 居合いの斬光がきらりときらめくと、向かってきた魔物を一刀のもとに斬り伏せた。



 ここは帝都の都市部の地下にあるダンジョン。

 現在はセレナと一緒に魔物を倒してレベル上げの真っ最中だ。


 帝都に来てからはすでに数十日が経過していて、毎日のようにダンジョンに足を運んでは俺のレベルは面白いように上がっていた。

 ボウガンで魔物が倒せないと嘆いていたのは、今では遠い過去の話だな。


 現在の俺のレベルは34。

 レベル35になれば、ヒート弾が使用可能なカールグスタフM3が入手できるため、ドラゴンが来ても対抗できるように何としてでもそこまではレベルを上げるつもりだ。


 え?

 レベルアップが早すぎるんじゃないかって?


 もちろんこんなハイペースでレベルが上がったのには秘密がある。

 すべてはセレナのハイスペックなサポートのおかげだ。


 なんとセレナは、レベルが30台の魔物を倒さずに牽制しながら、それでいて1匹づつ誘導してくれるという離れ業を披露してくれているのだ。

 しかも、数十匹の魔物を傷つけずにだ。


 ただ、さすがのセレナも最初の頃は魔物を傷つずに処理できていなかった。

 魔物を瀕死状態にまで傷つけてしまって、俺が留めを刺すだけだけみたいな。


 しかし、今では余裕すらあるみたいで、こちらのようすをちらちらと見ながら戦っている。


 さすがは天才セレナ。

 末恐ろしい。



 そして、レベルが30を越えた時、ステータス画面にポイント交換時の弾数増加のお知らせが表示されていた。


 弾数があまりにも厳しすぎたから、いずれは何らかの処置があるだろうと予想はしていたんだけどね。

 まさか、ポイント数が増えるのではなくて弾数の増加とはな。


 こんな事なら、ポイント交換せずに温存しておけば良かった。

 まあ、結果論なんだがな。


 ハンドガンの弾が15→30 

 ショットガンの弾が6→12

 アサルトライフルの弾が10→20

 グレネードの弾が3→6

 対物ライフルの弾が5→10


 俺の冒険も折り返し地点に到達したと言う事だろうか?

 そろそろ、具体的に魔王攻略を考えなければいけない時期かもしれない。


 そして、レベルを上げている最中にマイクエスト報酬を入手していた。

 有刺鉄線とミリタリーテントだ。


 有刺鉄線とは、鉄で出来たロープに一定間隔で針がついているものである。

 侵入者を防いだり、戦場で敵の足を一瞬でも止めるために使われる。


 有刺鉄線はそのままの状態ではなくて、俺の背丈くらいの長さの鉄パイプに30cmくらいの間隔で5本がくくりつけられている形になっていた。

 長さは1kmぐらいで、そのまま引っ張ればいいので使い勝手は良さそうだった。

 魔物の進行を抑えるための陣地作りや、ベースキャンプの安全確保と今後大いに役立ちそうである。


 ミリタリーテントの方は迷彩柄の大きなテントなんだが特注品みたいで、組み立てる時の骨組みを伸縮させて大きさを一軒家くらいから1畳くらいまで自由に変更できる仕様だった。


 テントなんて何の役に立つんだと思う人がいるかもしれないが、テントに物を入れてガンボックスに戻すとなんと入れた物が収納できるのである。

 水筒に入れた水をガンボックスに収納できる事から早く気づくべきだったんだけどね。

 まあ、これで蒸留酒や予備の矢も持ち歩けるわけだ。


 テントは魔物を倒した時の収納に使いたいので、ミリタリーバックやポーチを早めに入手しておきたい。

 ちょっとした荷物を出すのにわざわざ大きなテントを出すのも大変だしね。



 次に、レベル25と30で入手した兵装の紹介もしておく。


 レベル25で入手した兵装はヘビーマシンガンのブローニングM2である。

 こいつは、第1次世界大戦から多少の改良をされただけで現在でも現役のベストセラーだ。

 12.7mmのヘカートⅡの対物ライフルと同じ弾を分速600発ほどで連射できる。


 しかし、入手できた初期弾倉が330発とベルト給弾(マシンガンでのマガジン、1帯は110発)は3帯だけだった。

 30秒もトリガーを引けばすぐに弾切れになってしまうので、これではマシンガンの意味を成さない。

 なので、基本的にブローニングM2は使わないだろう。


 肝心のブローニングM2の性能だが銃は基本的に使う弾で威力が変わる。

 つまり、対物ライフルで使うような弾を1秒間に10発も打ち込むのだからブローニングM2の瞬間破壊力は予測できるだろう。


 レベル30で入手した兵装はなんと120mm迫撃砲RTだった。

 これは車輪が2つ付いていて砲身が2080mm重量は600kgもある。


 当然ながら、こいつは個人兵装ではなくて連隊や中隊規模で配備されるような代物だ。


 使用する榴弾の重さは17~20kgにも及び、炸薬だけでも1.5~4kgもあるとんでもない代物で、通常発射速度は1分で6発、全力なら20発は発射可能だ。

 最大射程は8kmだが、初期装弾がロケットアシスト弾だったため13kmになっている。


 そして、肝心の威力の方は凄まじく装甲の薄い上面部に当たりさえすれば戦車ですら轟沈できるほどである。

 迫撃砲の個人兵装は60mmか80mm程度なのだから、そのいかれ具合がわかるだろう。


 そして、さらに迫撃砲の牽引車としてジープのグロウラーIVTのディーゼル車まで付いてきた。

 しかし、車内が広くて4人乗りになっていたり、時速100km程の最高速度が320kmになっていたりと、M1163の牽引車とは内装や性能が違うカスタム車のようだった。


 牽引車はパワーのあるディーゼルエンジン車が使われるのだが、エンジンを高回転で回す事が苦手なため速度は出ない。

 そのため、ディーゼルエンジンで速度を出そうとするなら排気量をあげるしかないのだが……


 ディーゼル車で320kmとはどんだけの排気量なんだよ? 

 無駄にハイスペックである。


 迫撃砲の弾の方は使いきりのようだが、なんと初期弾倉が600発もあった。

 この先、俺はいったい何と戦う事になるのだろう?


 俺に倒せと言うのか? 魔王ではなくて魔王軍そのものを。


 ぶっつぶせ! ぶっころせ! ですとろい!?


 先行きが不安である。



 数十匹いた魔物も残りは3匹になっていた。

 残りの魔物は、3匹とも口が耳元まで裂けている大きな犬のようなガルムだ。


 「セレナ、次だ!」


 「いくよぉ?」


 セレナにガルムが押し出される。

 剣の間合いに入った瞬間、ガルムの首が胴体から分かれていた。


 そして、レベルが35になった。


 どんなもんだ!

 やはり、俺は強いんだ!


 「よし、これで目標は達成した。セレナ! 残り2匹のガルムは同時に戦ってみる」


 「ほぇ? たっつん、大丈夫なのぅ?」


 セレナが残り2匹になったガルムを軽くあしらいながら、心配そうな顔をしてこちらを向いてきた。 


 セレナの判断だと危ない?

 2匹同時は厳しいか?


 だが、やるんだ! やれるようになるんだ!

 より困難な状況に陥ったとしても、その時に立ち向かえるようにな。


 「無茶は承知だ! やってくれ!」


 「うう、わかったのぅ」


 渋々なようすで返事をしたセレナが一瞬で俺の背後まで移動すると、ガルム2匹が大きな口を開いてほとんど同時に飛びかかってきた。


 わずかに先に飛び掛ってきた左のガルムを居合いで斬ろうと構えるが、右のガルムの攻撃が避けられないと判断してあきらめた。


 左のガルムを盾でいなして右のガルムの首を刎ねる。


 右のガルムを絶命させることはできたが、盾でいなしたガルムが即座に反転して飛び掛ってきた。


 「くっ!?」


 予想以上にガルムの動きが身軽で速い。


 俺の体は、剣を振り抜いた体勢で硬直していた。


 えっ!? 動けない! 体が動かない!

 まずい! 動け! 俺の体!


 首をめがけて噛み付いてきたガルムに、まるで水中を移動しているかのように俺の体の反応は鈍い。

 もどかしい自分の体を必死に動かして何とか回避をこころみる。


 ガルムの噛み付きはなんとか避けたが、俺の肩をガルムの爪が引き裂いていた。


 転がってガルムから距離を取ると、剣を鞘に収めて肩膝をついた状態で待つ。

 居合い一閃、間髪入れずに飛び掛ってきたガルムの首を掬い上げるように刎ね飛ばした。


 「ぷはっ! きっつー」


 「たっつん、あぶないのぅ」


 止めていた息を吐くと、駈け寄ってきたセレナが泣きそうな顔でこちらを見ていた。


 「大丈夫だ。かすり傷だか、ら……なぬぅ!?」


 HPを確認すると100も減っていた。


 慌てて攻撃を受けた肩の部分を確認する。


 革の鎧にはガルムの爪跡の形でぽっかりと大きな穴が開いていて、覗いていた裂傷のあとからは血が滲み出ている。

 痛みの方はアドレナリンの分泌で感じていなかったのか、気づけば傷口からはズクンズクンと激しい痛みが走っていた。


 急いで特効薬を使う。


 やっべえ。

 防刃ベストがなければ死んでるぞ、これ。


 どうにも、急激なレベルアップのせいで肉体と精神の感覚のずれが酷いみたいだ。


 何ていうのかなあ、魚雷が自分の船に向かって走ってくるのが見えてるのに船足が遅くて避けられないみたいな感じだろうか?

 動きは見えているから余裕かと思っていたら、自分の動きが予想以上のスローモーションで、やばいよ、やばいよ、みたいな? そんな感覚が狂ってる奇妙な感じだ。


 ガルムの爪でやすやすと切り裂かれてしまった革鎧を見て溜息をつく。


 「はあ、革の鎧もそろそろ限界だよな」


 うーん、レーベンに帰ったら親父に相談してみるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ