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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
163/225

162話 超えて行く者

 太陽が顔を出す頃には密林のダンジョンに到着していた。


 ダンジョンに入って少し進むと両手を広げて叫ぶ。


 「密林のダンジョンよ! 私は帰ってきた!」


 当然ながら、こんな場所で大声を出せば魔物達が集まってきて戦闘になる。


 え? 馬鹿だって?

 フフフ、これは辛酸を舐めて屈辱に塗れながら撤退するも、雪辱を果たすために戻ってきた男には必要な儀式なのだよ。


 まあ、キラーパンサー戦の前の軽いウォーミングアップだと思えばちょうどいい。


 日坂部達也 年齢19

 冒険者レベル24

 HP125

 MP0

 力115

 魔力0

 体力115

 速さ120

 命中280


 装備 

 ベレッタMODEL92(攻撃力100)9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×15発

 BODY ARMOR (防刃ベスト)

 エルフィンボウ(攻撃力80)

 矢筒 鋼の矢×50(攻撃力30)

 黒金の剣(攻撃力120)

 ナイフ(解体用)

 革のラウンドシールド改(防御力30+10)手裏剣(攻撃力20×10)

 革の鎧改(防御力40+15)投げナイフ(攻撃力50×3)

 ポシェット ソーン(最高品質)×5 特効薬(最高品質)×5 毒消し×2

 ジッポライター

 まきびし

 リュック


 お金

 4,517,010エル

 金貨 20枚


 アイテム 

 皮のマント 矢筒 鋼の矢×100  


 在庫 

 革のヘルメットランプ(防御力10) ナイフ(採取用) 真珠×20  

 小型ハンマー(採取用) なめし皮の風呂敷 コッキング紐


 POINT 2

 GUNBOX 

 BENELLI MODEL 3(攻撃力50×15)12GAUGE(00バックショット)×7

 HK417D(攻撃力600)7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×20

 PGMヘカートⅡ(攻撃力2600)12.7mm×99mm(フルメタルジャケット弾)×4

 ダネルMGL(攻撃力500)40mm×46mm(HE弾)×6

 FIM92 STINGER(攻撃力3000)70mm×1520mm(地対空ミサイル)×9

 9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×13

 12GAUGE(ライフルドスラグ)×7

 12GAUGE(BBバードショット)×4

 12GAUGE(00バックショット)×3

 7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×4

 40mm×46mm(HEDP弾)×3

 M67 FRAGMENTATION GRENADE(攻撃力1000)×3

 M18A1 CLAYMORE (攻撃力150×700)×3

 M84 STUN GRENADE×2

 VICTORINOX SOLDIER(アーミーナイフ)

 GHILLIE SUIT(迷彩服)

 10×50mm MILITARY BRF BINOCULAR RANGEFINDER(双眼鏡)

 NIGHT VISION ATN PS15-3I FOM 1400(暗視ゴーグル)

 1QTCANTEEN(水筒)

 SOURCE TACTICAL 3L HYDRATION PACK(ハイドレーション)

 SEYCHELLE(浄水ボトル)

 COMBAT RATION(戦闘糧食)×97


 NEW EQUIP

 エルフィンボウ


 ステータスは以前にキラーパンサーと戦った時から変わっていない。


 ただ、俺と言う中身はあの時とは別人である。


 1ポイントを使って、M67 FRAGMENTATION GRENADEを3個補充した。



 集まって来た魔物は20くらいだったが、後からばらばらとこちらに向かって来ているため正確な数はわからない。


 もっとも、所詮は入り口付近にいるような雑魚だ。

 気にせず戦闘を開始する。


 まずは、まきびしの効かない空を飛ぶ魔物からだ。


 エルフィンボウの弦をいっぱいまで引き絞ると、何処からか不思議な力が集まってきていた。

 30m程の距離まで引きつけるとふるふると震えていた弦を離して矢を放つ。


 まるで風に後押しされるようにして飛んで行った矢は、しかし、空の魔物を大きく外していた。


 あれ?

 ボウガンとずいぶん勝手が違うな。

 

 うーん、これは練習が必要かな?


 空を飛ぶ魔物との距離が10mを切る。

 ボウガンなら、すでにあきらめて剣へと持ち替えている距離だ。


 しかし、弓ならばまだ慌てるような時間じゃない。


 所詮は蝦トンボ。

 羽を射れば落ちる。


 距離が離れている間は完全に外してしまっていたが、間近まで迫って的が大きくなると矢は面白いように連続して命中していた。

 羽を射抜かれた魔物達は次々と地面へと墜落する。


 クロスボウと比較した場合、弓の最大の利点はその速射性でそれによって生ずる制圧力は圧倒的の一言だ。


 エルフィンボウか……いい物を貰ったな。


 飛んでいた魔物をすべて射落とすと、弓をリュックに掛けて手裏剣と投げナイフを連投する。

 残っていた魔物は黒金の剣による居合いですべて一刀の元に両断した。


 いい感じだ。


 雑魚が多数とは言え、火炎瓶を使わなくても楽勝で殲滅できた。

 そこそこの魔物も混じっていたのに攻撃を1撃も受けてはいない。


 俺は確実に強くなっている。


 ほぐれた体にギリースーツを装着すると、キラーパンサーの探索を開始した。



 密林のダンジョンは蒸し暑い。

 捜索を始めるとすぐに額からはぽたぽたと汗が零れていた。


 流れる汗を無造作に手で拭うと、リュックに入れてあるハイドレーションパックのチューブを咥えてこまめに水分を補給する。

 長期戦になる事は想定済みのため中身は○カリを入れてきていた。


 水筒だと何度もキャップを開けたり閉めたりと大変なんだよね。

 少しの探索なら水筒でいいけどキラーパンサーを見つけるまで何時間も掛かるんだ。

 フルマラソンとまではいかないがちょっとした登山くらい大変なんだよ。


 木から垂れ下がる蔦を切り払って針葉樹を掻き分けて、何処が道かわからないような悪路を進む。

 それも、2~3時間に1回くらいの割合で体を冷やさないように軽い戦闘をしながらと、キラーパンサー捜索は困難を極めていた。


 立ち止まると前かがみになってぜえぜえと荒い呼吸をする。


 何処にいるかわからないからな。


 目標を当ても無く探すのは精神的にも厳しいものがある。

 例えるなら、まるでゴールのわからないトライアスロンでもやっている気分だ。


 「お!? これはニンニクだ」


 草を掻き分けて進んで行くと図鑑で見たニンニクの草を発見する。

 アーミーナイフのスコップで土を掘ると、付属のはさみで根の部分を切ってニンニクを回収した。


 この世界ではダンジョンにしか実らないため、ニンニクはそこそこの高級品だ。

 ちなみに砂糖は、スノーパウダーという雪だるまのような魔物から大量に採取されるため比較的安価だ。


 儲け、儲け。

 うへへへ、帰ったら餃子パーティだな。


 馬鹿な事を考えながらも探索を継続するが、キラーパンサーはなかなか見つからなかった。


 双眼鏡を覗いて辺りを確認する。

 しかし、生い茂った木々が邪魔をして遠くまでは見渡せない。


 おかしいな? これだけ探したんだからそろそろ発見していてもいいと思うんだけどな

 ひょっとして、もういないんじゃないのか?


 体の方も疲れてきた。

 このままだとキラーパンサー戦に支障をきたすかもしれない。


 今日は戻るべきかと考えながら、額からぽたぽたと零れていた汗を拭う。

 ふと頭上に視線を向けると、そいつは木の上でふてぶてしく寝そべっていた。


 やっと見つけた!


 気持ちを落ち着けてリュックを降ろす。


 防刃ベストは着けない。

 こいつとは、小細工抜きで正々堂々と正面から戦う。


 今後の事を考えると、キラーパンサーくらいは地力で勝てるようにしておきたいからだ。


 もちろん、防刃ベストは着けた方がいいに決まっている。

 しかし、この先の戦いで圧倒的に不利な戦況でも戦わなければならない事があるかもしれない。

 その時になって、安全な状態でしか戦えないでは話しにならないからな。

 

 当たれば死ぬ、そんな状況でも臆せずに戦えるようにしておきたいんだ。


 安全を追求しなければ死んでしまい。

 しかし、リスクを冒さなければ強くはなれない。


 どちらにも理があり、どちらかしか選択はできない。


 二律背反。


 それは、ままならないもの。


 いずれにせよ、さらなる成長を望むのならば、何処かでリスクは冒さなければいけない。

 避けては通れない道なんだ。


 それで死んでしまったのなら、その時は・・・潔く死を受け入れよう。


 スラリと黒金の剣を抜き異常がないかの最後のチェックをする。

 パチンと音を鳴らして剣を鞘に収めると、キラーパンサーの前に正面から堂々と歩いて行った。


 どうしたんだろう?

 これから生き死にの掛かった戦いをすると言うのに、俺は妙に落ち着いてるな?


 デジャブー?


 以前にもこんな感覚があったような?


 ああ、そうだ。

 ボウガンを持ってゴブリンと戦った時だ。


 負けるわけがない。


 キラーパンサーはこちらの姿を確認すると、木から飛び降り前傾姿勢で身構えていた。

 さらに歩みを進めると、以前と同じようなスピードで猛然と迫ってくる。


 歩みを止めて、居合の構えで迎え撃つ。


 前傾姿勢になり、視野は全体をぼんやりと見るように観の目。

 剣は握らず柄に軽く手を乗せると体の力を抜いて脱力する。


 キラーパンサーが目前に迫る。

 極限まで精神を集中させると、時間がゆっくりと進み始めた。


 なんだ?

 俺のレベルは変わってないのに、以前よりキラーパンサーの動きがずいぶんと遅く感じる。


 キラーパンサーは以前と同じように直前で止まると、前足で払うように攻撃してきた。

 キラーパンサーの踏ん張った足が土にめり込み、土がねるのがはっきりと見えた。


 剣の間合いに入ると無造作に抜刀していた。


 手に残るは肉と骨を断つ感触のみ。

 斬った。


 ぼやけるような視界の端には、宙を舞うキラーパンサーの切断された前足と首が映っていた。


 「もはや、敵ではないな」


 剣をヒュンと鳴らして、鞭のように一振りする。

 付いた血を払うと鞘に収める。


 デスゲームのクエストを確認すると、クリアになっていた。

 そして、残り時間だったのが猶予期間の表示に変わっていた。


 やはりな。

 クリアしたからと言って、終わりと言うわけではないらしい。

 予想通り、魔王を倒すまで続くようだ。

 

 だが、今までのようにいちいち怯えて嘆いたりはしない。


 俺は、気がついたんだ。


 「何が来ようと、すべて倒せばいい」



 地面に座り込むと、転がっているキラーパンサーの首を眺めていた。


 少し前まではこいつに苦戦してたんだよな。

 この世界に来て、初めて本気で嬉しさと悔しさで泣いたんだ。


 もう、ずいぶん昔の事のようだ。


 「くっくっく」


 知らないうちに声を出して笑っていた。


 立ち上がるとキラーパンサーを解体する。


 こいつは売らずに家に飾っておくか。

 少しだけ、強くなった記念だ。


 誇らしげな気持ちを胸に、俺は密林のダンジョンを後にした。

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