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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
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159話 達也の帰還

 「ただいま」


 日も暮れた頃に宿屋に到着すると、セリアとセレナの部屋の前で声を掛ける。


 数瞬と掛からず、扉が壊れそうな勢いで2人が部屋から飛び出して来た。


 「だっづん! びぃえー!」


 「達也! この馬鹿!」


 セレナとセリアが体当たりするような勢いで抱きついてきた。


 「すまん、森で道がわからなくなって彷徨っていたんだ」


 「ゴブリン相手に何やってるのよ! 私がどれだけ、どれだけ心配、くっ、達也が弱いから! 達也がもっと強かったらこんなに……」


 「ぐっ、すまん」


 普段はクールなセリアが泣き出しそうな顔で喚き散らしていた。

 俺の方は、セリアの辛辣な言葉が心に深く突き刺さる。


 俺だって……


 思わず言い返しそうになるが、ぐっとこらえる。

 セリアの言葉に何も言い返すことができない。


 今は、まだ。


 居た堪れなさを感じつつ黙ってセリアの顔を見つめていると、目が充血して真っ赤になっている事に気がついた。


 「泣いていたのか?」


 「せ、セレナが心配していたんだからね? ひっく、セレナが心配して」


 何とはなしに尋ねると、セリアが驚いたようにびくりと背筋を伸ばして、泣いていたのを誤魔化す為かしゃくりあげながらしきりにセレナが心配していたと繰り返していた。


 「そうか、セレナが心配していたんだな」


 「そうよ、セレナが心配していたの」


 セリアが顔を赤く染めて恥ずかしそうに視線を逸らす。

 その可愛らしい仕草に思わず顔がほころんでしまう。


 何だかんだ言ってもセリアも心配してくれてたんだな。

 不謹慎だがちょっぴり嬉しい。


 「びぃえー、びぃえー」


 セレナの方はもうどうにもならない。

 俺の腰にしがみついたまま大きな目を真ん丸にして、びぃーびぃーといつまでも泣いていた。

 とにかく、頭を撫でて泣き止むのを待つしかない。


 ひたすら頭を撫でていると泣き疲れたのかそれとも安心したのか、セレナが俺の腰にしがみついたままくぅーくぅーと可愛らしい寝息を立てていた。

 セレナを抱き上げるとそのまま部屋のベッドまで運んで寝かしつける。


 戻ってくると、セリアの方はいまだ収まりがつかないのか、待ち構えていたようにしつこく文句を言ってきた。


 泣く子と女には勝てない。

 ひたすら謝り続けて愚痴を聞き続ける。


 辛抱強く耐えていると、やっと気が済んだのかギルドに見つかった事を報告すると言って出かけて行った。


 アーチェも言っていたがギルドに緊急クエストで捜索依頼まで出してくれていたらしい。

 セリアとセレナも毎日遅くまで捜索していたそうだ。


 西の都の緊急クエストだから下手すれば億単位だろうな。

 本当に迷惑を掛けてしまった。

 すまん。


 セリアが出て行った後、静かになった宿屋の共有スペースに一人佇む。


 居合いの構えを取ると深呼吸をして抜刀する。


 シュンと鋭く空気を切り裂く音が静かな空間に響き渡った。


 「弱い……か」


 抜き身の刀身を眺めながら、セリアが言った言葉を反芻はんすうする。


 剣を鞘に収めると自分の部屋に戻った。



 手荷物を整理しているとリュックの中に収納していた弓に目が止まる。

 宿屋の備え付けのベットに腰を下ろすとティアから貰った弓を確認する。


 手に持った弓はまるでワックスでも塗ってあるような鈍い光沢を放っていて、古めかしい年代物のはずなのに不思議と新品同様だった。


 こいつは自己再生するらしく弦なども再生するから張替えは不要らしい。

 興味本位で原理を聞いてみたのだが、ティアも先代から受け継いでいるだけでエルフの他の技術同様あまり詳しい事はわからないみたいだった。


 エルフのオーバーテクノロジーか……


 構造を知っている者がいないとはどうにもおかしいんだよな。

 俺には話せないと遠まわしに断られただけなのかもしれないけど、ひょっとするとエルフが作ったわけではないのかもしれない。


 それより、切羽詰っていたとは言え、こんな大層な物を貰ってしまって本当に良かったんだろうか?


 「…………」


 まあ、返せと言われたら返せばいいか。

 気楽に考えておこう。


 弦をいっぱいまで引いてから、空打ちで弓が傷まないようにゆっくりと戻す。

 痛んでも自動修復するんだけど、まあ、気持ちの問題だ。


 うーん、通常の弓のサイズでボウガン並みの威力とか反則なんだよな。

 2連装強化ボウガンは大きくて荷物にもなってたから非常に助かる。

 剣でも戦う事になるだろうから、少しでも荷物を減らしておきたい所だったんだよね。


 次に、ゴブリン討伐報酬で得たC4爆薬を確認する。


 何だかんだで忙しくて、しっかりと確認する時間がなかったんだよね。

 入手したC4爆薬が30kgと、ちょっとした戦争でも出来そうな量だった。

 こいつは無線式の起爆装置付きで遠隔操作で爆破する事ができる。


 対戦車地雷に使われているC4爆薬の量は、500gくらいだから相当な量だろう。

 もっとも、あれは戦車の弱い部分のキャタピラを吹っ飛ばして走行不能にする事が目的なんだけどね。

 さすがに、爆発で戦車の分厚い装甲を破壊するのは無理がある。

 しかし、大型バスくらいならエンジンルームに3kgも仕掛ければ原型を変えるくらいはできるほど強力だ。



 さて、確認は済んだ。


 ゴブリン討伐の方はどうしようか?


 森の中をかなりの時間彷徨ってたから、さんざん居合いで斬ったんだよな。

 クエストも完了しているし、これ以上は必要ないかな。


 はあ……


 それよりも、キラーパンサーとすぐにでも再戦したい。

 早く、この力を試してみたい!


 だけど、セリアの話しだと西の都にはまだ滞在するようなんだよな。


 確か、近辺のダンジョンにサバイバルナイフを入手できる魔物がいたな。

 サバイバルナイフがあれば解体用のナイフを装備から減らせる。


 明日の予定を決めると、ベットに横になって就寝した。

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