表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
142/225

141話 特効薬?

 宿屋にある共有スペースの大きなソファに座ると、緊急クエストの金策について考えていた。


 どうやってお金を稼ごうかな?


 俺の隣でごろごろと甘えていたセレナの頭を撫でる。


 「お? セリアおかえり」


 「はあ、ただいま」


 「セリアちゃん、おかえりぃ」


 セリアが帰ってくると、セレナが嬉しそうに飛びついて行った。

 帰ってきたセリアはなんだか疲れたような顔をしている。


 「ああ、もう! 西の都なら手に入ると思ったのに!」


 セリアが突然大きな声を出した。


 びっくりしてセリアを見ると、抱きついていたセレナも驚いたみたいできょとんとした目でセリアの顔を覗き込んでいた。


 「ああ、ごめんなさい。びっくりさせちゃったわね」


 セリアはセレナの頭を撫でて謝っていた。


 「どうしたんだよ?」


 心配になったので聞いてみる。


 「達也に言っても、仕方がない事よ」


 「言ってみないと、わからんだろ?」


 「はあ、わかったわよ。特効薬を探しているのよ。緊急時用に私達3人分の特効薬を確保しておきたいの」


 セリアは面倒そうな顔をすると溜息を吐いていた。


 本当は即効性のあるヒールポーションが欲しいらしいのだが、そっちの入手は絶対に無理だからあきらめていたそうだ。

 しかし、特効薬なら入手できると血眼になって探していたらしい。


 「なんだ、そんな事か。それなら、早く俺に言えば良かったんだよ」


 部屋に戻ると特効薬を持って来る。

 セリアに投げて渡す。


 「ほらよ!」


 セリアに特効薬を渡すと驚きで声が出ないのか、呆然としたような顔で渡された特効薬を凝視していた。


 「俺様に感謝するんだな」


 得意になってセリア達を見る。


 「たっつんすごぉい!」


 「ありえないわ! 達也が特効薬を持っているわけがないもの。特効薬は、お金があったからと入手できる物ではないのよ? ふん! それに、よく考えたら私ではこれが本物かの確認ができないわ。だから……偽物ね!」


 セリアが俺を指差すとぴしゃりと断言してきた。

 そして、小さい声で『私でも入手できないのに、達也が入手できるわけないもの』と呟いていた。


 聞こえてるぞセリア?


 「ええ? 偽物なのぅ? たっつんだめだよぅ?」


 セレナが隣で可愛らしく叱ってきていたがとりあえずスルーする。


 「あのなあ、俺はその特効薬を作った工房で働いていたんだぞ? いや、その特効薬を親方と一緒に作ったと言ってしまっても過言ではないような、そんな感じなんだぞ?」


 「ええ? たっつんすごぉい」


 「はあ? 何をわけのわからない事を言っているのかしら? 見栄を張るのは止めなさい。みっともないわよ?」


 「ええ? 見栄なのぅ? 一体どういうことなのぅ?」


 俺とセリアの言い合いに混乱したのか、セレナが隣で目を回していた。


 「だいたいから、これが本物ならいくらすると思っているの? 競売に出せば、1つ2000万エルは下らないわよ?」


 「な、なぬ!? そ、そんなにするのか? え? だって、定価100万エルだぞ?」


 「はいはい、もうお終いにしましょう。疲れたから寝るわ」


 「おい、特効薬は? セリアさーん」


 セリアは特効薬を机に投げると部屋へ戻って行った。


 ちくしょう! セリアのやつめ!

 端っから、俺の事を信じる気がないな。

 本当の事なのに!

 くやしいのう! くやしいのう! くやしいのう!


 両膝を地面について正座のようになると、どんどんと地面を叩いて悔しがる。


 セリアのやつめ、人の厚意を踏みにじりやがって許さんぞ!


 ゴゴゴと復讐の念が炎のように燃え上がる。


 どうしてくれようか?

 コオロギでも投げつけてやろうか?

 うへへへへ。


 復讐心に燃えていると不意にとんとんと肩を叩かれた。

 顔を上げるとセレナがニコニコしていた。


 「セレナは、たっつんの事信じてるよぉ?」


 「セ、セレナあああ!」


 おお、女神様じゃあ!

 眩しい、眩しくて見えない。


 「セレナは俺の事を信じてくれるんだな?」


 「うん! 特効薬は偽物なんだよねぇ?」


 「どぅああああ! ぜんぜん信じてないじゃないかあああ!」


 最後の希望まで失われた。


 がっくりと地面にへたり込む。


 絶望に打ちひしがれていると不意にセレナに頭を抱きすくめられた。

 セレナの巨大な胸元に顔が埋まってしまう。


 なん……だと?

 俺の怒りと絶望が……消えた?


 「良い子、良い子」


 「あれ? 俺は一体何を怒っていたんだ? 何も考えられない。うへへへへ」


 セレナに抱きすくめられたまま大人しく頭を撫でられていた。

 重力には逆らえないためそのまま体重をあずける。


 そう、これは重力という名の物理法則だからぎりぎりセーフなのだ。


 ここは天国か?

 ああ、馬鹿になるぅう。


 「良い子、良い子………………飽きた!」


 セレナがぼそりと呟いたかと思うと急に立ち上がった。


 全力でセレナの胸に体重をあずけていた俺は、天罰覿面てんばつてきめん勢いよく顔面から地面へとダイブしてしまう。


 「ぶへっ!」


 あいたたた。

 まったく、これだからお子様は!


 顔をさすりながら起き上がり周りを確認すると、セレナは自分の部屋へ戻って行ったようだった。


 共有スペースに1人取り残される。

 静まり返った空間に、ぽつんと置いてある特効薬に目が止まった。


 「………………」


 競売場で2000万エルで売れると言っていたな。

 明日、競売場に行ってみるか。


 部屋に戻ると眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ