135話 黒金の剣
さて、行くか。
ここは密林のダンジョンである。
装備一式を親父から受け取ると、キラーパンサーを倒すために来ていた。
ギリースーツに身を包むと周囲の草木と同化する。
余計な魔物との戦闘で消耗するわけにはいかないからな。
ただ、黒鉄の剣の試し斬りはしておきたいので手頃な魔物を探す。
ブラットプラントが1匹だけいた。
こいつにしよう。
今の俺なら倒せるはずだ。
今の装備はこんな感じだ。
日坂部達也 年齢19
冒険者レベル24
HP125
MP0
力115
魔力0
体力115
速さ120
命中280
装備
ベレッタMODEL92(攻撃力100)9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×15発
BODY ARMOR (防刃ベスト)
GHILLIE SUIT(迷彩服)
2連装強化ボウガン(攻撃力100×2)
矢筒 鋼の矢×50(攻撃力30)
黒金の剣(攻撃力120)
ナイフ(解体用)
革のラウンドシールド改(防御力30+10)手裏剣(攻撃力20×10)
革の鎧改(防御力40+15)投げナイフ(攻撃力50×3)
ポシェット ソーン(最高品質)×5 特効薬(最高品質)×5 毒消し×2
ジッポライター
まきびし
リュック
お金
2,411,050エル
金貨200枚
アイテム
矢筒(鉄の矢×40 鋼の矢×10) 皮のマント 弦(予備) コッキング紐
在庫
革のヘルメットランプ(防御力10) ナイフ(採取用) 真珠×20
小型ハンマー(採取用) なめし皮の風呂敷
POINT 3
GUNBOX
BENELLI MODEL 3(攻撃力50×15)12GAUGE(00バックショット)×7
HK417D(攻撃力600)7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×20
PGMヘカートⅡ(攻撃力2600)12.7mm×99mm(フルメタルジャケット弾)×4
ダネルMGL(攻撃力500)40mm×46mm(HE弾)×6
FIM92 STINGER(攻撃力3000)70mm×1520mm(地対空ミサイル)×9
9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×20
12GAUGE(ライフルドスラグ)×7
12GAUGE(BBバードショット)×4
12GAUGE(00バックショット)×3
7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×4
40mm×46mm(HEDP弾)×3
M67 FRAGMENTATION GRENADE(攻撃力1000)×1
M18A1 CLAYMORE (攻撃力150×700)×3
M84 STUN GRENADE×2
VICTORINOX SOLDIER(アーミーナイフ)
10×50mm MILITARY BRF BINOCULAR RANGEFINDER(双眼鏡)
NIGHT VISION ATN PS15-3I FOM 1400(暗視ゴーグル)
1QTCANTEEN(水筒)
SOURCE TACTICAL 3L HYDRATION PACK(ハイドレーション)
SEYCHELLE(浄水ボトル)
COMBAT RATION(戦闘糧食)×114
NEW EQUIP
黒金の剣
ブラッドプラント
レベル22
HP210
MP0
力180
魔力0
体力200
速さ20
命中50
魔境のダンジョンで、かなりの弾を消耗してしまったんだ。
<使ってしまった弾薬>
手榴弾2、クレイモア2、40mm×46mm(HE弾)12発、40mm×46mm(HEDP弾)3発、ダブルオーバック×7発、7.62mm×51mm×19発、12.7mm×99mm×3発
魔境のダンジョンで、2ポイント使って40mm×46mm(HE弾)を6発補充していた。
ギリースーツの偽装を解除して戦闘の準備をする。
まきびしは蒔かない。
今回の目的は剣の試し斬りだからだ。
遠距離から2連発でボウガンの矢を射ると、手裏剣を投げて最後に投げナイフを投げつけて魔物のHPを削る。
黒金の剣をすらりと抜くとブラッドプラントと対峙する。
今のレベルでも、こいつくらいの力で殴られたら危険だろう。
もっとも、攻撃が当たったらな。
「ふふふ」
自分でも気づかない内に笑っていた。
ブラットプラントが攻撃してくる。
しかし、それは完全にスローモーションだった。
こんな攻撃が当たるわけがない。
正眼に構えた黒鉄の剣を唐竹割りで振り下ろす。
攻撃と避ける動作を同時に実行する。
スパンと黒金の剣がブラットプラントの体を通り抜ける。
黒鉄の剣の切れ味は凄まじく、たった一刀でプラッドプラントを完全に両断してしまった。
僅かばかりの経験値が入る。
う~ん、すばらしい切れ味だった。
これは削りはいらなかったかな?
防刃ベストは装着していても経験値が貰えるんだよね。
つまり、キラーパンサー戦に使っても問題ないんだ。
これは非常に心強い。
暗視ゴーグルやギリースーツはアウトだったんだけどな。
ルールが良くわからんな。
ギリースーツを着て第3匍匐で前進する。
魔物との距離が近づくと、第4、第5と移行して、最後には地面に這いずるようになった。
匍匐前進には第1~5まであって、だんだんと移動する速度と姿勢が低くなって、その代わりに隠密性が上昇するんだ。
近づいてきた魔物に動きを完全に止める。
魔物達は俺の目の前を通り過ぎていったが、どうやら俺の存在には気づかなかったようだ。
ギリースーツの偽装は完璧である。
ミリオタ魂に火が点きそうになるが、ここはグッと堪える。
ここで無駄弾を使うわけにはいかないのだ。
「ステンバーイ! ふぅうううう」
深呼吸して、高ぶる気持ちを落ち着ける。
ちなみにステンバーイとは、ミリオタ用語では馬鹿な真似はするなよと言う意味だ。
本当はスタンドバイでいつでも行動できるようにと言う意味なんだが、某映画の翻訳の具合でそうなった。
その後、何時間も彷徨うがキラーパンサーを発見できなかった。
双眼鏡で周囲を覗くが、生い茂った木々が邪魔をして遠くまで見渡す事ができないので大変だ。
水筒の中身を飲もうとして空になっている事に気づく。
こんな長時間の探索になるとは……
予備の水分として持ってきたハイドレーションを取り出すと、チューブを咥えて水分補給をする。
おお、これは便利だな。
長時間の探索ならこっちを使った方が良さそうだ。
ちなみにハイドレーションとは、フィルム状のソフトボトルにチューブが付いていて歩きながら水分が補給できるという優れものだ。
背負ったリュックの中にソフトボトルを入れて、伸ばしたチューブを背負ったリュックの紐の部分に固定して使用する。
そして、さらに彷徨う事数時間。
お目当てのキラーパンサーをついに見つけた。
ギリースーツの偽装を解くと、戦闘の邪魔にならないように静かにリュックと矢筒を外す。
周囲の安全を確認すると戦闘を開始した。
先制攻撃の矢を射る。
しかし、キラーパンサーは軽やかに避けた。
完全に不意打ちだったんだが、伏せている状態からサイドにステップしやがったんだ。
とんでもない身軽さだ。
そして、爆発したかのような速度でこちらへ向かって来た。
当然ながら矢を装填している時間は無い。
強化ボウガンを投げ捨てる。
そして、投げナイフを抜こうとして……あきらめた。
予想以上に速い。
ここは、下手な小細工をせずにおとなしく剣を抜く。
下手をすると、剣を抜く暇すらなく死ぬ。
落ち着いて、手順を頭の中に思い描く。
キラーパンサーは、俺を殺すために咽に噛み付いて来るだろう。
しかし、噛み付く瞬間には体を伸ばして必ず隙ができるはずだ。
だから、頭を突き出して俺の咽に噛み付く、その瞬間に斬る。
この作戦をひらめいたのは、体が伸びきってしまった時に攻撃を避けられなかった教訓からだ。
俺の速度ではそこにしか勝機はない。
だから、そこにすべてを賭ける。
そして、キラーパンサーが目の前に来た。
さあ、いつでも来い。
一撃で斬り落としてやる。
だが……来ない。
キラーパンサーが直前で止まると、前足の爪で払って攻撃してきた。
え? あ? 死んだ?
予想外の攻撃に体からドッと冷や汗が噴出す。
体を前足の爪でなぎ払われた。
ジョリン! という甲高い金属の擦れる音が鳴った。
一瞬の静寂。
どうやら、鎧に仕込んであるナイフが防いでくれたようだった。
しかし、革の鎧にはザックリと爪で引っ掻いたような穴が開いていた。
慌ててHPを確認するが減っていない。
どうやら、防刃ベストのおかげで無傷だったようだ。
深く息を吐く。
ああ、くそっ! 俺は馬鹿だ!
他の攻撃パターンがある事を失念していた。
反省して仕切り直す。
防刃ベストが防いでくれたとは言え過信はできない。
突きと衝撃は殺せないからな。
あの牙で噛まれれば防刃ベストを軽く貫くだろう。
当然ながら、防刃ベストの無い場所に攻撃されればダメージを受ける。
気を抜けばすぐに死が待っているんだ。
再度キラーパンサーと応戦する。
何度も爪で攻撃を受けてしまうが、防刃ベストのおかげで無事だった。
キラーパンサーとじりじり睨み合う時間が続く。
お互いに間合いを計るように位置取りの応酬をする。
キラーパンサーが動いた。
爪で顔を引っ掻かれる。
キラーパンサーの爪先からはきらりと血の雫が舞っていた。
だが、その攻撃は見えている。
避けられなかったのではない。
攻撃させたんだ。
薄皮一枚で避けて攻撃に転じる。
体勢の流れたキラーパンサーを渾身の一振りで斬る。
しかし、転がるようにくるりと避けられた。
ちきしょう!
俺の斬撃の速度が絶望的なまでに足りないんだ。
一進一退の攻防が続く。
まだ、こちらの攻撃は一度も当たっていない。
それなのに、こちらは引っ掻き傷で血まみれだった。
剣を握る手には力が入らず足もぶるぶると震えている。
どうやら限界が近いようである。
ぜえぜえと荒い息を吐く。
死と隣り合わせだと消耗が激しい。
しかし、キラーパンサーも苦しそうに呼吸して体を上下させていた。
お互いに疲弊している。
決着の時は近い。
爪で攻撃しても埒が明かないと判断したのか、キラーパンサーが今度こそ咽に噛み付いてきた。
この瞬間をひたすら待っていた。
渾身の力を込めて掬い上げるように斬りつけると、血飛沫を撒き散らしながらキラーパンサーの首が宙を舞っていた。
荒い息を吐き、飛んで行った首に視線を移す。
生い茂った草むらに、キラーパンサーの首が無造作に転がっていた。




