133話 一時のお別れ
レトアの港に着いた。
ここからモニカまでは目と鼻の先で、直接モニカへ向かえば早いのだが……
セレナが俺の腕にしがみついて離れなかった。
まあ、ずっと一緒にいたから仕方がないよね。
セレナとお別れのため、レーベンまではという約束で一緒に向かう。
そして、レーベンに到着するとセリア達と別れを告げる。
「それじゃあ、またな」
「ええ、またクエストがあったらね」
「え? え? たっつん? 何処行くのぅ?」
1人状況が理解できていなかったのか、セレナが動揺していたようだった。
これは、ひょっとするとレーベンまでと伝わってなかったかな?
「ほら、達也にお別れの挨拶をして」
「やだぁ、やだぁ、いやー、ひっく、びぃえぇぇん」
セリアが諌めるように促すと、やっと状況が理解できたようでセレナがわんわんと泣き出した。
セレナが俺を見ると素早く抱きついてくる。
ほっぺたをぷっくりとさせると、そのまま顔を赤くしてしがみついていた。
あ~あ、これはもう完全に駄々っ子モード入ったな。
ここまで懐いてもらえると、俺としても別れが辛くなってくるよな。
セリアを見ると溜息をついていた。
「どうするんだ?」
セレナの頭を撫でながらセリアに尋ねる。
「困ったわねえ。しばらくは、のんびりしたかったのだけど。達也は、何処かにクエストに行く予定はある?」
何処かに行くクエストか?
この後にキラーパンサー戦が待ってるんだが、これは近場にダンジョンがある。
何処かに行くとすればその後にあるゴブリン10万匹討伐かな?
「レイクウッドに行って、ゴブリン討伐をしようかと思っているんだが」
「は? ゴブリン討伐? レイクウッドって西の都の近くにある? それより、ゴブリンなんて討伐してどうするのよ?」
セリアが怪訝な顔をして聞き返してくる。
まあ、普通はそうだよね。
俺だって、ゴブリン討伐とか言われたら反応に困るからな。
「まあ、個人的な理由で討伐しないといけないんだよ」
「ふ~ん。それも秘密なのかしら?」
セリアがいつものポーズを取ると、話してはくれないのと視線を向けて聞いてきた。
セリアに黙って頷く。
すまん。
なるべく嘘は言いたくない。
「わかったわ。それで、すぐにレイクウッドに行くのかしら?」
「用事が済んだら、すぐに向かおうと思っている」
「だそうよ? セレナ。だから、少しだけお別れするだけよ」
セリアがセレナの顔を覗き込むようにして話しかけていた。
「ほんとぅ?」
セレナが一度セリアを見た後に、つぶらな瞳を俺に向けて聞いてきた。
あまりの可愛らしさに、思わずセレナを抱きしめてもふりたくなるのを必死に堪える。
「ああ、約束だ」
呼吸を落ち着けると、にっこりと笑顔でセレナに答えた。




