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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
132/225

131話 魔境の戦場

 セリアが叫んでいた。


 セリアの声と同時に、俺達はダンジョンの出口に向けて走り出す。


 このダンジョンでモンスターパニック?

 やばいんじゃないのか?


 冒険者の死因の半数以上がモンスターパニックによるものだ。

 ドクン、ドクンと心臓の鼓動が早くなってくる。


 「この先にある大部屋さえ抜ければ、あとは何とかなるわ。問題は沸いた魔物の数だけど、こればかりは運しだいね。急がないと、ダンジョンの奥からも来られたらお終いよ」


 セリアの顔色が悪い。

 予想通り、かなり危険な状態みたいだ。


 モンスターパニック時の大部屋は地獄になる。

 魔力が溜まる場所に魔物が沸くからだ。


 大部屋の入り口まで来ると、凍りついたようにセリアの動きが止まった。

 中を覗いて見ると、軽く数百匹を超える魔物が沸いていた。


 このレベルの魔物が数百?

 なんてこった。


 時間を掛ければ今のセリア達なら何とか倒せる数なんだが、しかし、今はモンスターパニックの最中だ。

 後方からも来て挟撃されれば死ぬしかない。


 セリア達でもこの数、スキル全開のフルパワーで20分くらいか?


 銃さえ使えば簡単に殲滅できるんだが、セリア達にちょっとだけあっちに行っていてくれと頼むのは無理だよな。


 しゃあない。

 ならば、俺が戻ってダンジョンの奥から来る魔物を足止めするしかないか。


 「セリア! 俺が後方から来る魔物の足止めをするから、その間に大部屋を掃除しておいてくれ」


 「はあ!? 何を馬鹿な事を言ってるの? 達也にそんな事ができるわけがないでしょう?」


 セリアが驚いたように聞き返してきた。


 セリアのやつ、困惑しているみたいだな。

 まあ、当然だよね。


 しかし、今はごり押しする。


 「時間が無いんだ! それにどの道、此処にいる魔物を倒さないと戻れないだろ?」


 「それは……でも」


 「たっつんなら、大丈夫だよぉ。セレナにはわかるもん」


 セレナが俺の目をじっと見ながら言っていた。

 そんなセレナをセリアが呆然としたように見る。


 「ああ、もうわかったわよ。達也! 死ぬんじゃないわよ?」


 はは、セリアのやつ自棄やけになってるな。


 「わかってる」


 そう答えると、2人を尻目にダンジョンの奥に向かって走り出す。


 後方から魔法の詠唱が聞こえてきた。


 どうやら、先制攻撃で範囲魔法を使うみたいだ。

 心配ないとは思うが、2人とも死なないでくれよ。



 今の俺の装備はこんな感じだ。


 日坂部達也 年齢19

 冒険者レベル24

 HP125

 MP0

 力115

 魔力0

 体力115

 速さ120

 命中280


 装備 

 ベレッタMODEL92(攻撃力100)9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×15発

 BODY ARMOR (防刃ベスト)

 2連装強化ボウガン(攻撃力100×2)

 矢筒 鋼の矢×48(攻撃力30)

 ロングソード(攻撃力10)

 ナイフ(解体用)

 革のラウンドシールド改(防御力30+10)手裏剣(攻撃力20×10)

 革の鎧改(防御力40+15)投げナイフ(攻撃力50×3)

 ポシェット 火炎瓶×3 ソーン(最高品質)×10 特効薬(最高品質)×5 毒消し×5

 ジッポライター

 まきびし

 リュック


 お金

 205,518,000グルニカ


 アイテム 

 ソーン(最高品質)×10 矢筒(鉄の矢×40)

 皮のマント 弦(予備) コッキング紐 


 在庫 

 革のヘルメットランプ(防御力10) ナイフ(採取用) 真珠×20 

 小型ハンマー(採取用) なめし皮の風呂敷


 POINT 5

 GUNBOX 

 BENELLI MODEL 3(攻撃力50×15)12GAUGE(00バックショット)×7

 HK417D(攻撃力600)7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×20

 PGMヘカートⅡ(攻撃力2600)12.7mm×99mm(フルメタルジャケット弾)×7

 ダネルMGL(攻撃力500)40mm×46mm(HE弾)×6

 FIM92 STINGER(攻撃力3000)70mm×1520mm(地対空ミサイル)×9

 9mm×19mmブラックタロン(ホローポイント弾)×20

 12GAUGE(ライフルドスラグ)×7

 12GAUGE(BBバードショット)×4

 12GAUGE(00バックショット)×10

 7.62mm×51mm(フルメタルジャケット弾)×23

 40mm×46mm(HE弾)×6

 40mm×46mm(HEDP弾)×6

 M67 FRAGMENTATION GRENADE(攻撃力1000)×3

 M18A1 CLAYMORE (攻撃力150×700)×5

 M84 STUN GRENADE×2

 GHILLIE SUIT(迷彩服)

 VICTORINOX SOLDIER(アーミーナイフ)

 10×50mm MILITARY BRF BINOCULAR RANGEFINDER(双眼鏡)

 NIGHT VISION ATN PS15-3I FOM 1400(暗視ゴーグル)

 1QTCANTEEN(水筒)

 SOURCE TACTICAL 3L HYDRATION PACK(ハイドレーション)

 SEYCHELLE(浄水ボトル)

 COMBAT RATION(戦闘糧食)×114


 NEW EQUIP

 BODY ARMOR

 PGMヘカートⅡ

 12.7mm×99mm(フルメタルジャケット弾)


 新装備の防刃ベストは、斬撃に対しては完璧に近い防御力を持っている。

 魔物の爪によるひっかき攻撃なんかは完全に防御してくれるだろう。


 しかしその反面、衝撃と突きに対してはあまり効果は見込めない。

 魔物の角による突き刺し攻撃や体当たりなどの突進攻撃には、充分な注意をしなければいけないだろう。



 バトルライフルのHK417を取り出すと、途中に出遭ったモンスターパニックで沸いたと思われる魔物を吹き飛ばす。


 俺には勝算があった。

 それは、クレイモア地雷である。


 こいつは、人海戦術で突撃してくる大勢の兵士を止めるために作られた地雷である。

 小さいパチンコ玉のようなベアリング弾が700個入っていて、こいつをC4爆薬で爆破する事により指向性を持たせて飛ばす兵器だ。


 1g程の弾を4300kmほどで飛ばすため、小さなベアリング弾1発の威力が720ジュールまで達する。

 つまり、ベレッタの1.5倍ほどの威力の弾を700個もばらまくということだ。

 ダメージを与える有効範囲は200m~250mほどで、殺傷範囲は50mとかなりの広範囲である。


 戦場となる場所の地形を確認する。

 大部屋からここまでは500mほどの距離で、その先は長い十字路になっている。

 十字路の左右の道はすぐに急なカーブを描いていて10m先も見えず、十字路より先の直線は200mくらい先でゆるいカーブになっていて先の方は見えない。

 1本道の通路の幅は10mくらいで天井の高さは15mくらいだ。


 天井が低いな。

 グレネードランチャーの発射角度に気をつけないとな。

 高い位置から射撃できればいいんだけど……


 大部屋から200m、十字路から300mほど離れた場所に、なんとか登れそうな岩場を発見した。

 よし、射撃時はここから狙おう。


 クレイモア地雷は最大の威力を発揮できるように、広くなっている十字路の左右に設置する。

 ここにクレイモア地雷を設置する事が勝敗の決め手になるはずだ。


 通路の左右にクレイモア地雷を1個づつ設置した。

 これでよし!


 何匹来るかわからないし戦況がどうなるかわからない。

 少なくとも回収している暇はないだろうから、とりあえず2個も設置しておけばいいだろう。


 まきびしを十字路に撒いて、一度に攻めて来られないように防衛戦を張る。

 焼け石に水だろうが何も無いよりはましだろう。

 回収している時間は無いだろうから使い捨てになる。

 無事に帰れたら親父にまた作ってもらおう。


 すぐに、ドドドドドと地響きのような音が鳴り響いてきた。


 もう来やがったか?

 数は? 100? 200? どんだけいるんだよ?


 見えてきた魔物の中にはあのケルベロスの姿もあった。

 心臓がドクンと跳ね上がりそうになる。


 急いで狙撃ポイントに走ると、アンチマテリアルライフルのヘカートⅡを取り出した。


 距離がある内にケルベロスを狙撃して仕留めるんだ。

 あいつだけは近づかせるわけにはいかない!


 的がでかい上に距離もすでに500mを切っている。

 狙いをつける必要もない。


 サイトを覗くと即座にトリガーを引く。


 ケルベロスの頭を撃ち抜くと、頭部がすいかのように弾け飛んだ。

 弾は貫通したのか、ケルベロスの後方にいた魔物も一緒に吹き飛んだようだった。

 

 ヘカートⅡ、凄まじい威力だ。


 ボルトアクションで次弾を装填すると、2発、3発と3つの頭をすべて撃ち抜く。

 すでに絶命していたみたいだったが、念のためすべての頭を潰しておく。

 

 怖いからね。


 ケルベロスは前のめりに倒れた所を、後列から来た魔物達に次から次に踏み潰されていた。


 まずは、大物を先に仕留めて一安心といった所か?


 だが、その間に300mまで距離を詰められていた。

 魔物の先頭集団はすでに十字路に差し掛かっていて、十字路の左右からも魔物達がちらほら合流しているようだった。


 グレネードランチャーのダネルMGLを取り出すと、高所より魔物の群れに向けて発射する。

 40mmの炸裂弾が群れの中心部に着弾すると、魔物達は爆風に煽られて10~20匹の魔物が前後左右に吹き飛ばされていた。

 吹っ飛ばされた魔物は他の魔物に衝突して、衝突された魔物も連鎖して倒れる。

 倒れた魔物は後方から来た魔物に踏みつけられて絶命していた。


 殺傷範囲は10mほどだからこの狭い通路では逃げ場がない。

 狭い通路のおかげで、圧縮された高性能炸裂弾は威力を倍増させていた。


 さすがに、大物までは倒せなかったようだが足止め出来たのは大きい。

 全弾撃ちつくすとリロードと念じて、すかさずバトルライフルのHK417を取り出した。


 ライフルのHK417で仕留め損ねた大物を中心に狙い撃ちする。

 大物の中には、あの死神と呼ばれるキーラーマンティスやキラーパンサーの上位種のヘルハウンドまでいた。


 普通に戦えば絶対に勝てないような魔物の集団。

 しかし、レベル40台の魔物達ですら銃器の前ではまるで雑魚のように即死していた。


 俺の銃の腕前も上がっている。

 ちょこまかと動いてはいたが、300mほどの距離でもピンポイントで狙撃してしていた。


 ふふふ、卵が割れないように鍛えた精密射撃の技術がこんなところで役に立つとはな。


 しかし、戦況はそんなのんきな事を考えているようなぬるい状況ではなかった。


 次第に物量に押されて行く。

 次から次に沸いてくる魔物に処理が追いつかない。


 そして、魔物との距離が100を切る。


 やっぱり、駄目だ!

 魔物の突進を止められない。


 恐怖に耐え切れずにクレイモアの起爆スイッチを押す。


 バカーン!


 強烈な炸裂音が鳴り響くと、動いている魔物が瞬間的にいなくなった。

 凄まじい威力である。


 何とか勢いは止めるが、しかし2つ設置したクレイモアの1つをもう使ってしまった。


 休む間もなく第2破が来る。

 ダネルMGLを乱射して勢いを止めてHK417で生き残った大物を仕留める。


 しかし、すぐに第3破が来る。


 もう、グレネードランチャーの弾が無い。


 「ちきしょー!」


 叫ぶと、最後のクレイモアを起爆させて魔物の集団を止める。


 ああ、糞ったれ!

 こんな事なら、もっとクレイモアを設置しておけば良かった。


 戦場にできた一瞬の空白の時間。

 その合間に急いでステータス画面を開くと、グレネードランチャーの弾を交換する。


 「はあ、はあ。ちきしょう! 弾がどんどん無くなっていきやがる」


 どれだけの時間が経った?

 まだなのか?


 「セリアー! 早くしてくれ~」


 グレネードランチャーの弾の交換が終わると、散発的に向かってきていた魔物をHK417で狙撃しながら戦況を確認する。

 すると、魔物達の出現がまばらになっていた。


 あれ? 何か魔物の勢いが収まってきた?

 

 これは、もしかして勝利してしまったか?

 勝ってしまったのか?


 敗北を知りたい……


 勝利を確信して悦に浸る。


 しかし、そんな事はなかった。

 前方からゆっくりと、何か大きな物体が近づいてきた。

 しかも、3体もいる。


 何だ? あれは……


 ロックゴーレム

 レベル55

 HP850

 MP0

 力650

 魔力0

 体力750

 速さ50

 命中50


 巨大な岩の塊が、ドシン、ドシンと重厚な地響きを鳴らして歩いていた。

 ロックゴーレムの横幅は4~5mくらいで、高さが8~10mくらいだろうか? 


 そして、ゴーレムの後ろからはギャーギャーと多数の魔物らしき声が聞こえていた。

 どうやら、3体のゴーレムが邪魔で前に行けないようだった。


 冗談だろ?

 あんな岩の塊、どうするんだよ?


 俺の持ってる最強の火力は、グレネードランチャーのHEDP弾だ。

 こいつで行けるか? 


 すぐに弾を換装する。


 これが効かないと、どうにもならんぞ?

 頭を破壊すれば止まるかな?


 十字路を越えさせてから頭を狙って撃ってみることにする。

 上手く行けば通路を塞ぐことができるからな。


 ゴーレムの頭にHEDP弾を撃ち込むと、ゴーレムの顔が内側にボコリとめり込むように穴が開いた。

 ゴーレムの頭部がハンマーで砕いたようにばらばらになると、膝から崩れるようにして停止すると土下座するような体勢で動かなくなった。


 ははは! 所詮は岩だったな。

 鉄とは違うのだよ! 鉄とは!


 残り2体も同じように行動不能にしてやると、完全に道が塞がった。


 これで終わりか?


 動かなくなったゴーレムに近づくと、向こう側の様子を覗き込もうとゴーレムの腕を駆け登る。

 しかし、魔物も反対側からゴーレムの背をよじ登っていたようだった。


 1mにも満たない距離で、魔物とこんにちはしてしまう。


 「うぎゃあ!」


 ショットガンのベネリM3をガンボックスから取り出すと、出会い頭に魔物を吹っ飛ばす。


 びっくりした。

 骸骨みたいなやつだった。


 急いでゴーレムの腕から飛び降りると、M67破裂手榴弾を取り出してゴーレムの裏側にいる魔物達の群れに投げ入れる。

 バーン! と派手な音がすると、先ほどまでギャーギャーと騒がしかった魔物達が急に静かになった。


 今度はベネリM3を装備して注意深くゴーレムの頂上まで登る。

 反対側の魔物の様子を確認すると、近くにいた魔物達はぐちゃぐちゃに潰れていた。


 しかし、ゴーレムの後方にはまだ大量の魔物達がいるようで、潰れた魔物達を踏みつけながらゴーレムの背中の壁を登ろうと魔物達が続々と集まって来ていた。


 火炎瓶に火を点けると魔物が密集している場所に投げつける。


 後方からからどんどん集まってくるため、魔物達に逃げ場は無かった。

 魔物達は後方から来る魔物達に押されるようにして、次々と火達磨になって行った。


 持っていた火炎瓶をすべて投げつける。


 弾の節約のために、今度は安全なゴーレムの上からボウガンで攻撃する。


 「駄目だ! 強化ボウガンじゃ止まらない」


 このクラスの魔物には強化ボウガンでは完全に火力不足だった。

 レッグスナイプで足を潰してみるも時間稼ぎにすらならない。


 魔物達はどんどん集まって来た。


 手裏剣を投げつけて、投げナイフも使うがそれでも魔物の行進は止まらない。

 魔物の群れは、火達磨になった魔物を踏みつけてゴーレムをよじ登ろうとしていた。

 さながらゾンビ映画のようだ。


 已む無くベネリM3を連射すると、死体の山ができていた。

 急場は何とかなったがすぐにまた集まってきていた。


 このままだと……


 「いい加減にしろよ!」


 恐怖に駆られて大声を張り上げる。


 「たっつん、すごぉい!」


 「へ? セレナ?」


 背後から聞こえた声に驚いて後ろを振り向くと、目をキラキラさせていたセレナがいた。


 なんですと!


 「うおおおお、銃が消える!」


 あれ? 消えない?

 ホワイ? なぜ?


 未だ消えない手に持っているショットガンを見る。


 そうか! セレナがショットガンを兵器と認識できないんだ。


 ふと気づくと、セレナが俺の持っていたベネリM3を食い入るように見ていた。


 「たっつん、それなあにぃ?」


 「これは……そう、魔法だ! いいか? セリアには内緒だぞ?」


 「たっつん、すごぉい!」


 魔法だと説明すると、セレナは目をキラキラさせて大喜びだ。


 子供で良かった。


 どうやら、大部屋の方は片付いたらしいな。

 ならば、こんな場所からはさっさとおさらばだ!


 ベネリM3をガンボックスに仕舞うと代わりにM67破裂手榴弾を出す。


 「こいつはおまけだ! 取っておけ!」


 手榴弾のピンを抜くと、魔物達の群れに放り投げつける。


 「セレナ! 逃げるぞ」


 「わかったあ」


 後方で鳴る炸裂音を尻目に、セレナと一緒に大部屋の方に向かって走る。


 「たっつん、どうしてセリアちゃんに内緒なのぅ?」


 セレナが走りながら聞いてきた。


 「ええと、あれだ。知られると、魔法が弱くなるんだよ。だから、秘密なんだ」


 「わかったあ。じゃあ、セレナとたっつんの秘密だねぇ」


 セレナがニコニコとした笑顔で言っていた。


 セレナにいつもの余裕が見える。

 どうやら、峠は越えたようだ。


 大部屋まで来ると、セリアが近くに沸いた魔物を即座に葬っていた。


 「達也! 無事だったのね」


 セリアが信じられないと言ったような顔をしていた。


 「ああ、なんとかな。それより、早く脱出しよう」


 セリアと合流すると、魔境のダンジョンから飛び出すように脱出する。


 そして、魔境のダンジョンの駐在所に急いで駆け込むと、ギルドから派遣されている守衛にモンスターパニックが発生した事を伝えた。

 後はギルドが処理してくれるだろう。



 「達也、説明して。一体どうやって魔物を食い止めたの?」


 一息ついて落ち着くと、セリアが真剣な顔で詰問してきた。


 困ったぞ、どうするかな?


 「たっつん、すごぉいんだよぉ! ばんばんばんって、魔法を使って魔物を倒したんだよぉ」


 セレナが目をらんらんとさせながら、興奮したようにセリアに伝える。


 「どぅああああ! セレナ! 秘密って言ったじゃないか!」


 「あっ!? 秘密だったぁ!」


 セレナが慌てたように手で自分の口を塞いでいた。


 いやー! お子様セキュリティ!


 「ちょっと、達也? あなた魔法は使えないはずよね? どういう事なのか、説明してもらえるかしら?」


 セリアがいつものポーズで訝しげな視線を向けてきた。


 「あのねぇ、セリアちゃん。それは秘密なのぉ、だから、ふぇ、びぃえー!」


 「ちょっと、セレナ!? ああ、聞いてないわ。私は何も聞いてなかったのよ!」


 セレナが大声を出して泣き出してしまうと、セリアが慌てたようにセレナをあやしていた。


 「え!? ほんとぅ? ぐすん。たっつん! セリアちゃん、聞いてなかったってぇ」


  さっきまで泣いていたセレナが笑顔で近づいて来ると、嬉しそうに小声で耳打ちしてきた。


 「そ、そうか、それは良かった」


 引きつった笑顔でセレナに答えると、セリアと顔を見合す。


 「はあ、しょうがないわね。いいわ、理由は聞かない」


 「え? いいのか?」


 「何か話せない理由があるんでしょ? そして、それは私とセレナにとって不利益になるようなことじゃない。それでいいのかしら?」


 セリアが覗き込むようにして俺の顔を見てきた。


 「ああ」


 セリアの目をしっかり見ると、決意を込めてはっきりと肯定した。


 「なら、私は達也の事を信じるわ」


 信じると答えたセリアの顔は、なんだかとても美しくて眩しかった。

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