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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
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120話 北の蛮族バッカス

 ここは戦場の中央。

 バッカスが戦っている戦場である。


 「早いな。エリスのやつもう倒したのか?」


 バッカスがぼそりと呟く。


 東側の戦場は真っ赤な炎に包まれて、すでに魔物達は統制がとれずにばらばらに動き回っていた。


 「無駄口叩いてないで、こっちもさっさとやるさね」


 「うるせえなあ。タイミングがあるんだよ」


 アルテミスが非難するように催促すると、バッカスがふて腐れたように答えていた。



 開戦直後、雷帝ミストの放った上級魔法が炸裂したことにより魔物達の数はずいぶんと減っていた。

 しかし、ここは主戦場であり魔物の数が他の場所よりも遥かに多かった為、なかなか中級魔族の陣取っている場所まで近づけなかったのである。


 そして、バッカスが言っていたそのタイミングが来る。


 「アルテミス! 頼む」


 「あいよ! はぁああああ」


 アルテミスの弓から風が巻き起こっていた。


 矢に螺旋状の風が幾重にも纏わりつくと、中級魔族へ向けて放たれる。

 疾風走破と呼ばれる風魔法系弓スキルだ。


 一直線に飛んだ矢は射線上にいた魔物達を貫通して、中級魔族までの道を切り開くように飛んで行く。

 中級魔族は慌てたのか迫ってくる矢を転がるようにして回避すると、矢は中級魔族の後方にいた魔物を貫通して遠くへと消えて見えなくなった。


 思惑が外れたかと思いきや、矢が切り開いて出来た道をバッカスとレックスが爆走していた。

 最初から中級魔族までの道を作る事が目的だったのである。


 すぐに中級魔族の前に壁となる魔物が立ち塞がって道を塞ぐが、そこにレックスが特攻して中級魔族までの道を強引に作る。

 そして、出来た道をバッカスが駆け抜けて行く。

 当然ながら、レックスは魔物達から集中攻撃を受けて傷だらけになっていた。


 しかし、バッカスは止まらない。


 振り返る事なくレックスが切り開いた道を駆け抜けると、中級魔族のいる場所まで一直線に走って行った。


 「うおおおお! 爆暴剣ブラストソード!」


 バッカスが雄たけびを上げながら中級魔族を斬りつける。


 戦場に爆光が煌く。


 その大地ごと砕かんばかりの強烈な一撃が決まると、中級魔族の頭が弾け飛び体は爆発四散してバラバラになって消滅した。



 中級魔族が消滅すると、魔物達は統制を失ってばらばらに戦い始める。

 息を吐く暇もなく、バッカスはすぐに周りにいた魔物達に集中攻撃されていた。


 「イグニッション! 邪魔なんだよ!」


 群がっていた魔物達をバッカスが力だけでなぎ倒す。

 魔物達を払うように弾き飛ばすと、魔物は斬られるのではなく力で千切れ飛んでいた。


 魔物をなぎ倒しながら、バッカスは強引に魔物から集中攻撃を受けていたレックスと合流する。


 「レックス! 無事か?」


 「はは、なんとかね」


 レックスが軽口を叩いて答えるが全身切り傷だらけで慢心相違である。


 バッカスはレックスと合流すると協力して魔物の包囲から抜け出そうとする。

 しかし、魔物が次々と群がってきて上手く行かないようだった。


 そこに、アルテミスの放った援護の矢が飛んできた。

 その矢は、まるで魔物の目を射抜くが如く正確無比に魔物達を貫く。

 しかも、アルテミスが放った矢の数は通常の弓兵の放つ矢の優に3倍は超えていた。


 ドス、ドス、ドスと連続してバッカス達の退路にいる魔物のみが倒れていく。


 なんという速射だろう。

 実に5秒に1射という神業だった。


 しばらくすると、傷だらけのバッカスとレックスが魔物達の包囲を突破して前衛部隊の場所まで戻ってきた。


 「何でこんな無茶をするんですか!」


 後方部隊で待機していたはずのソニアが、戻ってきたバッカスに抱きつくと泣きながらヒールの魔法を掛ける。

 そして、その姿を同じ様に傷だらけのレックスはやる瀬無さそうに見ていた。


 「泣くなソニア。これが、北の蛮族バッカス様の戦い方なんだよ。それに、お前がヒールを掛けて傷を癒してくれるから俺達は無茶ができるんだ。ほら、レックスの野郎も怪我してるんだ。そっちを見てやれ」


 バッカスはうるさそうに言うと、少し離れた場所にいるアルテミスの方へ歩いて行った。


 「あ! はい、ごめんなさい。レックス、すぐにヒールを掛けます」


 「うん、ありがとう……ソニア」


 バッカスに注意されたソニアは慌てたようにレックスにヒールを掛けると、レックスは自分にヒールを掛けているソニアを愛おしそうに見ていた。


 「まったくよお。誰が見てもレックスのやつはソニアに惚れてるよな? ソニアのやつ鈍感なんだよな」


 「あんたも大概だけどね」


 レックス達から少し離れた場所で、バッカスとアルテミスがひそひそと小声で話していた。



 「ふう、後は残った魔物を各個撃破して殲滅するだけだな」


 バッカスが嘆息して独り言を呟いていると、後方の戦場から砂煙が上がっていた。


 「なんだ? あそこはヒュッケの戦場か?」


 バッカスの表情が途端に怪訝な顔に変わる。


 そして、伝令兵が転がるように走ってきた。


 「大変です! 勇者ヒュッケ様が敗北しました」


 「なん……だと?」


 伝令兵からの緊急報告にバッカスは言葉を失ったようだった。

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