表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
116/225

115話 勇者エリス

 「まだ生きていらしたのですね、バッカス」


 部屋に入って来て早々、勇者バッカスに対して笑えない冗談を言ったのは御年16歳の妙齢の美少女だった。


 背筋がピンと伸びた所作しょさはまるでモデルのようであり、ロングのストレートの髪が歩くたびに扇情的に揺すれている。

 腰には華やかな装飾を施されたレイピアを装備して、着ている鎧は特注である事を窺わせる細かい細工が所々施されていた。

 細部まで精巧に作られている細工の見事さから、一流の職人の手による作品である事は間違いないだろう。

 そして、剣も鎧も当然のようにエンチャント装備だった。


 「うるせえのが来やがったな」


 「お久しぶりです。炎帝エリス様」


 面倒くさそうに答えるバッカスとは逆に、ソニアは礼儀正しくお辞儀をして答えた。



 ここはマイセンの都市にある、グルニカ王都救援作戦の会議をする部屋である。


 そして、現在は主要なメンバーが集まり作戦会議をしている所だった。


 「まあ、あれだ。今は猫の手を借りたいくらい人手不足なんでな。贅沢は言わんよ」


 「あなたのへっぽこな炎では、魔物を倒すのも大変ですものね。それに、魔物を転がして倒すのは品が無くてかっこ悪いですわ」


 「何だと? 魔物がぶっ飛んだ方がかっこいいだろう? お前の剣は軽いから、ださいんだよ」


 「わたくしの、華麗な炎剣のかっこ良さがわからないのですか?」


 バッカスとエリスが言い争いの喧嘩をするが、これはいつもの事だった。

 そして、そのバッカスの無邪気な姿をソニアがいつものように愛おしそうに見ていた。


 「ヒュッケはどう思いますの?」


 「さあな、俺のバーニングランスが一番かっこいいからな」


 エリスが壁際に寄りかかるようにして傍観していたヒュッケに話しかけると、ヒュッケはそんなのは自分が一番なのだとそっけなく答える。


 「アルテミスよ、私にはわからんのだが、あいつらは一体何を言い争っているのだ?」


 「さあね。炎系の魔法使いは皆あんな感じらしいさね」


 勇者達の会話に首を捻っていたミストの問いに、興味のなさそうなアルテミスが答えた。


 「ははは、エリスは相変わらずだね」


 「レックス様!」


 バッカスとエリスの下らない言い争いに爽やかな笑顔をしたレックスが仲介に入ると、エリスの声色と態度が急に変わっていた。

 エリスはエル帝国の姫であり、愛しいグルニカの王子であるレックス王子を救援するといった名目でこの戦いに参戦しているのだ。


 バッカスが真面目な顔をするとエリスに作戦内容を伝える。


 「まあ、冗談はこのくらいにして……エリス、お前には東側の魔族を何とかして貰いたい」


 「魔族は、全部で何匹くらいですの?」


 「すまん、さすがにそこまではわからん。ただ、中級魔族が最低でも4匹は居るとのことだ」


 「私が1匹、バッカスが1匹、ヒュッケが1匹、これでは計算が合いませんね。それともアルテミスさんが仕留めるのですか? 中級魔族が相手では難しいのでは?」


 「ああ、あと1匹はな……」


 その時に、扉を開けて部屋の中に入ってきた者達がいた。


 「久しぶりね、バッカス」


 「おじちゃん、久しぶりぃ」


 「おお、セリア来てくれたか! セレナちゃん、おじちゃんは止してくれよ。これでもまだ28だぜ?」


 「おじちゃんだよぅ」


 「ははは、セレナちゃんにはかなわねえなあ」


 エリスの時の対応とは対象的にバッカスの態度はすこぶる好意的であった。

 その姿を見ると、ソニアの顔が急に暗くなる。


 「おっと、さっきの話しの続きだがな。あと1匹の魔族はこの2人に倒してもらう」


 「魔族? 来て早々に物騒な話しね。詳しく聞かせて貰えるかしら?」


 バッカスの話を聞くとセリアが真剣な表情になる。


 「中級の魔族が4匹居るらしくてな、中央は俺が倒して、後方はヒュッケ、東はエリス、そして西はお前達、セリア達に倒してもらいたいんだ」


 「どうして私達なの? 他にも上級冒険者がいるでしょう?」


 「それがな、他の上級冒険者の連中は体裁を気にして戻って来ないんだよ。いまさら戻れんとさ。そこで白羽の矢がお前達に立ったというわけだ。魔族は飛ぶからな、セレナちゃんがいれば対処できるだろ? それと、ほれ報酬の特効薬だ。セレナちゃんの分もあるぞ?」


 バッカスが報酬の特効薬2つをセリアの前でひらひらとさせていた。


 「くっ!」


 セリアはそれを見てうめくと、深い溜息をついていた。

 セリアがこの依頼を受けた理由はこの報酬の特効薬だったからだ。


 そして、セリアが伝手を利用して特効薬を探している事をバッカスは知っていたのである。


 「まあ、あんまり気負わなくてもいいぞ。他の冒険者にも声は掛けているからな」


 「そう、わかったわ。それにしても、よく魔大陸にいて特効薬なんて入手できたわね? 帝国からの支給なのかしら?」


 「いや、ちょっと商人に伝手があってな。まあ、そっちの方は使っちまったんだが、帝都にいた上級冒険者がな、戻っては来れないが代わりにと特効薬を大量に送ってきたんだよ」


 「ふ~ん、羨ましい話しね。まあいいわ、特効薬が貰えるのならこの話しを受けましょう」


 セリアは特効薬を受け取ると、バッカスから詳しい話しを聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ