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超えて行く者(異世界召喚プログラム)  作者: タケルさん
第三章 超えて行く者
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113話 グルニカ王国最強の2人

 グルニカ王国は3方向を渓谷に囲まれた天然の要塞である。


 襲ってくる魔物達は、空か正面からしか攻め込めむことはできない。

 そして、まともに攻め込む事のできる正面には強固な城壁が築かれているため守りは完璧だった。


 国内で食料の自給自足も行い、3方向の山からの湧き水のおかげで飲料水にも困らない。

 故に、デッドラインの近くであるにもかかわらず、長年の間持ちこたえてきたのである。


 「矢を射かけろ! 上空から来るぞ! 網を張れ! 今だ! 突け!」


 矢の雨を潜り抜けて空から魔物が襲ってきていた。


 しかし、広げた網に遮られ魔物の動きが止まる。


 老練の騎士が合図を出すと、周りにいた兵士達が網の隙間から魔物を槍で突いていた。


 「槍兵は弓兵を守れ! 隊列を乱すな! 魔物を殲滅せよ!」


 ハンニバルの指揮の元、槍兵と弓兵達が密集陣形で移動する。

 網を上手く盾として使うと、上空を旋回する魔物を次々と射落とし突き殺していた。


 慌しかった戦場が急速に静かになって行く。

 いつものように魔物達だけが数を減らしていった。

 

 「ハンニバル様! 魔物達が引いていきます」


 「よし! 倒した魔物を急いで回収しろ」


 戦闘を終えたハンニバルが部下に魔物の回収を命令していると、伝令兵と思われる男が近づいてきた。

 

 「ハンニバル将軍、陛下がお呼びです。至急玉座の間に来るようにとの事です」


 「わかった。あとは任せる」


 他の町との連絡が途絶え、完全に孤立してより数年。

 グルニカ王国は、未だ近隣の魔物をひきつけ戦い続けていた。


 魔物との防衛戦においては、グルニカの盾と称されるハンニバルがいるため無敵だったからだ。


 しかし、人の心の方は別である。

 閉じ込められていた国民の心は少しづつ疲弊していった。


 今までは、グルニカ王の威厳によりなんとか秩序が保たれていた。

 だが、それもすでに限界で内部より崩壊寸前であった。


 そして、ついにその時が来た。


 「陛下、城下の争いが収まりません」


 玉座の間に兵士が転がり込むようにして報告に来る。


 「もはや、これまでか……鎧を持て! 出陣する」


 「陛下! あきらめてはいけません。必ずやレックス王子が兵を連れて戻ってきます」


 苦渋の顔をしてグルニカ王が立ち上がる。

 ハンニバルがすぐに諌めるも、すでにグルニカ王の顔は疲れきっているようだった。


 「わしも武人として、戦って死にたいのだ。仲間同士で醜く争い合い、座して死を待つのは御免なのだよ。貴公もそうであろう? ハンニバルよ」


 「それは……」


 グルニカ王に問われるとハンニバルは言い淀んでいた。

 グルニカ王の言葉に心を動かされたからだ。


 ハンニバルは、この王の元で魔物達と長年戦い抜いてきていた。

 武人としての最後を、この王の元で迎えたいと常々考えていたのだ。

 そして、口では諌めていたが、もはや奇跡でも起きなければどうにもならない事もわかっていた。

 ならばいっその事、武人として華々しく散るのも良いと考えてしまったのだ。


 その知らせが来たのは、皆が絶望して生きることをあきらめかけたその時だった。


 「陛下、物見より狼煙をご覧下さい! 狼煙が3つ、あれはレックス王子です!」


 「「「うおおおおおおお!」」」


 城内から、割れんばかりの歓声が上がった。

 伝令兵が走ったのか、城下でも争いが収まりすでにお祭り騒ぎが始まっていた。


 「陛下」


 「うむ、死ぬのは止めだ。生きるぞ」


 「はい!」


 グルニカ王の顔には覇気が戻っていた。


 「この人は、こうなると恐ろしい程強いのだ」


 ハンニバルが小声で呟くと、本人も気づかぬ間に笑みを浮かべていた。


 「どうしたハンニバルよ? なぜ笑っている?」


 「陛下も笑っていますよ」


 「ふふふ、さっきまで死ぬと覚悟していたのに、今はさらさらないのだ。それがおかしくてな」


 「私も似た様なものです。生きてレックス王子と再会しましょう」


 グルニカの盾と称される鉄壁のハンニバル。

 獅子心王と呼ばれるグルニカの王バルバトス。

 今まで、この2人がコンビを組んで負けた戦いは一度も無い。


 そして、今回の絶望的な戦いも……どうやら負けそうにはなかった。

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