9話 物語の核心
おそらく、ここに現状を知る術が書かれているだろう。
ごくり、と唾を飲み込みCAUTIONの画面を表示させる。
貴方は異世界へ転移しました。
この世界にいる魔王を倒す事が目的です。
レベルUP時にポイント1を取得できます
但し、銃器使用時に経験値取得はできません
ポイントによる銃器や弾の取得ができます
5レベル毎に各基本兵装が授与されます
開放後にはポイントにより各兵装を取得できます
GUNBOXに兵器を収納できます
RELORDと念じると弾を補充できます(装填時間5秒)
クエストでの兵器の入手は1回限りです
クエストで入手した兵器は以後ポイントで交換できます
銃 兵器による討伐でも可能
仲 パーティメンバーが倒しても可能
滅 誰が倒しても可能
思いっきり説明が書いてあった。
説明書は最初に読まないとだめだよね。
そして、うすうす気づいてたがこれは完全にゲームだよな?
誰かが俺を利用してゲームをやっている?
誰が何のために?
苛立ちと憤慨を抱きつつも、とりあえずガンボックス収納とリロードを試してみる。
これは、頭で考えるだけでいいのかな?
手に持ったベレッタをガンボックスへ収納と心の中で念じる。
すると手から消えた。
ステータス画面の武器の場所にベレッタと表示されている。
続いて、手の中にベレッタを取り出すと念じるとベレッタが出現した。
これは使える。
銃器が増えてきたら戦況に応じて切り替え自由だな。
これは魔法みたいで、ちょっとカッコいいかもしれん。
次にリロードを試してみる。
これは直接ガンボックスから弾を補充できるのだろうか?
弾をマガジンから取り出して、ガンボックスへ収納してから試してみる。
ステータス画面にリロード中が表示される。
そして、5秒後に装填されていた。
ガンボックスの中でもリロードができた。
これも役に立ちそうだ。
ただ、ベレッタなら自分でマガジンの交換をした方が早い。
使うとしたらショットガンとかだな。
ベレッタをガンボックスへ収納しておくべきか迷ったが、結局はお守り代わりに懐のホルダーに仕舞った。
本当は安全装置を掛けなくていいからガンボックスに入れておく方が賢いのだが、胸元に銃があると安心するんだよ。
理屈じゃないんだ。
銃を仕舞ってさらに説明文を読み続けると、看過できないようなルールに目が止まる。
異世界人に兵器を認識された時にはその兵器は消滅する。
兵器を認識した異世界人は、その兵器の記憶と10分前までの記憶が消滅する。
人前だと銃が使えないのか?
いや、使えないことはないが使い捨てになる……のか?
銃器の交換ポイントを考えると、そうそうできないだろうな。
そして、最後に書かれた一文に思わず絶句する。
異世界人に日坂部達也が異世界から来たと認識された時……日坂部達也は消滅する。
「…………」
可能だろうな。
俺は何の前触れもなく強制的に異世界転移させられた。
つまり、俺のことを殺そうと思えばいつでもできるということだ。
モンスターの群れの中にでも転移させればいいのだから。
この状況はかなりやばい。
そして、これからどうするのかを考える。
魔王を倒す事が目的と書いてあったな。
つまり、魔王を倒さないと帰れないんだろう。
逆に言えば、魔王を倒せば帰れるということだ。
踊らされるのは嫌なんだがな。
帰るためには、こいつの思惑通りに魔王とやらを倒すしかないようだ。
やれやれと嘆息する。
そして、そのための手段を模索する。
まず、魔王を倒すには力が必要だ。
とにかくレベル上げだな。
1人では難しいだろうから仲間を探す必要もある。
癇に障るが、ゲームとやらをしてやるのが一番有効な手段だろう。
行動方針を決めると決意を新たにする。
やってやろうじゃないか。
魔王め! 俺を敵に回したことを後悔するのだな。
フフフと格好をつけて毛布代わりのマントをバサリと羽織る。
そして、眠りにつくために瞼を閉じる。
だが、気温はまだ肌寒い。
川辺は止めるべきだったか?
寒いよ、ひもじいよ、お家帰りたい。
魔王を倒す前に、まずは生活費を稼ごうと決意する俺だった。
こうして俺のホームレス生活……
いやいや、冒険者生活2日目は過ぎていったわけだ。
しかし、俺は重要な情報を見逃していた。
その情報は、クエスト欄の一番下に表示されていたわけだが。
デスゲーム開始まで猶予期間88日
のんびりやってる場合じゃなかったんだが、その時の俺には知る由もなかったんだ。
後で気づいた時に、CAUTIONの方に書いとけよ! と怒ったね。
デスゲーム条件未達成の時
日坂部達也は消滅する。




