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一通の手紙。


『梅津さんへ』



 消印も住所もなく、それだけが書かれた封筒が、自宅のポストに入っていた。

 筆跡は見知ったもので、3年前に寿退社したはずの部署の違う同僚。由香が仄かな片思いをした男性を、射止めた人。しかし、何故か男性の顔は思い出せないでいる。

 それが何故今頃かと思ったのだが、何か事情があったのかもしれない。

 裏の記名を見ると想像通りだった。


『白井瑞穂』


 あざとい女と思いきや、話してみると裏表のない可愛らしいチワワみたいで好ましかったのを覚えている。

 中には便箋と数枚の写真が同封されていた。


「前略、梅津由香さま」


 そんな書き出しで始まった手紙の内容は、ようやく結婚出来たこと、出産が重なって二人の子供に恵まれたこと、幸せに暮らしていること、良ければ遊びに来てほしいこと、だった。

 写真を見れば、友人知人に囲まれて幸せそうな瑞穂の姿。少し疑問に思ったのは、その姿や風景がやけに異国情緒溢れていると言うことか。

 男性の顔を見ても、なんとなくこうだったかなと首を傾げる。こんな美形、絶対に忘れるはずないのに、変だ。だがそれよりも。


「ノースリーフ国……って聞いたことないんだけど、騙されてないでしょうね瑞穂!?」


 由香は秘書課に勤めているので、ある程度地理や言語には強い方だと自負している。だが、ノースリーフなど聞いたことがない。

 ない、のだが、どこか頭に引っ掛かった。


「ノースリーフ……リーフ、葉っぱ?」


『ノースリーフ、サウスリーフ、イーストリーフ、ウエストリーフ、まるで四つ葉のクローバーみたいね』


 自分の声で、よぎる記憶。聞いたことがないのに、何故そんな事を言っているのだろう。しかも、声は若かった。


「…………疲れてるんだわ」


 今日も愛想笑いを振り撒き仕事を終えてきた所だ。しかし幻聴がするほど疲れた覚えはないはずだ。

 由香は、写真を見ながら部屋に向かった。鍵を取りだし扉を開け、中に入って閉じる。



 そんな普段と変わらない行動が、一変するとは今の由香には思いもよらなかったのだ。

とにかく、砂を吐くくらい甘い話が書きたくて、つい。

よろしければ、どうぞお付き合いくださいませ。

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