表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピソードⅣ― 「裁判枠と冷凍人間」
8/70

第三十七話 『 冷凍人間 』 2/3

 この状況を打破出来るか!?


 黒幕サイドに拳銃を向けられてどうにもならない状況だというのに、篠原由香里を奪い返そうと強気になる夏男。このままだと本当に命を捨ててしまう結果になってしまうが、夏男が強気でいるのには、理由があった。


 右肩の出血は大した事なくすぐ止まり、弾は貫通しちゃいない。それは、傍に居た六条や篠原でさえも気付かない程度のもの。先程、赤西堅也の部屋前で右肩を撃たれた夏男は、銃声と痛みに驚いてしまったが、多少の出血と肩に痛みが残る程度で済んでいる。


「その拳銃は、小細工でもした偽者なんだろう?」


『ほう、びっくりした?』


「最初はな。だがそうと分かればそんな玩具を向けられたって、俺の行動を制限するのは無理矢理な話だろ。同じ手を連続して使ってきたもんだから、思わず笑ってしまうところだった。お前にしては上出来だ」


『ルーレット、Bでこいつ撃ったの?』


「フェアが良いだろうと〝B棚〟のを使った」


『そっか、まぁ君の判断は間違っていないと思うよ。ただ相手が悪かったね、何だいこの鬱陶しい負けん気』


 容赦なく引き金を引く。


「さぁ、返して貰お……うぁ!」


 パアアアア……ン

 銃声が響く。


 右肩に銃弾が直撃。と同時に大量の血が流れる。その場で倒れ込み、右肩を抑えながら足をバタバタさせている夏男。


「あああぁぁ……」


『オ前さ、人がせっかく優しくしてやってたのに、調子に乗ってんじゃないよ。ゲーム開始前からプレイヤーを傷付ける真似をしたくなかったから、色々と配慮してやってたんだぞ』


 大量の出血を止めようと右肩を抑えるが、流れる勢いは止まらない。慌てて六条が駆け寄るが、夏男に来るなと言われてしまう。部屋を後にした黒幕サイドが最後に言った言葉は『この部屋と六条の部屋の入り口を3分間だけ出入り出来るようにしてやる。ゲーム開始前だからサービスはしてやるが、今後ボクには逆らわない事だね』。


「ドアが開いた……はぁはぁ……おい、何をじでいる、君は早ぐ部屋に行ぐんだ!」


「でも!」


 どうしても夏男の出血っぷりを見なかった事には出来ない六条が、大量のトイレットペーパーを取りにトイレへ駆け込む。4個のトイレットペーパーを持って来てそれを夏男の右肩に巻こうとしている。


「そんな事したって気休めにもならない!――お前はさっさと自室へ戻れ、邪魔だ!」


 恐くなったのか、こちらを向いたまま一歩、また一歩と玄関に向かって歩き始める六条。


「俺の事なら心配するな。こんな所でくたばらないから。だけど、お前が此処に残ればお前が犠牲になる。頼む、早く行ってくれ」


 涙を流しながら頷く六条。残り1分30秒、急いで玄関にある靴を履いて自室へ引き返す。


 カチャッ

 六条が夏男の部屋を後にした直後に聞こえる鍵が閉まる音。息が上がっている夏男の表情はとても苦しそう。全身の力を込めて立ち上がり、辺りを見回して出血を抑える何か右肩に巻ける物を探していた。


 代用したのはフルーツの入ったカゴ。カゴの下敷きに使っていた白い布を取り、肩に巻きつける。次に洗面所でコップ一杯分の水道水を一気に飲み干す。その場に座って先程篠原から受け取った紙を広げて見る。紙に書かれた内容は以下の通り。


 私は、過去にドン釈の計画する人体実験に参加しました。

 実験の名は〝不老不死への科学・人体冷凍保存計画(クライオニクス)

 そして、私は6年前に人体実験の被験者に自ら立候補をしました。

 結果失敗に終わり、私の命は6年もの間、冷凍して繋いでいたのです。

 ですが、もう長くはありません。

 毎日摂取していた体温を保つ薬も、此処では没収されたようです。

 これを読んだ方がいたら、どうかこれ以上の失敗を繰り返さぬよう……

 黒幕ドン釈を止めて下さい。

 お願いします。


 被験者名969―8E61 篠原由香里より


 この内容を読み終えた夏男はさっそく解読を始める。


「そんな、こんな事が実際に行われていたと言うのか」

 人体を冷凍化させて一定期間保存する事により、命を繋ぐ先端技術を駆使した科学班らで研究をしていたクライオニクス。実験期間は6年。しかしクライオニクスは失敗に終わり、薬を摂取して生きていた篠原さんを何故かこのゲームに参加させている……普通に考えればおかしな話だ。黒幕の目的は何だ。


「……969?」

 被験者の名は969―8E61か。何か暗号のようなものにも見えるが、解読方法がある筈だ。言い方か、読み方か、それとも……逆さ読み?


「16E8―969」

 イロイヤクロク。何だこれ。


 紙自体を逆さにしてみる。


「1938―696」

 イクサヤロクロ。ダレカの名前が隠されているみたいだな。


「待でっいでで……」


 尋常じゃない痛みが肩から襲ってくる。


「此処じゃ……駄目だ」


 ベッドの前まで歩いた所で倒れてしまう。上手い事ベッドに横になれた夏男の意識が朦朧としてくる。今にも眠りそうな様子。いや、眠ってしまう。既に血だらけになってしまった無残なベッドで睡眠をとる夏男が目を覚ました時、ゲームが始まる。彼はこのままゲーム開始時刻ギリギリまで目覚める事はなかった……


 ゲーム開始時間まで残り10時間16分!


 第三十七話〝3/3〟はクライオニクスの実験内容に移ります。ある程度物語が進んだ後に投稿する予定でいます。よって次回は第三十八話のお話を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ