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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピローグ― 脱出(本章)
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第零話 『 首領狩りゲーム 』


 フレームデッドゲームが始まる前夜まで遡る。


 これから行われる実験ゲームの舞台となる桜ヶ丘学園の校庭に大勢の人が集められている。


 その中には殺人を専門とする釈快晴率いる博打組や、政府と直接繋がり、人体実験を行っている機関のクライオニクス。この実験を影で支えるアメダマ組織の一部の人達や、実験に必要な費用を支えるブローカーの面々。その全ての総監督として結成されたドン釈直属の組織〝REDEレデ〟の幹部達、金を流すブローカーサイドの資金を調達している視聴者達など、黒幕サイドの面々が集まっている。


 その他にも小さくまとまる幾つかの組織が確認出来るが、本編では無視して問題ない。


 大勢の人が集まる集会の中心には、ピエロの仮面を顔に付けている数人のボディーガードに囲まれた金色のマイクを持つ人物があぐらを組んで座っている。


 どこからどう見てもこの集会を取り仕切る人物のようだが、この面子の中での適任者はドン釈しか思いつかない。キチガイのトップは超キチガイクソ野郎なのだろうか、息を荒らしながら顔面に被るのは大量のゴミ袋。コンビニの袋を顔面に何枚も重ねている為、その素顔は確認出来ない。


 口元をプカプカさせ、呼吸の合間にできるゴミ袋と口元の間の空間を使って一生懸命呼吸をしている。ドン釈と断定するにはまだ早いので、ここは金色マイクと呼んでおく。


 だいたいの面子が揃った事を確認した金色マイクは、辺りを見渡しながらゆっくり立ち上がる。金色のマイクをゆっくり自分の口元へ持っていき、何かを語りだそうとする。


 しかしどうした事か、一言も発しないでぼーっと突っ立っている金色マイク。沈黙の時が静かに流れる。次の瞬間だ。


 手に持つマイクを地面に思い切り叩き付け、背筋を伸ばして両手を挙げ、連中に何故か手の平を見せ付ける。


 黒幕サイドにとっては恒例の〝何で持ってくるのか分からない金製マイクを投げ捨てるパフォーマンス〟からの〝声バレしない為に勉強を強制させられた手話による講話〟が始まった。


 集まる人々は瞬きをする事もなく見開き、懸命に金色マイクの手話を見聞く。


 手話講話は5分程で終わり、集会に参加した人々は終わってから全ての内容をメモを取る。


 ※日時に関わらず、被験者の1人でも最終裁判の申し出があった場合は、直ちにお答えするように

 ※最終裁判に使われるゾメの始動までに必要な24時間。その間、被験者に自由時間を与えるように

 ※枠ミッションの効果は今後も受け継がれ、自由時間が終わり次第に新たなルール提供を行う流れ

 ※最終裁判を一言で言えば〝ドン釈とのガチ喧嘩〟と言えるので、水を差すような邪魔立ては無用

 ※植物枠を含んだ生存人数の正確な数字を公表する必要はない。後日ドン釈の独断で発表とする

 ※最終裁判開始時に、反逆者の確保が済んでいない場合も反逆者に対する処罰に変更はない

 ※ブローカーの諸君は、人々の死に様を楽しむついでに不具合や不正の監視を徹底すること


 事前に渡されていた最終裁判の資料を見直す一同。


 最終裁判『首領狩りゲーム』

 ルールは簡単。決められたエリア内にて、プレイヤーの手で裁きを受けるべき首領ドンシャクを殺せばクリア。参加人数はフレームデッドゲームの生き残り数全員となる。


 例えば30人のプレイヤーの中から、7人死亡した時点で最終裁判をかけたとする。そうなれば、参加者は23人となり首領狩りゲームへ強制参加される。プレイヤーのみんなは、自分を除いた22人の中に潜むドン釈を仕留める事だけ考えろ。ただし、黒幕サイドは首領がダレなのか直接的には明かさない。


 最終裁判をかけたとはいえ、ドン釈がダレなのか分からない場合もあるだろう。もしくは、最終裁判をかけた人物が真っ先に殺されてしまった場合など。しかし、心配には及ばない。プレイヤーとドン釈とのフェアな戦いを行って貰う為にエリア各地にドン釈について書かれた重要ヒントを備えてある。


 制限時間は72時間。プレイヤーには3日間が与えられる。制限時間が過ぎてもドン釈を倒せなかった場合はドン釈の勝利が決定し、プレイヤーの全員が処刑される。各エリアや首領の重要ヒント集、殺人を行う際に必要な武器などの情報は当日に公開。


 ゲームの最中には数々のミッションがそれぞれのプレイヤーに与えられる。連絡手段は既に渡してあるペル電子手帳を使用。勿論プレイヤ-同士の通信も許可。


 参加プレイヤーとは別に〝ゾメディ〟と呼ばれる殺人兵器が多数配置され、プレイヤーの命を狙って巡回している。ゲーム開始時はゾメディ5体の開放が決定されている。その後のミッション経過によってゾメディの増減が何度か行われる。


 ゲーム開始時はそれぞれランダムに決められた各エリアに散らばって貰う。ゲームが始まり次第に他のプレイヤーと接触したり、協力するのは自由。ただし注意が必要だ。信頼するプレイヤーが裏切るかもしれない。もっと言えば、そいつがドン釈なのかもしれない。他のプレイヤーと協力するには、それ相応のリスクがあるのだと心得よ。


 先程、ドン釈を暴く為に必要なヒントが各エリアに散らばっていると話したが、それでもドン釈を断定する手段としては物足りないと考えているので、ドン釈には特殊なミッションが随時与えられる仕組みになっている。


 その特殊ミッションによって、危険な立ち振る舞いをしてプレイヤー達に忍び寄る目立った行動を繰り返す人物を見極め、ヒントを頼りに白黒ハッキリつけるのも一つの手だ。


 ☆ゲームの簡単な流れ

 各プレイヤーに戦闘バッグが与えられる

 ↓

 プレイヤーが各エリアに配置される

 ↓

 首領狩りゲームスタート

 ↓

 殺人兵器ゾメディ5体がランダムに配置される

 ↓

 各プレイヤーにミッションが与えられる

 ↓

 ミッションの経過によってゾメディの増減

 ↓

 飯屋・武器屋・アイテム屋・占い屋・ペット屋オープン

 ↓

 ドン釈を殺害

 ↓

 ゲームクリアorゲームオーバー


 大勢の人達が、事前に渡されていた最終裁判の資料を見直しているうちに、金色マイクは立ち去って行った。それに気付いて一同が深々とお辞儀をする。


 桜ヶ丘学園に入った金色マイクは、自分のマイルーム予定になっている部屋に入室。室内には青い炎を灯したロウソクが1本ずつ立てられ、テーブル下に収納された黄金の椅子が目立って見える。


 事前に用意してあった1枚の手紙をポケットから取り出し、机の上に置く。ゴミ袋越しから不気味に微笑む金色マイク。誤字がないか手紙の内容を見直してみる。


 『鬼ごっこが楽しみです。明日にでも始めたいです。だからいっぱい人を殺してみんなを怖がらせて下さい。みんなはきっと、恐怖にやられた勢いで最終裁判に頼るしかないと思います。だから早く沢山の死体を発見して下さい。植物枠のみんなも協力して下さい。お願いします。かっこ可愛い王様より』


 誤字がない事を確認し、机の二番目の引き出しから2つの物を取り出す。拇指の先に朱肉をつけて指紋を押捺する拇印と、恐らく随分前から亡くなっている人の切断された右手。


 その右手の拇指に朱肉をつけて手紙の右下に指紋を押捺する。一回頷いてから周りを確認して部屋を後にする。


 ゲーム開始前日。全てのルールと設備が揃い、意識を失っているプレイヤー達のマイルーム収納が行われた。監視カメラの不具合も問題なく、黒幕サイドの配置も完璧に決められる。


 こうして始まったフレームデッドゲーム。10日目にして早くも最終裁判をかけた舞園創。よってプレイヤー全員の首領狩りゲームの強制参加が決定し、反撃する間もなくふざけた自由時間が設けられた。


 キッチンに集まっている数人のプレイヤー。見当たらないプレイヤーも複数人いる。静かに流れる時間の中で聞こえてくるのは時計の針が時を刻むチクタク音。


 次の被験者が孤独を紛わす為にキッチンへ入ってくる。頭を抱えていた夏男がドアの開く入り口へ目をやる。女の子が入って来た。


「危なかった。もうすぐで死ぬところだったぜ畜生」


 その女の顔を確認するや否や血相を変えて立ち上がる夏男。


「お前、何だ!」


「ごめん。お呼ばれされていないのは分かってる。ウチをぶち殺したいのならお好きにどうぞ。こっちはもう独りぼっちなのが嫌なだけだから」


 キッチンに現れたのは、ゲームが始まる前からナイフを振り回して危険人物とされる〝松本蕎麦子〟だ。いきなり暴れ回ってナイフを向けてきたかと思えば、プレイヤーのダレにも接触する事なく静かにマイルームに篭っていたこの女。


 どうやら自殺は未遂に終わったみたいだ。本物の死というものを体験したせいか、今の彼女は恐らく開き直っているのだろう。いっそ殺されても良いから此処にいさせてくれと頼んできた。


「だったら持ち物を調べさせろ。それと、今部屋で休んでる由香里さんに謝れ。話はそれからだ。俺も同行する」


「うん分かった。とりあえず衣類を脱ぎ捨てて裸になれば良い?」


「みんな下がっていてくれ。俺が調べる」


 ここにきて初めて動きを見せる松本。しかし、第一印象が既に危険人物であるという事実の壁は大きい。信用してくれと言う方が無理がある。でも、それは松本自身が一番よく分かっている事だ。だから殺されるかもしれない覚悟で此処へ来たのだろう。


 首にはロープで締め付けられた赤みが目立って確認出来る。手首には何度も自害しようとナイフで切り裂いたリストカットの跡が幾つも確認出来た。


「ナイフを持ってきていないのか。部屋に置いてきたのか?」


「うん。必要なら持って行って。私はもう逃げも隠れもしないつもり」


「何があったか知らないけど、こっちも色々と散々な目に遭ってな。簡単にあんたを信用する訳にはいかないんだ。何か両手を縛れる物があれば良いんだけど……」


 松本蕎麦子。こんな絶望的な状況なのにも関わらず、今までにない前向きな覚醒をしてみせた。しかし、そんなに無防備ではこの先始まる狩りゲームでやっていけるのだろうかと考えさせられてしまう。


 殺人兵器ゾメディの戦力次第ではプレイヤー全滅もあり得るかもしれない。ネガティブな思考回路がプレイヤーを追い込んでいくこの自由時間。時は刻々と進み、新たな殺人ゲームへとプレイヤーを誘う。


 首領狩りゲーム開始まで残り23時間……



 コロシタノダレ脱出編、ここに完結。

 最終作〝コロシタノダレ独裁編〟は近日公開!


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