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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピソードⅦ― 「救世主と首領崩し」
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第七十話 『 首領崩しに向けて 』 1/3


 ゲーム開始7日目・午前1時04分


 抹殺計画にて。釈の部下であるルーレットが未来抹殺計画を失敗していた事態を知った釈は、釈自らが器に選んだ建て前で未来に直接接触する。


 何者かによって一命を取り留めた未来自身に問う。

 未来の首を絞めている釈は、計画を実行した際の殺害現場を目撃した追跡者を暴く必要があり、その人物を消す必要があると話す。


 なかなか口を割らない未来に対し、話さないのなら殺すまでだと言っているように最後の抵抗も出来ない程に首を強く握り絞める矢先の事。


 釈の背後から拳銃を向けて「未来の首を離せ」と言って割り込んできた巨体の男。熊田威之助だ。


 釈に拳銃を向けている熊田の目に輝きという輝きはなく、冷酷な目つきに低い声で、事態をひっくり返した逆脅しが展開されていく。その間熊田に一切の隙はない。


 しかしどうした事か。未来の首を鷲掴みにしている釈は、熊田の脅しに全く反応しない。それどころかお前の言う事は聞かないと言わんばかりの握力を込めて更に未来を苦しめる。


 首から宙に持ち上げられている未来の両足が、締め付けられている苦しさを物語るような左右にバタバタと不自然な動きをしている。


 熊田の「死にたくなければその手を離せ」の言葉に返事せずに無視した釈の表情は満面な笑顔。


 余裕が感じられる釈に対して熊田は、釈の目に余る行動に対して険しい表情を見せてから拳銃を釈の頭部に向ける。


 次の瞬間。まるで用意されていたかのようにして、熊田の背後から釈とは別の何者かによる発砲の音が響いてきた。


 やがて音は物理操作へと変化し、熊田の右手に持つ拳銃にスナイパーが放った銃弾がヒット。不自然にも熊田の頭上に拳銃が吹き飛んだ。


 熊田の背後には釈が周到に用意させたスナイパーが潜んでいた。この一瞬の隙を見計らって、未来の身体を床に投げ付けた釈が拳銃を失った熊田に急接近する。


 その間1秒間。熊田の命を奪いに走り出した釈が、あっという間に手を伸ばして届く距離まで接近。


 釈がすかさずポケットから金色のダガーナイフを取り出す。いや。

 取り出そうとした。取り出すには至らず、熊田のスピード感ある攻撃によって気付けば釈の身体が後ろに吹き飛んでいた。


 釈自身この一瞬で何があったのか把握出来ないでいる。ただ吹き飛ばされた先にある壁に衝突して倒れている自分がいた。


 吹き飛んだ距離だけ離れた場所から熊田が静かに口を開く。


「状況はどうであれ、未来の首を絞めていたその手を離した。そんなお前の命を此処で奪うか否か、こちらも検討する余地を与えてやろう。だがな……」


 頭上に吹き飛んだ拳銃を正確な位置で見事にキャッチ。まるで着地点が分かっていたように再度拳銃を手にした熊田。そしてスナイパーが潜んでいると思われる背後を振り返る。


「部外者については例外だ」


 〝パアアアアアアアアアン〟


 熊田が背後に潜むスナイパーに向けて1発銃撃を放つ。その銃弾は真っ直ぐスナイパーの心臓を射抜いた。


 一切容赦をしない冷酷な発砲を見せ付けた熊田。無表情のままスナイパーの安否を確認せず、改めて釈が倒れる方向へ振り返る。


 ショットガンを握り締めて倒れたスナイパーの男。胸から血を流して倒れたスナイパーの正体は博打組幹部の監視者〝ルーレット〟だった。


「釈快晴。面倒は避けたい。だからお前を脅かすつもりで話をさせて貰う。俺は、お前ら博打組と横並びの某組織を約100人殺害している。それとは別に、恩人と呼ぶにふさわしい仲間に命を助けられた過去がある〝敗北を知る殺人者〟だ」


「敗北を知る殺人者……突然どうした。何が言いたい」


「罪を犯した敗北者に残されるものは何もない。言い方を変えれば、敗北した分野に対して、正義だの悪だの正しいだの間違っているだの敗北者が考える余地もなければ〝選択する自由〟さえも奪われてしまう」


「回りくどい言い方だな。俺を脅かすつもりで手の内を明かす気でいるならさっさと結論を言え」


「俺は、どんな状況が自分の身に降り掛かろうが、自分の胸の内に秘める正義や悪の思想に揺さぶられはしない。決して自分の意思では動かない」


「お前の意思でルーレットを瞬殺した訳ではないとでも言いたいのか?」


「お前が妙な行動を起こせば、上の指示で遠慮なく殺害する」


 冷たい瞳から冷酷さが滲み出ている熊田。一回ため息をついてから追い込みの一言を続ける。


「〝俺の行いには殺人を含めて一切の自主制御が存在しない〟死にたくなければ大人しくしていろ」


 熊田の話を聞いた釈の眉間にシワが寄る。少しの間沈黙が続いてから釈が微笑みだす。


「お前だったのか。いや、少し考えれば分かる事だった。何せ他の候補が挙がらねぇンフフフ」


「ん?」


「乱者と呼ばれる中国マフィア〝くまぐるみがチュリぞうの父親をこの場所によこした〟という情報は掴んでいる。まさかお前がくまぐるみ要員のスパイだったとはなンフフ」


「…………」


「左釈と呼ばれる男。お前はこの名を聞いた事がある筈だ。奴は元々ドン釈の配下、いやドン釈の右腕と呼ばれる俺と唯一競り合った〝ドン釈の左腕と評価される程の権力〟を握る重要人物だった。やがて俺は右釈と呼ばれ、奴は左釈と呼ばれる通り名が裏世界に出回る」


「察しが良い。俺は左釈の指示で動いている」


「だったら利害は一致する筈だンフフ。奴は裏の世界を取り仕切るドン釈、つまり〝首領ドン〟を豪華な椅子から蹴落とす計画で動いている。事実、奴は3年前にこの俺を裏切り首領釈をも裏切って組織を抜けた」


「我々とお前の利害が一致するか。言っている意味が分からない。それならお前の目的は一体何だ」


 熊田の問いに釈の表情から笑顔が消える。次におでこから太い血管が2本浮き出てくる。


 「俺の目的」と質問に答えようとした釈が監視カメラをチラ見。放送を通じて監視を気にしていると察知した熊田が1発銃弾を放って監視カメラを破壊。


 熊田にジェスチャーで立ち上がって良いか問う釈に対し、一回頷いて許可した熊田。


「俺には家族がいた。父と母に俺と妹の4人暮らしで特別変わった点のない、ごくごく普通の家族だった。ある時をきっかけに俺たち家族は、特定の組織から命を狙われる立場に立たされる。結論から話すと俺の父親は代々受け継がれてきた〝釈ファミリー〟の首領に選ばれた人物として、俺たち家族全員の人生を巻き込んだ」


 右手を思い切り握り締めて強い怒りをあらわにする。次に釈の過去が窺い知れる衝撃的な事実が告げられる。


「3年前。ある人物の手によって殺害された父親は、今のドン釈と比べても全てが根本的に異なるが、事実上では〝三代目首領釈〟にあたる大悪党なんだ」


 2/3へつづく→



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