表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピソードⅦ― 「救世主と首領崩し」
59/70

第六十六話 『 最も残虐な手段 』


 反逆者3名の逃走劇が始まる


 黒幕サイドの独断と偏見によって、該当する以下の3名には反逆の意思判定が下される。黒幕サイドに逆らった罰を、それぞれがそれぞれの形で償う必要があり、プレイヤーナンバー4人目の路瓶亮介と、22人目の電田龍治、23人目の六条冬姫の3名を生きたまま捕獲すると決定される。


 エキストラ枠にはそれぞれの持ち場が存在し、今回はモレクの間・レッドルームの担当エキストラ枠該当者合計96名のピエロ仮面部隊が投入される事になる。


 エキストラ枠について少し振り返る。前作の試験編から今回の殺人ゲームに至るお話の進行途中に現れたサブキャラクター的人物の中には、しっかりと語られてはいないエキストラ枠という枠ミッション所持者が多数存在する。


 エキストラ枠に該当する登場人物を何人か例に挙げると元エキストラ枠から実験プレイヤー1人目に選ばれた舞園創や、彼を救った勇敢な男ダディ。博打組の幹部に横並びの紹介でスロット、ダイス、ルーレット、トランプ。

 その他にもアメダマ傍観者よりレベル王国の王や、魔術街アセリコブタからゲームの行方を追うでこぼこハッカーのミニ&ビッグに続き、人体冷凍保存計画に参加する科学者達4名やバサラスタイルの剣士である青い目をしたサムライ男など。


 その他にも数々の人物がエキストラ枠に該当する。

 ・小楽しょうがく華雄かおす

 ・早乙女さおとめひかる

 ・早乙女さおとめ一號いちご

 ・舞園まいぞの恭子きょうこ

 ・ナツ母(本名不明)

 ・戦場むくろ宅近所の椎名家老夫婦

 ・篠原姉妹の父親(行方不明)

 ・篠原しのはら優香ゆうか

 ・黒いフードの男(第十五話登場)

 ・小楽しょうがくりん


 このように該当するエキストラ枠の存在理由は大きく分けて2つある。1つは試験の合格者である実験プレイヤー30人を決定する為に必要とされる判断材料の資源と派遣材理由。1つは実験が始まる前に合格したプレイヤーが何かの不都合で実験に参加出来ない場合の控え。例えるなら、1人目のプレイヤーに選ばれた筈の早乙女光が実験開始前に行方をくらまして、急遽代わりとなる元エキストラ枠の舞園創が1人目に選ばれる等。


 横浜市全体を手に入れたドン釈に続き、アメダマの連中はこの土地に住む人々の人権や守られるべき法律、その上で成り立つ個々の自由さえも奪い続け、その都度記憶を操作しては自身の手中に納め、真実を捻じ曲げるかのような悪質な手段を繰り返しやりたい放題やっている。


 規模の大きさがピンとこないのは少々否めないが、少なくともこの土地、横浜市の現状は一個人のドン釈が所有する上で暮らす人々の自由と平和と人権が存在するというもの。


 簡単に言ってしまえば横浜市で暮らす人々や、適当に広がる景色、建物から生産ものと何か何までドン釈のもの前提である上で全てを決定とされる支配の力こそが、横浜市内で最も守られるべき法律になる。


 つまり、エキストラ枠とは実験プレイヤーとドン釈を除く横浜市に住む、又は住んでいた事がある全ての人間に当てはまる枠といえる。


 悪夢として絶え間なく広がり、ドン釈を中心に群がる横浜市エキストラ枠の人々を救う手はただ1つ。実験の代表者、もしくは試験の合格者として、実験ゲームに強制参加される事になったプレイヤー達がドン釈に勝利する事。すなわちゲームの脱出に成功する事。そして、最も効率的かつ直接的に脱出成功とされるドン釈に勝利する為の最終手段として〝ドン釈の正体を暴く事〟が挙げられ、その目的は我々と一致する。


 一方その頃

――――――――――――――――――――――――

 エスケープルート情報エリア【特等席】


 特等席ルーム天井を爆破したムチカク3名の奇襲に加え、今は亡きレベル王国の元軍隊長である山本カルロスとの激闘によって特等席室内が滅茶苦茶に破壊されている状態。


 室内の窓は見事に全て割れていて、床には椅子が焼失した跡や弾丸の痕が目立つ。室内に設置された監視モニターは大半が無残に破壊されていて、中には白い煙が出ている物もある。


 そんな特等席全体を、部屋の入り口から唇を噛み締めながら見つめている釈快晴。いつもの笑みがない彼の表情を見るに、この事態に対してたまらない怒りを抑えているように思える。


 釈の右手には、彼の部下である実験監視者ルーレットと繋がっている通信機が見える。しばらく特等席を見つめていた釈がゆっくり通信機に口を近づける。


「状況を話せ」


「はい。やはり旦那の読み通り、虎の覆面男の正体はムチカクに新入りした路瓶亮介で間違いありません。たった今こちら監視室よりモニターB4本画面にて彼の素顔が確認出来ました」


「あの小僧か。思ったより活きが良いな。それで、今のアナウンスは何だ?」


「はい。本来決行されるべき手筈のGM処刑劇に予想外の邪魔が入り、結論から申し上げますと完全に処刑を阻止されました。現在GMは、先程アナウンスに挙げられた路瓶亮介と電田龍治の手に渡った模様。一刻も早く事態を収拾すべく担当エリアに該当する計96名のエキストラ枠を、反逆者捕獲任務に全面取り掛かる状況であります。申し訳ございません。私の不注意でとんだ失態を犯してしまいました」


「GMはまだ生きているんだな。バツシマスも決行されていないと」


「申し訳ございません」


「気にするな。お前の失態も最終的には上司である俺のミスだ。俺の見誤りが事を荒立てたに過ぎない。大切なのは問題が起きた場合の的確な対応方法にある。俺らが身を置くこの闇は、首値の張った人間が判断を見誤ったら直ぐに蹴落とされる末路を辿る」


「次のミスは許されない、という事ですね。承知しました」


「博打組幹部の中で言えば、他のダレよりもお前に置ける信頼は厚い。頼んだぞ」


 ルーレットに頼んだと言い残して通信機を切った直後の出来事だった。破壊されたモニターの中で唯一起動されているモニターに映し出されているのはルーレットが殺した筈の男。


 その男とは、釈快晴の合図でルーレットが遠距離射撃で息の根を止めた手筈になっている苗字を明かさない未来だ。射撃によって多量出血したお腹を押さえて、同じく多量出血した右足を引き摺りながらエスケープルームを抜けようとしている。


 未来の生存をモニター越しで確認した釈は、右手に持っている通信機を思い切り握り潰して破壊する。

 未来が今も生きて逃げようとしているこの事態は釈にとって、部下であるルーレットの2つ目の失態を見つけたという意味に繋がる。


 最も信頼するルーレットさえ、こうも連続してミスが発覚してしまえば部下として傍に置く利用価値すらないと判断せざるを得ない。

 通信機を繋ぎ直して本人に確認する気も起きず、思わず通信機本体を握力で破壊した。


 部下の数々の失態によって大きく計算を狂わされた釈の表情が更に険しくなっていく。こめかみから太い血管が浮き出、両手からは怒りに満ちた力が込上げてくる。


 次の瞬間。先程壊したルーレットに繋がる通信機とは別の通信機をポケットから取り出してダレかに繋いだ。


「俺だ。今から言う事をそのままアメダマの連中に伝えろ」


 通話して数秒でこめかみから浮き出る血管が引いていき、どことなく落ち着きを取り戻していつもの笑みがこぼれ出す。


「事態が悪化した。これから至急〝ゾメ〟を動かし本体をターゲットに連続殺人を行う。その間、お前らの力で出来る限り首領ドンの監視を抑えてみせろ。対象プレイヤーとエキストラは全部で5名。反逆者の4番と22番と23番。続いて博打組幹部のルーレット。そして……」


 多量出血しながらも何とか生きようとエスケープルートの廊下をゆっくり歩き進んでいる未来が映るモニターを、真っ赤なサングラスをかけた釈がじっと見つめて微笑む。


 何かを企んでいるのは明らか、舌を出して自身の唇を一舐め。


「死に損ないの25番。このプレイヤーは俺が直接最も残虐な手段を用いてぶち殺す。手足をもぎ取るか、いいや火炙りの刑に処すか、いいやBDNFを取り除くとどうなるのか、いいやどれも俺の知ってる最も残虐な手段には程遠い」


 通信機に口が直接ぶつかる程に顔を近づける。


「特等席という隠れ家を失った俺に居場所などない。25番の未来は、どういう訳か他のプレイヤーの手を借りて出血しながらも生き延びているようだ。それは同時に、俺が立てた三者抹殺計画を間近で目撃したプレイヤーが最低でも1人は存在する事になる。目撃者が他の連中と合流した際には、真実を聞かされたプレイヤー共が俺に対して怒り狂うだろう。そうなれば俺がプレイヤー達によって袋叩きの挽肉ミンチにされちまうかもしれねぇ。考えただけでも恐ろしい。お決まりの手段が今回の失態でパターン化されてしまうんだ」


 歯茎がはっきり見える程の満面な笑みを浮かべて、彼の知る最も残虐な手段を説明する。


「だから俺の変わりに25番を挽肉ミンチの袋叩きに遭わせてやろうかと考えている。その為には25番の身体が必要となり、最も手っ取り早く身体を交換するのに必要な材料は〝本人の脳〟になる」


 彼の知る最も残虐な手段とは……


「モレクの裁き終了次第に俺の脳と25番の脳を取り入れ替える〝中枢神経系移植実験〟を行い、俺自身の存在を利用して25番を心身共に完全消滅させてやるンフフフフッ!」


 ブチ切れた釈快晴が別の角度から動き出す!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ