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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピソードⅦ― 「救世主と首領崩し」
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第六十二話 『 喉縫いの左釈 』


 人知れぬ天罰を受けてきた者


 此処は日本の南海に位置する国〝バサラスタイル〟の将軍居城内。


 その最上間にてバサラスタイル大将軍の〝爾来也じらいや義信よしのぶ〟の姿と、他国から大将に〝あるお願い〟を直談判しにやってきた〝2人の男〟の姿がある。


 居城の外では大勢の軍隊が一列に並んで大将軍の決断を待つ。バサラスタイルといえばデッドゲームのプレイヤー〝爾来也伊吹〟の生まれ故郷。この居城周辺を見る限りでは軍隊の緊迫した空気が流れ、国の一大事の様子。一体この国で何が行われようとしているのだ。


 大将軍義信の背後で正座して居るのは青い目をしたサムライ男。彼は本編にて一度だけオープニングベットシーンで登場している。アメダマの一員として3900万もの大金を爾来也伊吹に賭けているが、彼女との関係やアメダマとサムライ男との関係は不明。


 何か両者で取引でもしていたのか、バサラの大将軍義信が客人2人に「目障りだ、即刻帰れ」と罵声を浴びせる。


「いつまで足を休めているのら。即刻帰れ無礼者ら」


 義信と何らかの取引をしにやって来た2人の男が帰る様子はない。義信から見て左側に座っているのは、酷く身体を震わせている顔色の悪い金髪の〝ガリガリ男〟


 義信から見て右側で正座しているのはプレイヤーの熊田と同じ位の大きな体つきをした〝長髭の大男〟この男は過去に舞園創の夢の中に現れた〝謎の男〟と同一人物。


 長髭の大男が義信の言葉を無視して話を続ける。


「将軍。あなたが我々の言葉に耳を貸さない限りはこちらも引き下がる訳にはいかないのだ。悪い事は言わん。バサラは我々に従うべきだ」


「そんな悠長な事を言っている場合ではないのら。今直ぐにでも連中の全てを討ち取る他、暴走するこの時代を止められなら。〝伊吹姫〟がお亡くなりになられた今、我々とて軍を制圧する術はないのら」


「戦争でも始めるつもりか。ならん!」


「〝被験者13番〟にベットしていた人物は隣海の協定国外から立ち上げた死国王家の者ら。故に連中は既に網を張って待ち構えた事が窺い知れる。王国の思惑が絡んだ明白な理由が分かっている以上は我々の手で連中を滅ぼす他に残された道はないのら」


「将軍。あなたは、あなた個人の感情にいつまでも振り回され続ける兵士達の事をお考えになられたか。当然彼らにも家族がいる。それと勘違いして貰っては困る。これは戦争でも何でもないあなたのお考えは間違っている」


「自惚れるな余所者、バサラの問題はバサラが解決する事だ。何処の馬の骨かも分からぬ髭面にとやかく言われる筋合いはないのら。被験者が右釈ウシャクに状況操作をされていたとは言え、米山はあの時あの瞬間に自らの意思で姫を殺めたのら。バサラの最も守るべき姫君が連中に奪われ、ぶつけどころのない憎しみに満ちた民の暴走は簡単に止められるものではないのら。下がれ、目障りだ!」


 長髭の大男とバサラの将軍義信との話し合い、両者まるで噛み合わずに同じ内容をループして言い合っているところへ後ろから〝3人目の男〟が歩いて来る。


「舞園。その辺にしておくんだ」


「んん?」


 長髭の大男の名は〝舞園まいぞの敏弘としひろ〟彼は前作で何度も舞園創の夢の中に出てきては「お前の記憶は此処に在る」と意味深な言葉を訴え続けた男。その正体は舞園創の実の父親にして、第1回目のフレームデッドゲームの参加者。その結末はエスケープルート初の脱出に成功した生存者である。


 対する隣に座る金髪のガリガリ男の名は〝早乙女さおとめひかる〟彼は前作の第零話にてスマートリーというピエロに殺害されるシーンが初登場という異質な人物。その際に即死したと語られていたが、健康的な身体とは程遠いものではあるけれど死者を装って生きている。


 そして後から現れた舞園敏弘を止めたこの男。顔の左半分を黒いフェイスマスクで覆い隠し、喉には縦に一直線の縫い痕がある。黒に薄っすら紫がかった髪色をして、肩からぶら下げた大きな酒瓶が特徴的だ。顔の右半分に見える素顔の特徴は綺麗な白い肌と整った顔立ち。


 この男の正体は現段階では不明であるが、顔半分を隠した状態の彼を見た大将軍義信の表情が驚きに一変する。


「貴様、何者のら!?」


 喉縫いの男は義信に挨拶をしてから微笑む。説明するより顔をお見せましょうと言わんばかりに付けていたフェイスマスクを取り外す。


 彼の素顔を見た義信が驚きの余り思わず声をあげてしまう。


「そんな、何故だら、どうしてだら。あ、あんたまさか」


「ご参集いただいた件について、その後の状況をご説明申し上げます。現在モレクの木漏れ日に至る進行先で確認されている生存被験者の数は全部で24名。それとは別にダミーを含んでいるでしょう。例の〝くまぐるみ〟と名乗った連中から先程〝交渉の意向を示す連絡〟が入りました」


「何者のら、そのくまぐるみという組織とは」


首領釈ドンシャクの配下に置かれた博打組の対抗馬にして中国マフィアの乱者。その勢いはもはや闇社会のトップに躍り出ようとしている程です」


「堂々たる悪者に和国の戦を貸されろと申すのら?」


「連中も我々と同様〝首領釈崩し〟を目的とした組織の1つ。利用価値は十二分にあるかと存じます」


 話の分かる男が出てきたと安心したのか、先程まで耳を貸さなかった将軍が真剣な眼差しをして話を聞いている。しかし、くまぐるみと呼ばれる組織についての1件で悩ましい表情に変化する。


「あんたがそこまで言うのなら……し、しかし悪いがさすがに今直ぐには信用出来ないのら」


「我々はこれから首領釈の元へと向かいます。此処からなら3、4日で有馬に到着するでしょう。被験者に潜ませたくまぐるみの幹部に接触完了し次第、首領を最終にかけようかと計画しております。どうでしょうか義信さん。この場は我々にお時間をいただけないでしょうか」


 フェイスマスクを取った男がドン釈の元へ向かうと言ってにっこりと笑う。そして少しずつ険しい表情に変化させてから一言。


「無論5日で崩してみせます」


 この男についての詳細は会話の中ではよく分からない。左半分の顔には右の整った顔とは全く違った特徴をもつ。大掛かりな手術をした痕であろうか、何十箇所にも穴が開いている。それから縫われた痕や、刺青を消したような濁り跡が見える。


 唯一分かった事は飴名あめな。彼の飴名は〝左釈さしゃく


 飴名とはアメダマの間で認識される通り名であるが、そうなると今此処に居る3人はアメダマの手の者という事だろうか。何らかの目的で長髭大男の舞園と、ガリガリ男の早乙女光の2人と共にデッドゲームの現場へと向かう喉縫いの左釈。


 義信将軍が取引に応じたのか、早々に居城から出て来た3人の男。外で出発の支度をしていた数十人の部下に指示を出す左釈。


「話は済んだ。船を出してくれ」


 さっそく出発しようと港に向かう左釈を、居城から駆け足で追いかけて来た青い目のサムライ。


「左釈さん、左釈さん待って下され!」


「ん?」


「我も、我も連れて行ってくれ。邪魔はしない、頼む!」


 青い目のサムライを見つめて微笑む左釈。この表情はオーケーという意味か?


 場面を移動

―――――――――――――――――

 レッドルーム裁判室


 一方モレクの裁きの最終局を迎えた夏男サイドはというと……


 既に亀谷妙子殺人事件の議論がラウンド3まで進められていた。米山と爾来也の死を受け入れる事が出来ないまま、ただ今すぐこの裁判を終わらせたい一心で議論を進めていたプレイヤー達。


 同士の命を奪った黒幕に向けた怒りが静まり、後から押し寄せてくる悲しみを振り払ったところで最終的に彼らを待ち構えていたのは、次はに処刑されるのはもしかしたら自分かもしれないという恐怖だった。 


 夏男や電田が発見した亀谷の死体状況説明を終わらせ、亀谷が殺害される間際まで追撃していたモルモットの詳細も説明を済ませていた。その際に聞こえてきた銃弾や、亀谷と六条を発見したエスケープルートの〝裏エリア〟についての説明も終わっている。


 夏男と電田は、亀谷と六条の行方を探している最中に〝1発〟の銃声を聞いている。同じく鎌倉も別の場所から同じ銃声を聞いている。後に鎌倉と夏男サイドが合流したが、ルートの裏エリアを発見した夏男と電田は鎌倉を表エリアに待機させて銃声が聞こえた部屋へと向かった。


 エリアを分けた表と裏の行き来方法は、魔獣の巣エリアにある白色の通路に隠された新たな通路を開くよう、通路の床や壁が回転する仕組み。その時回転していた壁が隠された裏エリアへと繋がる通路に移動される構造。


 しかしそんな手の込んだ方法を見つけるまでに相当時間が掛かってしまい、結果的に裏エリアに閉じ込められた亀谷の死を止める事は出来なかった。同じく行方不明になっていた六条は救出する事に成功。


 怪物の頭部には拳銃で撃たれた跡があり、銃傷から多量出血していた。怪物周辺の床はヒビだらけになって崩れていたが、これは怪物が亀谷に攻撃を仕掛ける際に床を蹴った反動でジャンプした跡で確定だ。


 それとは別に、怪物が死亡しながらも右手で強く握り締めていた〝人間の血〟が付着した大形鎌。恐らくその鎌が亀谷を殺害した凶器であろう。


 亀谷の死体発見時の身体状態は、首を鎌のような物で斬られて出血していた。脚は特に外傷がない状態から見て大形の鎌で首を斬られて即死したのだろう。乱れた髪と右手付近に落ちていたのは彼女が使っていたハンドガン。


 亀谷の殺害現場を生で見ていた六条はこの事件について一切語ろうとしない。恐怖の余り言葉も出ないのか、それとも何か隠しているのか。夏男と電田が六条を発見した時の彼女の様子はというと、涙を流して身体を震わせ恐怖に支配されている感じだった。話し合いの出来る余地はない。


 その彼女が〝リアルディベートⅢ〟で衝撃的な発言をする。この発言にはさすがの夏男も全くの予想外の展開。


「私、私、私……私、六条冬姫が亀谷妙子を殺しました!」


 本人の口から殺したと訴えた六条自供の展開。これには思わず夏男も頭が真っ白になってしまう。何故ならただいま議論している亀谷妙子殺人事件において、夏男の推理で導いた事件の犯人はたった今自供した六条冬姫であるからだ。


 今までだんまりだった女がこのタイミングで自供とか何か企んでいるとしか思えない。ついさっき公開処刑を見たばかりだろう。尚更言える筈がない。夏男は六条に問う。


「六条。お前どういうつもりだ」


「どういうつもりもないです。私が亀谷妙子を殺した。それがこの事件の真実なのです」


「何を企んでいる」


 亀谷が殺害されてから今までずっと口を閉ざしてきた六条が真実を語る。


 場面移動

――――――――――――――――――――――

 エスケープルート・特等席向かい廊下


 特等席へと繋がる廊下で無残に倒れた山本カルロスと釈勇気の死体。そこに血だらけになって危険な状態ではあるが、息を整えてこの場から逃げようと立ち上がる未来。


「此処がら逃げないど。早ぐごの事をあの御方に伝えなぎど大変な事びなる。どこだ。僕を監視していだカメラはどこにあぶ」


 監視カメラに映らないよう天井を警戒しながら、足を引き摺ってゆっくりその場から離れる。しかし監視者ルーレットに射撃された銃痕の尋常ではない痛みが襲っては耐え切れずに倒れてしまう。


 それでも諦めずに何度でも立ち上がろうとする未来。長年殺したいと願った兄貴を殺して一矢報いた流れが一変して釈快晴の手の内で転がされていた。


 此処で死ぬ訳にはいかない。未来が発言した〝あの御方〟に釈快晴の裏切りを報告するまでは死ねない。その一心で床に這い蹲ってでもこの場から逃げるのに必死の未来。立ち上がっては倒れ、倒れた衝撃により生じる痛みに耐え切れずに何度も声を上げてしまう。


 釈快晴はルーレットにトドメを刺すよう指示を出す訳でもなく、いつもの微笑みを見せて去って行ってしまった。その身体で生きられるものなら生きてみろという訳か?


 少しの時間が流れ、未来の元に1人の巨大な影が忍び寄って来た。


「んごぉだれだぁ!?」


 彼は未来を尾行していた巨体の追跡者。その追跡者の身体つきを見た未来は、身動きのとれない状況に恐怖してパニックになってしまう。未来が近寄るなと叫んでも男は近づいて来る。


 巨体の追跡者にして釈快晴の裏切り行為、その一部始終を目撃したその男の正体は……


「声を上げるな。お前を裏切るヒットマンはすぐ其処に居る」


 巨体の追跡者〝熊田クマダ威之助イノスケ〟動く!


 ※報告

 読書の妨げになると判断したので、コロシタノダレシリーズ脱出編〝はじめに〟と試験編〝つづく〟の作品説明ページを消去しました。


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