表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/70

15人目


 15人目、山本ヤマモトカルロス


 時を遡る事2年前。


 此処は日本国の遥か北のマセイラ地〝北レベル王国〟と呼ばれる魔国。


 白い雪と赤い花が広がり、人々が行き来する場所には決まって金色の建物が並んでいる。山本はこの3色が特に目立った特徴的な北の雪国に生まれた。


 レベル王国を隣国では〝レディファ〟と呼ぶ場合もあり、レベル王国で暮らす女子供の生活の営みを構成する要素、社会的活動力、信条をもって人間関係を営む能力を優先に築き上げられたレディーファースト国。それを略してレディファと言う。


 又は近年で不意に起こった、小さな隕石の衝突によって発見された魔石と呼ばれる石を持ち、魔法を研究している魔術発展国とも認識されている。多くの人々はレベル王国を魔国と呼ぶ事が多い。


 レベル王国で暮らす国民は、その全てが詰まった愛しい景色や大切な思い出を守るために自ら戦争の前線に立って戦いを挑む男戦士が5万と居る。


 しかしレベル王国は元々戦争を好む国ではない。それでも過去に起きてしまった〝ソハヤ戦争〟や〝ブルファン処刑〟等に結果を残してきた戦争を知る王国軍が今も存在するのが現状。


 そのレベル王国軍の現軍隊長を任されているのが本編で登場した山本カルロスだ。彼の身体には、常に戦の世界に身を投じてきた生き様を語った無数の戦痕がある。


 その無数の傷とは、過去に国民を守った人数の実績を意味し、王の為に、又は国民の為に命を懸けて戦ってきた王国への忠誠心を表すものでもあるといえる。


 ある日のお話である。今日はレベル王国にとって歴史を塗り替える最も最悪な事件が起こる。


 レベル王妃が敵対していた西の国の〝潜り〟に殺害されてしまう暗殺事件が起きてしまったのだ。当然、殺害した者は王国側が処刑した。暗殺者を忍ばせていた敵国との間で既に起きていた戦争に終止符を打つ訳もなく、完全に滅ぼす勢いで軍を動かす王国。


 長い戦いの末、敵国に勝利したレベル王国はしばらくして信じられない報告を国民らにするのであった。その驚くべき報告とは〝王妃暗殺事件は誤報〟


 戦争を終えてから誤報を伝えたレベル王。後にレベル王国王宮地区周辺では幾つもの内乱が起き、沢山の人が亡くなった。


 嘘で塗り固められた戦士達の〝戦う理由〟を誤報で済ませた王族と王下の者達に対する王国軍と国民の不信感は募る一方。この事態を止める事の出来ない王族サイドは、かつてない最悪な状況に頭を悩ませていた。


 国中で反乱デモが行われている頃。戦争を終えて王宮へ帰還したレベル王国軍隊長のカルロスが国王の元へ早足で向かっている。カルロスの後ろには軍隊の部下が3人付いている。


「良いですかい。出方次第では王族の暗殺も視野に入れておいて貰いやしょう。その覚悟が決まらないのであれば、今すぐカルサから離れなせい」


 カルロスとその部下の4人に気付いた王族を護衛する王下の者。


「貴様ら、其処で何をしている! 現在王宮内は例外を除いて王の許可なく立ち入りは禁止だ!」


「のうそしたら何でぃ。この先にゃ民衆の目を寄せ付けぬ何か後ろめたい〝言霊ことだま〟でも御有りでしょうかね」


「何だと!?」


 カルロスの後ろに付いていた部下が行く手を阻む王下の首筋を不意打ちでチョップする。気絶した王下の者をゆっくり床に倒して先を行く。


 そして国王の間に辿り着いた一同。


「んん、どういう事じゃカルロスではないか。御主が何故此処におる?」


「失礼しやすレベル様」


「王下の者はどうした。今は王族以外の者を王宮に立ち入る許可など出してはおらん筈だ」


「我々に反逆の意志はありやせん。ただ1点。貴方方が犯した戦争の火種を撒いた誤報について1点だけお聞きしたく、この間を強制突破させて貰いやした」


「な、何を考えている。考えを改めろカルロス。御主が道を踏み外しては部下に示すべき道をも失う結果になりえるかもしれんぞ」


「貴方様を第一にお守りするのが軍隊を任された意味としましょう。又、国民の安全をお守りするのが今を生きる軍隊の価値であるのも百も承知。それが全て故、貴方様に危害を加えるつもりはありゃあせん。しかしながら、貴方様がこの国の王座に今尚、身を置く以上はそれなりに国民の命を貴方様ご自身でお考えになられるのが民主国家と騒がれる所以。歴史を辿れば必然であるべき行い」


 カルロスの表情が険しくなっていく。


「なして民や軍を裏切った。のぅレベル様」


 王妃暗殺事件の誤報。既に戦争をしていた敵国を滅ぼすに至った事件が、まさかのレベル王国サイドの私欲で出たでっち上げである事が発覚。これでは軍隊長として戦争で命を失った部下や、その家族や恋人に合わせる顔がない。


 しかしレベル王は思いもよらない真実を語りだす。王妃暗殺事件は本当に起きた出来事であって、王妃は既に亡くなっているという。しかしながら、それを他国に知られてしまうと年々問題視されてきた国力のガタが来ているのを見透かされてしまう恐れがあったという。


 今この国が他国に攻め入られては、もはや太刀打ち出来るほどの戦力も残っていない軍が先に滅び、結果的にレベル王国そのものが滅ぶ恐れがあると語る。


 よって王妃の代理を用意したという。殺された王妃になりすました新しい王妃が存在する。


 彼女の名前は〝8115〟


 8115という人間の名前とは思えないこの女は某組織からある方法で密輸していた人間に似た商品であると話す。王妃に瓜二つの彼女を作り出した組織の親玉の名は〝ドン釈〟


 某組織とは恐らく、ドン釈の配下に置かれた不老不死への科学を研究する人体冷凍保存計画、クライオニクスだろう。


 つまり8115とはクライオニクスがレベル王国と何らかの交渉をした後、王妃の死体を研究材料に使う代わりに王妃のクローンを作り出す契約を戦争終盤時にしていたのだ。


 密輸した際に手に入れた新たな死体を使い回しているクライオニクスは、約2週間で未完成ではあるが王妃クローンを完成させた。


 よって王妃の死体はこの世に存在するようで存在しない。本物の死体を捨て去ってでも新しいのを手に入れるという残酷な選択ではあるが、これが成功した事によって避けられる戦争もあるのだと語る。


 今更国民にどう説明したら良い。死体がないのに王妃暗殺をの真実を証明出来るものもない。彼女は生きていなければいけないんだと涙ながらに語ったレベル王。


「8115。クライオニクスが付けた商品名だ。我々は彼女を〝ハルコ〟と呼ぶ」


 数字を違った読み方にして、11をルと読む事によって決まった王妃の裏の名。いつしか国民は王妃を姫や王妃様と呼ぶのではなく、春子姫と呼ぶようになっていった。


 そう、春子姫とはレベル王国の現王妃でありながら、本物の王妃に似た王妃クローンの人造人間である。そしてその春子姫と呼ばれるクローンは本編の舞台〝デッドゲーム〟に深く絡んでいるという事。


 この一連の流れを経て山本カルロスは王国の勇敢な戦士として称えられながらも、王族の下に仕える王下一族に暴行を加えた罪として国外追放の裁きが下される。


 山本カルロスとその部下3名の計4名が暴行を加えた王下一族は全部で26名。そのうち1名が重症で病院へ搬送された。


 しかしながら今尚カルロスの帰りを待つ兵士や国民は多い。それだけ彼が残してきた実績と彼に対する信頼や人徳が高く評価されていたのだろう。


 山本カルロスが北レベル王国国外追放の裁きを受けてから2年後。不意にカルロスに接触してきたクライオニクスとレベル王国。彼らがカルロスに求めた内容は以下の通り。


「王妃のように死んだ人間を新たな生命体として誕生させたクライオニクスは素晴らしい科学組織である。お前も我々に協力してくれ。その代わりとして一定条件を超えれば国外追放の罪を償ったと認め、レベル王国へ再び招き入れたい」


 〝春子姫を頼む〟


 レベル王国の危機を救った救世主クライオニクスとの契約を交わしたカルロスは、それから1ヶ月の間彼らの実験に参加していた。しかしその実験内容は、カルロスの思う繋いだ新たな輝かしい未来のそれとは違った、あまりに残虐で失うものが多い闇の研究そのものであった。


 誕生する命が人造であろうがそうでなかろうが、それを生み出すクライオニクスは素晴らしい。レベル王国にとって危機を救った恩人であると思っていた。


 しかし人造を作り出す代償として、必ず失う命が存在する。つまり新たに生み出した画期的な生命誕生とは違い、失ったものを新たな形で作り直しているだけのまやかしに過ぎない。


 そしてその研究を進める上でも必要になってくる生の死体と生の生きた人間の犠牲が、当たり前のように実験材料にされていた。


「こんなの絶対間違っているんで」


 今現在も不老不死を最終目標にしたクライオニクスの研究は続く。その犠牲となるのがゲームに強制参加させられている30人のプレイヤー達だ。


 内情を知るカルロスは彼らのやり方に納得などしていない。ドン釈や博打組との接触を図ったりもしたが連中の尻尾は掴めなかった。


 今回行われている第2回フレームデッドゲームの実験プレイヤーに選ばれた山本カルロス。彼が守ろうとしたもの、止めようとした事。恐らくその全てがレベル王妃の春子姫と繋がってくる筈だ。


 山本カルロスがエスケープルート出口を見つけておきながら引き返したのは、恐らく予め出口の場所を把握してから春子姫を救出しようと考えていたのだろう。しかし無念にも春子姫を助け出す前に黒幕サイドに殺されてしまった。


「レベル王国はカルサの全てで。例えこの身が朽ちようとも王妃を守る。それが道なき道を歩んできた獣を道徳上拾いくれた恩師との約束でぇ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ