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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピソードⅣ― 「裁判枠と冷凍人間」
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第三十四話 『 枠ミッション 』


★ここからエピソードⅣに入ります。

 30人の運命が交差する、生き残り脱出ゲームの開幕です。



 早くもゲームの犠牲者を出してしまう!


 出してしまった、重要人物2人目の犠牲者。起きてしまった殺人事件。目の前に映る光景は、プレイヤー達の日常的な常識とは程遠い無残な死体。車椅子に座りながら息絶えた彼の正体は、希望ヶ丘学園、旧桜ヶ丘学園の学園長を勤めてきた〝菊池昭造〟だ。あまりに変わり果てた彼の姿を見たプレイヤーの生徒達は、泣いて、座り込んで、信じられなくて、思わず目を逸らして、泣き叫んで、絶望して……


 どうしたら良いのか分からない。プレイヤー達の心に突き刺さり、先の道が閉ざされたような感覚。


 絶望的で、それよりも絶望的で、二重して押し寄せてくるのもまた、絶望的で……頭の中が絶望が巡って……一杯一杯で。


 絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望絶望。


 早くも絶望を味わってしまうプレイヤー達の様子を見ている赤西。誰よりもチュリぞうから近い距離に立っている彼が口を開く。


「こいつはちとルール違反じゃ無いのか?」

『ンン??』


「ゲームはこれから始まるのだろう。それに、俺達プレイヤーに反逆の意思があっても、そこまで抵抗している訳でもあるまい。ましてや、何だかんだお前がダラダラと説明する気味の悪いゲームの詳細を聞いてやってるんだろうが。こんな事……人を恐怖で押さえ付けるための見せしめを目的とした、事前の殺害をやるなんて……こんなのあんまりじゃないか!」


『アノサー赤西君。君ハ他ノプレイヤー達ニ比べれば、内情ヲ少シ多ク知ル人物ニナルンダケド、ダカラッテ何デモ意見ヲ言ッテ良イト思ッタラ大間違イダカラネ?――サッキカラ目障リナンダヨ』


「だったらどうだと言うんだ?」


『君ガヒトツ意見ヲ言ウ度ニ一人殺ソウカニャ~』


「!?」


『ナーンテ事ニナッタラドウスルノサー。チュリモ気ガ短イ方ダカラ、以後チュリニ意見ヲ言ウ時ハ、ソレナリノ覚悟ヲシテオイタ方が良イヨ』


「卑怯な奴め……」


『サテ、ソロソロコノ〝人形っぽい喋り方〟ニモ飽キテキタネン』


「ん?」


『さーてオ前ラ、これで分かったんだにゃー★チュリに逆らったら最悪殺されちゃう事だってあるんだから、あんまり余計な行動は命取りになるかもしれないから注意しておくようにー』


 女の声が変わった!?――喋り方から声質までさっきとは別人のように変化するチュリップぞうさん。音声マイクの設定でも変更したのだろうか。


「なるほどな、こいつは驚いた。声まで変えられるのか」


 人形から発せられる音声に対して、冷静に感想を述べる夏男。それに続くのはギャル子の早乙女薫子。


「どうやら一筋縄ではいかないみたいね。こいつの正体が遠くで人形を操作しているのであれば、この人形に闘いを挑んだところで被害に遭うのは結局私達」


 早乙女薫子の意見に対して花丸が反論する。


「でもこいつを倒せば敵も遠隔操作が出来なくなるんじゃねぇのか。だったら話は早いだろう、何人か犠牲者が出るかもしれないが、早いうちにこのふざけた人形をぶっ壊しておいた方が得策だ」


「あんた、何を平気で犠牲者出ても仕方が無いとか言ってるの!?――頭沸いてるんじゃないの?」


「あんだと!?」


 意見が食い違う二人がまたもぶつかり合う。


『はいはーい注目。こんな事をしていたら話がどんどん脱線してしまうよ。さーて、とりあえずこのゲームの主催者が本気だという事は分かって貰えたようだから、次に進めるぞー』


 そう言って〝ルーレット〟と呼ばれる男に菊池昭造の死体を下げるよう目で合図を送る。このルーレットと呼ばれる男……彼は実験のプレイヤーでは無いのだろうか。チュリぞうのサポートで現れた彼の正体は、例の博打組と呼ばれる暗殺組織の幹部の事なのか。詳細が分からないまま菊池を運んで大広間を後にする。


 夏男から見たルーレット印象は、黒のスーツに黒髪でパーマをかけているワイルドな大人の男。一見無表情かと思われる彼は冷めた目をして、彼と目が合うと心の中が覗かれているような、上から人を見下ろしたよう。見た感じでしか紹介する事しか出来ないが、彼の一時の登場に一切の隙は無いように見て取れる。


「あの男は何者だ?」


『あーもうまだ質問してくる訳?――まぁ丁度あいつの紹介を含めた説明をするつもりでいたから答えてやるけど。あいつの通り名は〝ルーレット〟と呼ばれるこのゲームの監視者ってところだね。他にも【スロット】って奴が居るんだけど、そいつもアシスタント的な役割をしている黒幕サイドの人間なんだ』


 意外にもあっさり黒幕サイドだと暴露したチュリぞう。このゲームを裏でサポートする黒幕サイドの人間が二人も潜んでいる事が確定した。


『さて、そんな事よりもっと肝心な事を聞き逃していないかい?――ムフフ。えっと、このゲームの脱出方法や参加しているプレイヤーの数、生活パターンやその期限等は先程説明した通りになるけど、脱出方法についてピンと来ていないのがほとんどだよねー』


 脱出方法の簡単なルールを見直す。

 ・脱出方法は脱出ルートを抜けるかミッションをクリアする。もしくは……


『オ前ラにはこれからある〝ミッション〟を与える事になるんだよね。そのミッションについての内容や実行、その一連の流れ全てを言い包めて【枠ミッション】と呼ばれるんだけど、さーて枠ミッションとは一体何なのかしら!?』


「…………」

 沈黙。


『何だよオ前ラ。何でこの辺りの食い付きが悪いんだよ。一戦交える覚悟だったのに……し、しょうがないから説明してやるよ。よーく聞いておくように!』


 ※枠ミッションの説明

 枠ミッションとは、ぞれぞれに与えられた脱出する上での必要条件を指す。ミッション内容はプレイヤーによって異なり、その内容は基本的には公開されない。しかし、自ら手の内を明かすのは違反では無い。つまり、自分のミッション内容を他者に教えるのはOKという事だ。


 ただ、枠ミッションの種類は〝ペル〟と呼ばれる電子手帳から調べる事が可能。公開されている枠ミッションの種類は全8種類31人枠。以下プレイヤーに与えられる枠ミッションの種類一覧。

 ・裁判枠(8人)

 ・殺人枠(7人)

 ・脱出枠(5人)

 ・裏猫枠(3人)

 ・黒幕枠(3人)

 ・植物枠(2人)

 ・人造枠(2人)

 ・切札枠(1人)


 裁判枠なら裁判枠同士同じミッションが提示される。つまり手を組むべき相手だという仕様。それぞれどんなミッション内容を提示されるのかはその種類の者でないと分からない。しかし口外も嘘も問題は無い。


『とまぁ説明するより配っちゃった方が早いかなぁ。おっと!――忠告忠告!――オ前ラに一つ忠告しておくけど、ゲームに参加するしないに関わらず、安易に自分の提示されたミッションを口外しない事をお勧めするよ。口うるさく言うつもりは無いけど、後で後悔してもチュリ知らないからねーん★』


 唾を飲むプレイヤー達。緊迫した空気。


『よーし配っちゃおう。オ前ラ其処で待っててね』


 そう言って走り去ってしまうチュリぞう。何か取りに行ったのであろうか。残されたプレイヤーの沈黙が続く。その空気に押し潰れる様子を見せずに考え事をしている神崎夏男。


 「…………」

 枠ミッション。俺達に与えられる脱出方法その必要条件。口外する事はお勧めしない……か。分からない、奴らの目的は一体何だ。どうして俺達がこんな目に遭わなければならない?――試験、試験って何の話だ?――見えてこない。見えてこないぞ黒幕ドン釈。お前は一体この場所で俺達に何をさせたいんだ。何を求める!?


 辺りを見回す夏男。何か異変に気付いているみたいだ。何かを数え始めてからある疑惑が浮上する。


「…………」

 枠ミッションの数31。此処に居るプレイヤーの数〝23人〟か。どういう訳か枠ミッションとプレイヤーの数が一致しない。残り8人はまだ部屋で閉じこもっているのか?――それにしてもおかしいな。


 ポケットから電子手帳ペルを取り出す。指で画面をタッチしてプレイヤー名簿の画面を見てみる。


「…………」

 記憶違いでもなさそうだ。プレイヤーの数は30人で合ってる。でもどういう訳か枠ミッションの種類は8種類の〝31人枠〟と言っていた。ん……


 夏男が注目したのは〝切札枠〟と呼ばれるミッション。


「切り札……連想されるのはトランプのジョーカーか。ん……そういえばこの大広間の隅に居るあのピエロメイクをした奴……」


 大広間に集合しているプレイヤーの中でも一際目立つピエロメイクの人物。手を組んで壁に寄り掛かりながら立っている。相手に覚られないように気を付けながら見た目の特徴を観察してみる。


「…………」

 身長170前後、体格は細め。赤髪に染めた奴の顔は赤色の口紅と顔全体に塗られた白のドーランからピエロの涙まで丁寧にメイクされている。奴の服装もいかにもピエロって感じのカラフルな服装だな。他には何か無いか。


 細かく観察しようとしたところでピエロメイクの人物がこちらに目線を向ける。自然に目線を逸らしてみせる夏男。これ以上の観察は相手が不信に思ってしまうであろう。密かに要チェックのプレイヤーを見つけた夏男が次に気になった事は枠ミッションの割振り方法だ。既に黒幕サイドに決められているのか?


『お待たせー、でーはプレイヤー名簿順にチュリがオ前ラの名前を言うから、呼ばれた奴は此処まで来てこの箱に入っている〝くじ〟を1枚引いてね★』


「!?」

 くじ引きだと!?


 大広間の中心に立つチュリぞうがプレイヤーの名前を言っていく。


『そうだなー、1番と見せかけてーのフェイントして被験者30番、神崎夏男!』


 最初にくじ引きを引くのは夏男に決定。まさかの展開にさすがの夏男も動揺を隠し切れない。


「行くしかない……」


 チュリぞうと枠ミッションくじ引き箱に向かって歩いている夏男。ひょっとしたらこのくじ引き一つで今後の命運を左右するかもしれない。夏男の額から汗が出ている。裁判枠・殺人枠・脱出枠・裏猫枠・黒幕枠・植物枠・人造枠・切札枠。そのいずれかを引いてしまう夏男の重要シーン。この物語を大きく動かす運命のくじ引き。


 箱の前で足を止める。


『この穴から手を入れて1枚くじを引いてね』

「…………」


 夏男の脱出条件は何!?


 ゲームマスター〝チュリぞう〟の台詞は、大きな発言力とゲームを進行していく役割を担うので二重カッコで描かれます。

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