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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―プロローグ― 脱出(本章)
3/70

第三十三話 『 チュリップぞうさん 』


 大広間に集められるプレイヤー30人


 時刻は午後8時を回る。ゲームの詳細を伝えると書かれた黒幕からのメッセージ。大広間で集合するよう指示されるプレイヤー達。大広間に集められたその数30人程。早くもプレイヤー同士の間で口論になってしまい、場の空気が重たくなってしまう。


 これからゲームの詳細を伝えるであろう人物の正体は黒幕なのだろうか、此処に閉じ込めた張本人なのか、それとも……


 プレイヤーらが大広間に集合してから5分が経過。大広間に集まった人達の不安そうな表情が並んでいる。そこには試験編で登場した【亀谷】や【椎名】、【貞子】や【高橋】、【青田】や【路瓶孫】、他にも作中で登場してきた人物らの姿も見える。


「いつまで待たせるつもりだ。ていうかゲームの詳細って何の話だゴラ!」


 また花丸家康が大声をあげる。花丸のすぐ傍に居た赤西堅也が口を開く。


「まだ全員揃っていない」


「あんだと」


「恐らく〝奴〟は、プレイヤー全員が此処に集まるまで待っているのではないだろうか」


「どういう意味だ黒帽子。お前、何か知ってそうな口ぶりだな」


「ん?」


 花丸と赤西の会話が続く。


「てめぇ今〝奴〟って言ったよなぁ。奴らじゃねぇ、奴って言いやがった。てめぇはこれから現れるであろう人物に目処が付いてんじゃねぇのか!?」


「どうだろうな」


「なっ、どうだろうなってどういう意味だゴラァ」


 気の早い花丸が赤西の胸座を掴む。


「てめぇ、さては何か知ってやがるな?」

「…………」


「深々と帽子なんて被っちゃってよー、いかにも怪しいよなぁ。痛い目遭いたくなかったら今のうちに、知ってる事全部喋っておいた方が良いと思うぞ」


 自身の胸座を掴んだ花丸の手を払おうとするが、がっちり掴まれていて払い切れない。尚もしつこく挑発してくる花丸。


「離してくれ」


 花丸の腕を掴んで睨み返す赤西に対し、今にも手を出しそうな花丸、いや手を出した。花丸の右アッパーが赤西の顔面を目掛けて放たれようとしたところで〝巨体の男〟に拳を握られてしまう。花丸が完全に止められた。


 巨体の男の顔を見上げて、思わず危機感を感じてしまう花丸。彼の目線に立つ巨体の正体は……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 熊田クマダ 威之助イノスケ(16)

 男性 身長195cm 体重90kg

 巨大な体つきで大人しい性格

 学園内のあだ名は【くまお】

 格闘の術を身につけていて計7つの必殺技がある

 9人目の被験者(第五話初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「何すんだううぁがは、離しやがれデカ野郎!」


 低い声で熊田。


「面倒を掛けさせるな」


「え?」


「面倒を掛けさせるなと言っている」


 そう言って花丸の拳を離す。二歩下がり、熊田を警戒する花丸を見て〝ギャル子〟が余計な一言。


「やっぱりアンタは口だけだったわね」


 熊田が花丸を見る。表情に変化の無い熊田を見て、思わず唾を飲む花丸。


「うっ……」


 花丸が大人しくなる。熊田にびびっているのか。うむ、完全にびびっているようだ。そんなプレイヤー達を静かに観察している夏男、とその時だ。


『オ待タセシチャッタヨ、シテヤッタヨ。ハーイオ前ラ注目!』


 先程彼らを大広間に来るようお知らせした〝女〟と同じ声をした人物が現れる。しかしどういう訳か、女の姿が見当たらない。何処だ何処だと辺りを見回すプレイヤー達。一人の男が上を見上げると。


 な に か が 飛 ん で く る ! ?


 ヒューンと音を立てた〝何か〟が落下しているのが確認される。


 飛んで来る物は少し重たい、いやかなりの重量がありそうな黒い物!?


「ば、爆弾だぁ!!」


 男の言葉に驚くプレイヤー達。爆弾を見つけた男と同じ視点に合わせて一斉に上を見てみる。


 カツンと地味な音を立てて床に落下した。それと同時に頭部を守るようにして床に伏せているプレイヤー達。おかしな事に何も起きない。この状況に夏男の頭の中は真っ白になっていた。と、その時。


『ドッキリ大成功!――イエーーイ★』


 意味が分からないと言わんばかりの表情を浮かべるプレイヤー達。何があったのか、どうしてこんな事が起きたのか、把握するのに時間が掛かる。辺りを見回すが、やはり女の姿は見当たらない。次第にざわつく大広間。


「あれは……?」


 100メートル先にある物。夏男の視界に捉えたのは、壁に隠れようとしているが隠れきれていないぞうさん。どうやら人形が壁に本体を半分隠してこちらを覗いているようだが、どういう意図であの人形をあんな場所に配置したのか理解が出来ない。が、しかし異様な雰囲気漂う大広間なのにも関わらず、目立ってしょうがないぞうさん人形。そして、それが動いた。


 一瞬目を離した隙に消えてしまった人形。


「おい、今のは何だ?」

「分かりません、でもどういう訳か居なくなっています」

「ぞうさん人形?」


 プレイヤーサイドがクエッションマークで頭の中が埋め尽くされたところで消えた人形の元へ全力疾走する赤西。


「待ちやがれ」


『恥ズカシイカラ来ルナ~~見ツカッチャウヨ~』


 先程と同じデザインの爆弾が人形の隠れる場所から投げられる。赤西目掛けて投げられた爆弾を避けた赤西は危険を察知して爆弾をプレイヤー達から引き離すようにして蹴り飛ばす、遠くへ飛ばされた爆弾が大爆発を起こす。


 突然の大爆発に絶叫するプレイヤー達。先程の不発弾の件があったせいか、爆弾に対する警戒心が薄くなってしまったため、予想外な展開に驚きを隠せない。


『オ前ラ御免。ウッカリ本物投ゲチャッタ★』


 人形ぞうさんが姿を見せる。そして、先程大広間に集まるよう放送した女の声が聞こえてから、宙を舞うぞうさん。プレイヤーらの元で見事な着地を見せる。


「何だこいつ」

「人形が動いたわ!」

「今、この人形から女の声がしなかったか」


 人形ぞうさんが口を開く。


『オ前ラ初メマシテ。コチラ【フレームデッド・ステージ】ノ世界ヘヨウコソ★チュリの名前は【チュリぞう】宜シクネ!』


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 重要人物 チュリップぞうさん(??)

 性別不明 身長62cm 体重18kg

 一部で人気のキャラクター人形!?

 人形を遠隔操作している人物の詳細は不明

 フレームデッドのゲームマスター(GM)

 23人目の被験者(初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『サッソクデハアルガ、コレカラゲームノ詳細ヲ説明シタイトオモウ。オ前ラ、メモノ用意ハ出来テルカー?』


 人形が喋っている。いや、人形の内部に取り付けられている音声マイクから誰かの声が響いているのか、人形内部に電子機械でも仕掛けられているのか。今分かった事は、女の声をした動くぞうさん人形〝チュリぞう〟が、プレイヤー達の部屋に置いてあったメッセージを書いた張本人で間違いないという事。


 さっそく一人の女がチュリぞうを討とうと立ち向かう。チュリぞうの姿を確認したプレイヤーの一人【爾来也伊吹】が、チュリぞうに向かって全力で走る。片手に日本刀を持って極上技を発動させる構えを作る。そして放たれる爾来也の斬撃!


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 重要人物 爾来也ジライヤ 伊吹イブキ(15)

 女性 身長161cm 体重50kg

 中学時代に中国拳法関東大会で優勝している

 黒髪に紫色の髪留め、夜桜柄の着物を着た和装女子

 学園には着物で登校している

 26人目の被験者(第二十八話初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「伊吹、待て!」


 爾来也伊吹が斬撃を放つ寸前に立ち塞がる一人の男。


「早まるな」

「どけ!」


 爾来也の利き腕を掴んで投げ飛ばす男は、何と赤西堅也。この一連の流れを見ているプレイヤーは事態を全く把握出来ていない。内情を知っていそうな赤西の動きを見ていた夏男の表情が険しくなる。


『何々、何ガ起キテルノー!?』


 あたふたしているチュリぞう。爾来也を止めた赤西がチュリぞうの方へ振り返る。


「俺達に残された選択肢など存在しない。どうせお前の言うゲームに強制参加させられるのだろう。説明するならさっさとして貰おうか」


『ウ、ウン分カッタ。デハデハオ前ラ注目!――コレカラオ前ラガ置カレテイル状況ヲ含メタコノ舞台ノ説明ヲスル。一度シカ言ワナイカラシッカリ聞イテオクンダゾー』


 一方的にゲームの説明を聞かされるプレイヤー達。ゲーム内容は以下の通り。


・参加プレイヤーは計30名

・期間は1日16時間の計30日間

・就寝時間は22時~6時(就寝時間の間は個室待機・出入禁止)

・プレイヤーにはそれぞれのミッション(枠)が与えられる

・脱出方法は脱出ルートを抜けるかミッションをクリアすること、もしくは……

・30日経っても此処から脱出出来ない場合は、ゲームオーバーという事で永久監禁とする

・プレイヤーの中に黒幕サイドの人間と最終黒幕〝ドン釈〟が紛れている

・今後追加ルールは有り


『現在コノ大広間ヲ中心ニ、ソレゾレの個室が設ケラレテイル。良イカイ、就寝時間ノ間は個室カラ出タリシナイヨウニシテネ。大マカナルールハ、今説明シタ通リニナルケド、細カナ説明ヲシテヤル』


 プレイヤー達がポカーンとしながらチュリぞうの話を聞いている中、赤西が質問をする。


「脱出ルートを抜けるかミッションとやらをクリアする。後もう一つの方法は何だ」


『オット、質問タイムハマダダヨ赤西君。勝手ナ行動ハ他ノプレイヤーニモ迷惑ヲ掛ケテシマウ場合モアルンダカラヤメテヨネ!』

「…………」


「ま、待ってくれ。ゲームの説明以前に分からない事が多すぎる。何で私達がこんな所に集められたのだ。脱出ルートとかミッションとか言われるが、何故我々が脱出しなくてはならない?」


 普段は教師をしている青葉博文がチュリぞうに質問をする。


『ウーン、先ニソッチノオ話カラシタ方ガ良イ?』


 プレイヤーの表情を伺うチュリぞう。


『分カッタ、君達ガ何故ココニ集メラレ、ゲームニ強制参加をサレルノカ、ズバリ教エテヤロウ』


 拳を握り締める青葉。


『コノゲームノ主催者ハ【ドンシャク】ニヨル計画サレタ実験デモアッテ、君達30人ハドン釈ノ試験ニ合格シテ選バレタ被験者ナンダ。ソシテ此処でソノ実験ガ始メラレル。君達ガ何ノ試験ヲ通過シタノカ、何ヲ基準ニ選バレタノカ等ノ理由ニツイテハコノゲームノ〝5日目〟ニ説明ヲスル事ニナッテイル』


「答えになっていません!」

『ムカッ』


 チュリぞうの理不尽な言い分に黙って聞いていられなかった【高橋】が割って入る。


「そんな訳の分からないゲームに何故私達が参加しないといけないのです。私達が選ばれた理由も教えてくれないなんて、そんなの納得出来ません。よってゲームにも参加したくありません!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 高橋タカハシ 未来ミライ(15?)

 女性 身長152cm 体重96kg

 【高橋星子】は偽名 最近個人電話を手に入れる

 小柄で細身の体格とは違った体重の件は不明

 普段は引っ込み思案な性格 事件の捜査中は積極的で真剣

 3人目の被験者(第三話初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 それに対しチュリぞうが意外な返答をしてくる。


『ジャア、参加シナケレバ良インジャナイノ?』

「え?」


『デモ忘レナイデ欲シイ。君達ハ既ニ閉じ込められている状況ナノダヨ。参加スル意思が無イトイウ事ハ、ドウイウ事ニナルンダロウネ。チュリが予想スルニー此処ニ居ル〝ダレカ〟ニ殺サレチャウカモネ★』


 此処に居るダレカに殺されてしまう。どういう意味だ。


『ダーッテコノゲームノ醍醐味だいごみッテ〝人ヲ殺ス事〟ニナルンダモン!』


 チュリぞうの言葉を聞いたプレイヤー達はいよいよ我慢の限界のようだ。


『コノ脱出ゲームハタダノ脱出ゲームジャナイ。人ガ人ヲ殺シテ自分ノミッションヲ遂行サセル事ニ徹シタ、命懸ケノ脱出ゲームナンダヨーーン★』


 一人の男が我慢の限界でチュリぞうに立ち向かおうとする。


「もう我慢ならねぇうおおおおおお!」


 チュリぞうに立ち向かうは花丸家康。そこへ誰かが呼ばれて何かを持ち運んで来る。


『ハーイ、ルーレット君。例ノ物持ッテキテクレ』


 〝それ〟は誰もが予想出来なかった最悪の悪夢そのもの。車椅子に白い布を被せた何かを運んで来る【ルーレット】と呼ばれる男が姿を現す。


『アレコレ説明スルヨリモ、コレヲ見セタ方ガ早イネ。デーハオ前ラ、アンマリチュリに逆ラッテイルト、ドンナ目に遭ッテシマウノカ、コチラヲ御覧アレ』


 白の布を退かしたルーレット、プレイヤーの目に映ったある人物の無残な死体。


 ※重要人物の死体が発見されました

――――――――――――――――――――――――――


 車椅子に座る人物の真っ青な顔。


 男のようだ。全身に血の気が全く感じられない。


 真っ先に目にしたのは、整えられた白髭。


 次に汚れたスーツと壊された眼鏡。


 太ももに血が付着している。


 頭部から大量出血している。


 そのため顔全体が血で覆われている


 よく見てみると希望ヶ丘学園や桜ヶ丘学園の生徒に馴染みのある男


 歳を召されているであろう死体の男の正体は……


 × キクショウゾウの死体が発見されました

 

――――――――――――――――――――――――――


 無残な死体


 ★脱出編プロローグは以上になります。


 ★重要人物生存者残り28人

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