第四十三話 『 脱出ルート 』
エスケープルーム内にて
時刻は13時過ぎ。篠原すみれを初めとした裁判枠の同盟を組んだプレイヤーら合計9名は、第3の脱出方法〝脱出ルートを抜ける〟事を目的とし、ゲーム初日にして内部へ入る。
しかし状況は早くも最悪である。脱出ルートに入るや否や入り口の扉が閉ざされ、赤色の照明がぴかぴか光りだし、サイレンが鳴り響く。そして何故か女の声をした人物のアナウンスが流れる。
『エスケープルームより侵入者発見、侵入者発見。エスケープルートに配置されたエキストラ枠の者達はただちに指定された場所で待機しなさい。繰り返します。エスケープルームより侵入者発見、侵入者発見。エスケープルートに配置されたエキストラ枠の者達はただちに指定された場所で待機しなさい』
どういう訳か、脱出ルートに挑んだプレイヤーらが侵入者扱いされる。
『標的は全部で9名。被験者ナンバー11、12、17、21、22、25、26、28、30。エキストラ枠は指定された場所で待機し、次の指示を待ちなさい。繰り返します。標的は全部で9名。被験者ナンバー11、12、17、21、22、25、26、28、30。エキストラ枠は指定された場所で待機し、次の指示を待ちなさい』
何が起きているのか状況を把握しようと冷静を保つプレイヤー達であるが、焦りを隠しきれないでいる。ふと入り口扉の右にある小さな机に置かれた書類を発見する。
入り口扉の横に『エスケープルートの説明』と案内書きされた書類が30枚程置いてある。それに気付いたプレイヤーらは書類に目を通してみる。
サイレンの音が耳に響いているせいか、進め進めと急かされている気がしてならないプレイヤーらは、内容を飛ばし飛ばしで読んでいく。
その書類には、エスケープルート(脱出ルート)に参加する上での注意書きやマナー等が雑に説明書かれている他、エスケープルートの見取り図ようなものが?……これまた雑に描かれていた。
※エスケープルート(脱出ルート)見取り図・黒幕サイドのラクガキ
注意書きに書かれている赤字の重要ポイントにはこう書かれている。
〝エスケープルート参加中のプレイヤーは、夜時間出入り禁止の対象から外れる〟
もう一つ赤字で注意書きが書かれている内容がある。
〝エスケープルーム参加者は、例外なく入り口に貼られたサイン用紙に直執サインをする事。忘れた・知らなかった等という言い訳は通用しない。サイン未記入のまま、ブラックルート先まで侵入した際には反則と見なし。対象プレイヤーを即処刑とする〟
以上の内容をざっくり読んだ夏男は、サインを記入する貼り紙を探す。入り口扉の左手に貼られた一枚の紙を発見した夏男はプレイヤーらに貼り紙の存在を伝える。
「おいお前ら、急いでこの紙にサインを書くんだ。急げ」
夏男に言われた通り、プレイヤーらが貼り紙の元へ走る。紙には『サインはここ』と書かれている。夏男が話を続ける。
「ここにサインを書かないと処刑をするんだとよ。今はとりあえず黒幕の言う事を聞いておくべきだ」
それぞれが夏男に頷いてから貼り紙の真ん前の机に置かれた幾つかのペンを手に取る。夏男が一番手にサインを書き始めようとしたその時。待ったを入れてくるこの男、電田龍治。
「ちょっと待て。その紙をよく見てみろ」
サイレンが鳴り続け、照明が赤色に照らされてチカチカする状況の中、冷静におかしな部分を指摘する電田。貼り紙には既に2名のサインが記入されていた。
一つは紙左上の部分に〝Carlos〟と書かれている。もう一つは。右上の部分に〝釈快晴〟と書かれている。電田が話を続ける。
「こいつは驚いた。私らの他に、既に此処に来ているプレイヤーがいるのかい」
このタイミングで一人の女の様子がおかしくなる。その女がサインに書かれた人物の名前を確認するや否や突然叫び出し、床に膝をついて小刻みに震え出してしまったのだ。
「すみれちゃん?」
篠原すみれの異変に真っ先に気付いた電田がすみれの元へ駆け寄る。
「どうしたんだい?」
「そんな、何で、何であいつが此処に居るのよ。何で、何でさ!?」
「あいつ?」
どういう事だろうか、あいつと言ってサイン用紙を指差す篠原すみれ。2名のサインが書かれているが、どちらの人物を指しているんだ?
詳しい話を聞きたいところだが今はそれどころではないと判断した夏男は一番にサインを書き終え、すみれとすみれの肩に手を置いている電田の元へ行く。
「とにかく此処に留まっているのは危険だ。おい、デンデン。すみれさんは俺に任せてお前はさっさとサインしろ」
「お前にすみれさんを任せるって? ふん、誰が金髪ちんちくりんの言う事を聞くかよクソったれ。さ、すみれさん立てるかい?」
「ごめん」
腰が抜けてしまったすみれに肩を貸してあげる電田は、ゆっくりと貼り紙の元へ歩き出す。
そして全員がサインを書き終え、先へと続く道を見つめる。サイレンと照明に先へ進めと急かれるプレイヤーらは、互いに目で「進もう」と合図し合う。入り口が閉鎖されてしまった今、こんな所でモタモタしている訳にもいかない。
一人、また一人と走り出す。とにかく出口を見つけなくては。
全プレイヤーがエスケープルートへ侵入したのと同時にサイレンと赤色に照らされる照明が止まる。床が黒一面に広がる一本道を突き進む。
そこで女のアナウンスが再度流れる。
『9名の標的は〝ブラックゾーン〟へ侵入、9名の標的はブラックゾーンへ侵入。持ち場の者は厳重体制を整えなさい。繰り返します……』
先頭を走るのは日本刀を納めた鞘を腰にぶら下げる爾来也伊吹。その後ろに未来と青田向日葵が続く。最後方は篠原すみれと、すみれをカバーしている電田龍治と亀谷妙子。
『9名の標的はブラックゾーンへ侵入、9名の標的はブラックゾーンへ侵入。持ち場の者は厳重体制を整えなさい』
アナウンス等お構いなしと言ったところか、先頭を入る爾来也のペースは加速する。それもその筈、この密閉された空間から一刻も早く脱出しなくてはならない状況であるからだ。
勢い良く走り抜ける爾来也に待ったを入れるのは爾来也の真後ろを走る未来。
「ちょっと、お馬鹿な地雷さ……爾来也さん。そんなに速いと後ろのみんながついていけなくて逸れちゃうってば。もう少しみんなのペースも考えて貰わないと」
「貴様……我を貴様は馬鹿にまたしたな今? この無礼者め!」
腰にぶら下げる鞘から日本刀ソハヤノツルギを抜く。こんな状況だというのにこれから喧嘩でもするつもりか!?
「ま、待ってよ地雷……爾来也さん。こんな所でそんな物騒な物出さないで落ち着いてよ、ね?」
「我は至って落ち着いてるわ」
「え?」
先頭を走る爾来也の先に、黒スーツにピエロ仮面を顔に装備した2人の人物が立っている。その人物らは右手に太刀を持っている。
走りを止めない爾来也。
「そこの2人、何者かは知らないが邪魔するなら容赦はしないぞ」
両者の距離が徐々に縮んでいく。
爾来也から見て右側のピエロ仮面がポケットから通信機を取り出す。
「標的がこちらAブロックに接近中、標的がこちらAブロックに接近中。指示を下さい……はい、かしこまりました」
通信機をポケットに入れ、突然こちらに向かって走り出してきた。次の瞬間!
予想以上に足の速かった爾来也が一気に2名のピエロ仮面に接近して宙に飛んでいた。そして彼女の持つソハヤノツルギが2人の体を斬り裂く。2人のピエロ仮面が呆気なく倒れる。勝負は一瞬でキマってしまった。
前方の異変に気付いた夏男と、その後ろに鎌倉雲人と六条冬姫。ピエロ仮面が爾来也に斬られて意識を失っているのを確認する。
「どういう事だ。あの倒れてる奴等は何者なんだよ!?」
「分からないわ。どういう訳か、この脱出ルートにはプレイヤー以外の人間が多数いる模様。ちなみにあたしの今日の下着はイエローのドット柄模様★」
先頭を走る集中高めの爾来也が後方のプレイヤーに言葉を投げる。
「何者かは分からないが2人組に襲われかけた! しかし前は今のところ問題はない!」
爾来也を追い掛ける形で後ろを走っている夏男達は戸惑いを隠しきれないでいる。更に後ろを走る篠原達の様子を振り返って見てみると……
「え、あれ。おい待て爾来也!」
夏男が先頭を止めようとする。
「篠原達がついて来れてない。ちょっと待っててくれ」
夏男が引き返そうとしたところで六条が一言。
「私も行きます!」
思ったよりノロマではなかった六条と共に、姿の見えなくなってしまった篠原すみれらの元へ引き返す夏男。後方3人の姿はすぐに見つかった。が、しかし……
「篠原さん!」
夏男と六条が見た光景は、篠原すみれが倒れていて、無理に起こそうとする電田龍治と亀谷妙子の姿。
「なんだ、どうしたんだ!?」
夏男の問いに亀谷が答える。
「どうしたもこうしたもないべさ、シノが走れなくなったべ。どうしたら良いんださ」
「すまない。俺にもよく分からないんだが〝足が麻痺〟して歩く事もままならなくなってしまった」
無表情のまま電田龍治が一言。
「お前ら先に行ってくれ」
「は?」
「すみれちゃんは私が責任を持ってお守りすると約束しよう」
電田の意見に対し、夏男が反論する。
「ふざけるな。この先で何が待ってるか分からない状況なんだぞ。それに入り口が封鎖されてんだ。たった今謎の2人組が剣を持って爾来也を襲ってきやがった」
「何だと!?」
「デンデンはすみれさんに肩を貸してやれ。俺と六条と亀谷で周囲を警戒しておく。前方に居る爾来也達に追いつかないとな」
全く予想していなかった脱出ルートの内部状況に若干パニック状態になっているプレイヤーら。それにしても先程のピエロ仮面を着用した2人組みは何者なんだろうか。
夏男を初めとした5人のプレイヤーがその場で待機していた爾来也に追いつく。しかしそこで視界に入ったのは奇妙な一室。入り口ドアに〝ブラックルーム〟と刻まれている。
「爾来也さん、この部屋は何だい?」
「室内を確認してないから何も判らぬ。この先も道は通じているが、さてどうしたものか」
ブラックルームの入り口ドアをじっと見つめる夏男。そして一言。
「こいつを開けてみて、これが罠だったら以後この手の部屋には入らない。どうだい?」
プレイヤーらに同意を求める夏男。少しの間はあったがプレイヤー全員が首を縦に振ってくれた。
「よし開けるぞ」
この部屋の名前には聞き覚えがある。プレイヤーらの推理が正しければこの部屋は〝篠原由香里が昨夜に連れて行かれた場所〟であろう。ドアノブを回して入り口ドアを開ける。
すると自動で室内の電気が点いた。
「これは……」
室内入り口手前に置かれた机に一枚のメモ帳と、奥に並ぶのは幾つかの武器やら食料やら。
メモに書かれている内容は以下の通り。
〝お前達に好きなアイテムをどれでも1つプレゼントしよう。アイテムはこの先のエスケープルートで必ず必要になるであろう。しかし、アイテムの贈呈には制限があるので注意する事。所持制限は以下の通り〟
・1プレイヤーに1ポイントを与える。このポイントを使って此処にある武器や食料、その他の物をどれでも一つだけ私物化する許可を与える。
ポイント消費一覧
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★ハンドガン(弾なし)
1ポイント消費 在庫2つ
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★ハンドガンの弾
1弾1ポイント消費 在庫6弾
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★剣(種類は問わない)
1ポイント消費 在庫5本
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★ハンマー(種類は問わない)
1ポイント消費 在庫5本
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★マスターキー(秘密の部屋を開ける鍵)
1ポイント消費 在庫1つ
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★モンスタークレジットカード(助っ人登場)
1ポイント消費 在庫3枚
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★パン(5個)
1ポイント消費 在庫30個
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★500mlミネラルウォーター(5本)
1ポイント消費 在庫30本
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★バメガンテ(特別魔法・博打アイテム)
3ポイント消費 在庫1つ
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★K244ピアス(黒幕サイドの証・黒幕サイドに転職)
2ポイント消費 在庫3つ
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★特等席(安全な情報空間へご案内)
1ポイント消費 在庫0
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〝以上の内容でエスケープルートに役立つアイテムを揃えてある。制限ルールさえしっかり守れば後は上手く使ってもらって構わない。この手のダンジョン系には所持アイテムが重要といえよう〟
何だこの一方的な言い分は!
・報告
来月から更新ペースが速くなる予定です!




