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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―プロローグ― 脱出(本章)
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第三十一話 『 零日目 』


 物語は、今作の主人公が見知らぬ部屋で目覚めるシーンから始まる。


 彼は目を開いた。見たことの無い天井、紫色の天井がぼやけて見てる。ベッドで横になっている彼の名前は〝神崎カンザキ夏男ナツオ〟だ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今作の主人公 神崎カンザキ 夏男ナツオ(15)

 男性 身長167cm 体重59kg

 将来の夢は名探偵になる事

 何かと事件に巻き込まれる事が多い

 金髪に半ズボンとサンダル、クロスピアスが特徴

 ※30人目の被験者(初登場)

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「此処はどこだ?」


 ゆっくりと体を起こして辺りを見渡す。此処は彼の知らない部屋のようだ。彼が一番最初に気になったのは、部屋に置いてある多種フルーツの入れられたカゴ。次に入り口のドア。床は赤色のコンクリート。部屋の窓は見当たらない。


「えっと、何で俺は此処に居るんだっけ。えっと……」


 此処は個室のようだが、他の部屋は見当たらない。つまり、この場所には誰も居ない事になるのだが。人の家を勝手に留守にして大丈夫なのかと思いながら、部屋の出口に向かう。此処に来た経緯を覚えていない彼にとって、何も覚えていない状況に居ても立ってもいられなかった。


「あ、俺の靴」


 玄関に置いてあるのは彼の靴。綺麗に置かれている。


「マジで何でこんな所で寝てたんだ?」


 綺麗に整頓された自分の靴を見て、更に不安が積もる。部屋を振り返ってみる。


 しばらくしてからある事を思い付き、それを実行する。さっそく必要な物を探してみる。探し物は紙とペン。どちらも部屋の机に置いてあった。自分の連絡先を書いて、メッセージを部屋の机に置く。


「えーっと……勝手に部屋から出る事をお許し下さい。一応時刻も書いておくか」


 メッセージを書き終えた夏男。その間無音が流れる。描き終えると一つため息をつく。そこで〝ある音〟に気付いた。時計の針が動く音だ。時間は午前後不明7時16分。


 再度部屋を見渡す。どうやら自分のカバンを探しているようだ。しかし、部屋中を探してみても、この部屋に夏男のカバンは無い。他にも財布や携帯電話、腕時計が無くなっているのに気が付いた。


「ポケットには何も入って無い」


 更に不信感に仰がれ、慌てて出口へ早歩きをする。


 ピーンポーン インターフォンが鳴る。

 思わず足を止めてしまう。足音を立てないようにゆっくり出口ドアへ歩く。


 ピーンポーン。2度目のインターフォン。ドアスコープで訪問者を確認してみる。ドアスコープ越しに立っているのは黒髪の女性。やはり夏男の知らない人物。とその時、今度はドア越しから黒髪の女が言葉を投げてきた。


「すみません?――どなたか居ませんか?」


 知らない人の家だぞ。俺が勝手に対応して良いのか?


「すみませーん?」


「はい?」


「あ、すみませんこんばんは。気が付きましたね!」


「どちらさん?」


「えっと……」


「此処の部屋主と知り合いとか?」


「いえ、そういう訳では」


 鍵を開け、ドアを開ける夏男。


「すまない姉ちゃん。此処は俺んちじゃないんだ」


 外を見てみると、何故か学校の廊下のような場所。


「え、学校?」


 慌てて廊下へ出る。彼の目に映ったのは、学校の廊下と、その先に見える大広間。不気味な赤色の壁や、至るところに打ち付けられた釘。奇妙な絵が描かれた壁がちらほら。彼の出て来た部屋と同じ部屋の入り口ドアが幾つも存在し、見知らぬ連中が部屋の片っ端からインターフォンを押して回っている。


「え、此処は何?」


「やはりご存知ありませんでしたか」


「目が覚めたらこの部屋のベッドに横になっていて、此処に来た経緯を何も覚えていないんだ」


「そうですか」


「悪いけど、そういう訳だから此処の部屋主は留守だからよ」


 やっぱり外も見覚えの無い場所のようだ。此処はどこかの建物内か。


「〝私達〟もですよ」


「え?」


「私も目が覚めたら、向こうの廊下にある部屋で眠っていたみたいで此処が何処なのか分かりません」


「は?」


「所持品も無くなっていました。誰かに連絡を取ろうとも取れないですし……部屋にこんな物が置いてありました」


 黒髪の女が手に握っていた紙を夏男に見せる。以下その内容。


 『命懸けの脱出ゲームをしよう。ゲームの詳細は午後8時にプレイヤー全員に伝える。部屋の外には君を殺そうと企む連中がいるかもしれない。訪問者には特に気を付けて』


「へぇ。随分と気味の悪い手紙を貰ったものだね」


「今この廊下にいる皆さんも同じ状況です。何とか全員を部屋の外に出して、この場所を知っている方や、事情を知っている方を探して回っています。ですが皆さんなかなか部屋から出て来てくれません」


 自身が眠っていた部屋へ引き返す夏男。再度部屋全体を見渡す。何か嫌な予感がしたのか、何かを発見したのか、部屋に置かれた机の前で足を止める。盛り沢山のフルーツが置いてあるカゴをどかすと……


「なるほど、こっちにも同じ内容の手紙が置いてある」


 メッセージと一緒に【IDカード】と見た事の無い機械が置いてある。その機械は携帯電話サイズで、画面を指で触ってみると【電子手帳030号】と表示され、その下に被験者『神崎カンザキ夏男ナツオ』と表示された。


「何だよこれ、被験者とか悪趣味な手紙をくれたもんだな」


「やはりこの部屋にも同じメモ書きが置いてましたか」

 玄関口から黒髪の女。


 先程神崎の眠る部屋に訪ねて来た黒髪の女は【篠原由香里】と名乗る。夏男とは初対面の人物のようだ。


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 重要人物 篠原シノハラ 由香里ユカリ(15?)

 女性 身長160cm 体重48kg

 【戦場むくろ】の偽名を使っていた

 桜ヶ丘学園襲撃事件を起こした張本人

 黒髪と地味な服装であまり目立たない

 10人目の被験者(第五話初登場)

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 以下神崎夏男と篠原由香里の会話。


「こんな所で油を売ってても仕方が無い。この手紙の事は忘れて、みんなも同じ状況ならさっさとこんな場所出よう」


「そうですね」


 1人1人の個室に訪問する連中。個室を回っている人らは、ざっと数えて7人。中には部屋のドアを叩いて室内に居ると思われる人物らを無理矢理引きずり出そうとしている人まで。


「あいつらは何してるんだ?」


「それは……」


「あんなに焦ってさ。人を集めようとしてるのか?」


「…………」


 適当に大広間を巡回してみる。さっそく見つけたのは閉まったシャッター。その近くに受付窓口がある。シャッターが閉まっている事を確認してから次の出口を探す二人。


「イタズラにしてはちょっとやり過ぎだよな」


「そうですね」


 建物内の捜査を続ける。通り過ぎたのは『ダイニングルーム』と案内書きされた部屋。その先に2階へと通じる階段の案内を見つけるが、シャッターが閉められていて先には進めないようだ。


 ――探索時間は10分弱。気が付くと大広間を一周していた夏男と由香里。この状況に夏男は……


「出口が見当たらない」


「そうなんです。先程私も色々と探索をしていたのですが、出口らしい場所が見当たらないのです」


「でも完全に出れないって訳でもなさそうだな。あそこにシャッターで先に進めない通路がある。傍に受付の窓口もあるし、シャッターの隙間から風が吹いていた。恐らくあの先が出口だろう」


「そうですね。もう一つシャッターで先に進めない場所がありますが、その先は二階へと続く階段のようですね」


「あいつらも自分の状況を理解した上でこの建物内に居る人間を集めようとしてるって訳か」


「はい」


 ――出口と思われるシャッターを無理にこじ開けようとする1人の男。その人物に近づく夏男。


 さっそく声を掛けてみる。


「手伝うよ」


「おう有難い。1、2、3でいくぞ」


 二人で協力して、シャッターをこじ開けようと力一杯引っ張ってみる。が、びくともしない。


「ぴくりとも動きませんね」


 閉ざされたシャッターを蹴ってみたり、殴ったり引っ張ったり押したりと試行錯誤を繰り返す。が、やはり何をしてもびくともしないようだ。


「出口は此処で間違いないだろう。それがこうも厳重に閉ざされた状況となると……篠原さん。此処の部屋の個室は鍵が閉まっている部屋以外全て確認したかい?」


「いえ、私が確認したのは〝ランドリー〟と〝ダイニングルーム〟の2ヵ所です。他は鍵が掛かっていましたが、まだ調べていない所となると……」


 鍵が掛かっているか開いているかも確認していない部屋。それは〝ラビッシュ〟と書かれた部屋だった。


「ラビッシュ……ゴミ捨て場か何かかな」


「君達は下がりたまえ。私が開けよう」


 先程出口に繋がるシャッターを一緒に開けようと協力した男が、夏男達と行動を共にする。彼の名前は……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 青葉アオバ 博文ヒロフミ(41)

 男性 身長168cm 体重61kg

 辛口で生徒に恐れられている鬼教師

 過去に息子と妻を亡くしていて、自殺願望がある

 〝生徒は疑うことより信じること〟がモットー

 14人目の被験者(第一話初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「駄目だ。鍵が掛かっている」


「そうですか」


「私はまだ食堂を調べていない。私なりに何か手掛かりが無いか調べてみるよ」


「同行しましょう。俺も食堂の中の様子を見てみたい」


「私はまだ何か手掛かりになる情報が無いか、此処に居る人達に聞いて回ってみます」


 夏男と青葉は食堂へ向かい、別行動する篠原は他の人物らに話を聞いて回る。


 次第に焦りを隠し切れなくなっていく三人。絶望的なこの状況はそれよりも絶望的で、想像以上に手の込んだものである事に気付き始めたからだ。


 ダイニングルームへ入室する夏男と青葉博文。中央に大きなテーブルが置かれている。十人二十人はテーブルを囲んで食事が出来る程の大きさ。


「普通の食堂ですね?」


「みたいだね。此処は宿泊ホテルのような場所なのか?」


「その線は高いでしょうが、今は違うようですね」


「ああ」


 見るからに食堂。ごく普通の食堂。ただ一点を覗けば……


「壁に落書きがありますね。これは鬼の絵でしょうか」


 先程大広間の至る所で目にした、不気味な赤色の壁や至るところに打ち付けられた釘、奇妙な絵が描かれた壁が広がっている。


「子供のイタズラにしては、ちとやり過ぎてるな」


「はい。――あれ、奥にも部屋があるみたいです」


 二人が食堂内にある奥の部屋を確認しようと歩き出した、その時!


「きゃあああああぁぁぁぁ!」

 女性の悲鳴が響き渡る!


「何事だ!?」


 急いで悲鳴の聞こえた場所へ向かう夏男と青葉。――そこで目にしたのは!


 ナイフを振り回しながら怒鳴っている一人の女と、その場で倒れ込むもう一人の女。ナイフを持った女を止めようと、彼女を囲む人達。


「ぎゃあああぁぁぁウチに寄るんじゃねぇ、刺されたいのか!?」


「い、嫌やめて下さい!」


 よく見ると倒れ込んだ女は篠原由香里ではないか。周りに居る人達がナイフを振り回す女に言葉を投げ掛ける。


「落ち着いて下さい!」

「お願いだからナイフを置いてくれ!」


「うるせぇイカレ共。こんな所に閉じ込めやがって。飽きたらウチを殺すつもりなんだろう。殺される前に殺さないと……ウチは死にたくない!」


 ナイフを持つ女は、個室の入り口前でナイフを片手におかしな言動を繰り返す。何とかして篠原由香里を救出しなくては!


 殺意丸出しの女が暴れ狂う


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