22.祈り
♪〜♪〜
大好きなアーティストの曲が流れた。
「電話だ…」
部屋で雑誌を読んでいた私は持ち物を雑誌から携帯に持ち換え画面を見る。
(翔ちゃんだ…)
私は変な緊張感から唾を飲み込んだ。
私は雄也と別れて以来彼氏はできていない。
別にこれと言って好きな人もいないだろう…多分。
でもあれから翔ちゃんのことが気にはなっている。
3年間同じクラスだし翔ちゃんの行動を目で追ってしまう。
好きなのかな。
ってか翔ちゃんは相変わらず人気があるようで同学年だけでなく、後輩からも何度かアプローチを受けたらしい。
全く。
私は一呼吸おいて通話ボタンを押す。
☆
「もしもし」
『お、こんばわ』
「こんばんわ。どうしたの?」
『いや、大した用はないんだけどさー』
「じゃ切るね」
『…相変わらず突き放すねー』
「冗談だよ。いよいよ明日だね」
『だなー。とうとう来たなー』
「応援行くから絶対勝ってね!」
『たりめーよ』
「負けたら?」
『…負けない』
「言うねー。さすが赤川くん」
『だろ?』
「…調子に乗らないの」
『へーい』
「生意気な」
『あのさー、お願いがあんだけど』
「何?」
『…あの、そのー…実に照れ臭いというか、キモイというか』
「…そのモジモジがちょっとキモイかも」
『うぉい!』
「嘘嘘。お願いって?」
『……頑張れって言って』
「…」
『…』
「無理」
『言え』
「ガンバレ」
『カタコトかーい』
「はは。…頑張れ翔ちゃん!」
『…』
「聞いてんの?」
『茜が好きなんだ』
「はい?」
『茜が好き』
「どうしたの?急に…?」
『…返事は大会が全部終わったら聞かせて。んじゃおやすみ』
「ちょ…翔ちゃん!?」
『―――』
「…」
☆
あれは告白?
翔ちゃんが私に告ったの?
頭の整理がつかなくて私の思考回路がこんがらがっている。
そんなときは我等が親友のお言葉を。
『もっしー』
「あ、美希ちゃん?」
『あたしの携帯に掛けてんだからあたしに決まって…』
「翔ちゃんが私の事好きって…」
『…』
「…」
『あらー。茜もモテるんだねー』
「真剣なんだけど」
『…茜が翔ちゃんをどう思ってるかじゃない?あたしが付き合うなって言ったら付き合わないの?』
「いや、そういう訳じゃ…」
『茜の気持ち次第だよ。あたしはあんたらお似合いだと思うけどね。…ぶっちゃけ茜は好きなんでしょ?』
「ん〜…」
『茜は正直者だからすぐわかるんだけどね。ま、まずは明日、翔ちゃん達を応援してあげなきゃだよ』
「…うん」
『赤川翔一郎は好きな人の前でカッコいいとこ見せれる男だから、きっと明日は活躍して勝ってくれるよ』
「うん…」
『分かったんなら良し。健闘を祈る!』
「何か変な感じだけどありがとね」
『何かおごれよ』
「…嫌」
『このっ…!』
☆
続きを聞かずして強制終了。
…翔ちゃんの事は好き。
うん。
何か一緒に居て楽しいし何でも言える。
私の気持ちを美希ちゃんと同じくらい分かってくれる。
こんな人が彼氏ならいいなってどこかで思ってた。
ふざけあっててもいざと言う時はとてつもなく頼りになる。
私なんかじゃ勿体無い気もする。
でも他の子と付き合ってたら何かヤダ。
…わがままだな私。
翔ちゃんはわがままな私も分かってて好きなのかな。
とにかく、明日は翔ちゃん達が勝てるように一生懸命応援しなきゃ。
(明日は絶対翔ちゃん達が勝てますよーに!)
私は手を合わせ夜空の星たちに願った。