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Someday  作者:
15/26

14.お酒のチカラ


「よっしゃ!」


急いで赤川くんの部屋に駆け込んだ、というか滑りこんだ私達はすぐに扉を閉めた。

部屋の中には黒の長袖シャツに紫のハーフパンツを身につけたラフな赤川くんがいた。


「さすがバレー部。マサのトスを上手くレシーブしたな」


「今頃あたしの打ったスパイクが相手コートにボールがめり込んでるな」


美希ちゃんの力なら考えられなくもない。


「やっぱり杉くん知ってて…」


「俺が言ったら協力してくれるって言うからさー」


赤川くんは冷蔵庫から缶の飲み物を取り出した。


「いる?」


「あら、もちろん」


美希ちゃんの顔はそれを見た途端、笑みが溢れた。


「ちょ…私達まだ15歳だよ!」


「いいのいいの。こういう時は15も20も変わんないわよ」


いや変わるだろ。

美希ちゃんは赤川くんにもらった缶チューハイを勢い良くあけ喉を潤す。


「だはー!こりゃうめぇ!」


オヤジ?

美希ちゃん本当はいくつなの?

私が心の中で問いかけている間に美希ちゃんはもうもらった缶チューハイを飲み干していた。


「飲みっぷり最高だな」


「も〜一本持ってこ〜い」


たまにしゃくりあげている美希ちゃんはすっかり出来上がってしまっていた。

二本目も豪快にあけ飲み始める。


「宮城さんは?」


飲めないんだけど…やっぱ飲んだ方がいいのかなぁ。


「飲め!茜が飲まなきゃ誰が飲む!」


あんただろ。

とっくに目がすわってしまっている美希ちゃんは、酔っ払うと何だか色っぽく見える。


「んじゃ宮城さん梅酒から行こかー」


「はーい」


そう返事すると赤川くんは笑みを浮かべ私に緑色の缶をくれた。

タブを起こすと炭酸が少し抜けたような爽やかな音と共に微細な水滴が飛んだ。

私はそれを一口飲む。


「…うまーい!」


「あら茜、お酒も飲んだ事なかったの?」


「ビールならお父さんに飲まされてあるけど、苦くて無理だぁ」


「まだカクテルとかあるからさ」


赤川くんはそういって赤や黄色の缶を次々に取り出した。

お酒のせいか私もすっかり酔ってしまっていた。


「そだ!夏にみんなで海とか行こーよ!」


泥酔とまではいかないが、相当酔った美希ちゃんがそんな話を持ちかけてきた。


「みんなって?」


「ん〜…あたし、茜、翔ちゃん、まっちゃん?」


ちなみにまっちゃんとは杉くんのこと。


「いつものメンバーじゃん」


「いーじゃん。もちろんお泊まりで」


酔っている美希ちゃんがウインクをすると余計に綺麗に見える。

しかし赤川くんとか男子は美希ちゃんの魅力に気付かないのかなぁ。

そんな綺麗な美希ちゃんを見ても赤川くんは呆れ返ったようにため息なんかついてるし。


「いや、しかし泊まりはそれなりにヤバいんじゃね?」


「そーよねー。翔ちゃんとまっちゃんが、いつあたしを襲いにくるか心配よね…」


「いや、むしろ逆じゃね?」


「茜は何としても守るからね!」


「……頼りにしてます」


異性との宿泊なんてウチの親が許すわけがない。

でもそんなことは今の私達には考えもつかなかった。


『消灯ー。消灯ー。生徒達は速やかに就寝することー』


あ、緑ちゃん。

もう消灯か。


「他のみんなは?」


「あー多分…麻雀だろ」


おい。

突っ込みどころ満載な男子達だな。

まず15、16の子供が麻雀するなよ。


「んじゃここでお泊まりの予行演習ってことで」


「なっ…美希ちゃん何言ってんの!」


「それに見回りがいっぱいで戻れないし。あたし達の事はちゃんと手、打ってあるから」


そう言って美希ちゃんは携帯を私に見せた。

なるほど。

今の世の中はこうも便利に、ってそんなんでいいのか?

あれこれ悩んでいると緑ちゃんが各部屋を見回りに来ている声がした。

それも既に隣の部屋まで終わったようだ。


「就寝だー。寝てるかー」


私達は咄嗟にお酒の缶を隠して電気を消し、自分達は近くの布団にくるまった。



暗闇の中、私の首筋に暖かくてお酒臭い吐息があたる。

美希ちゃん?

いや美希ちゃんであってほしい。

これが赤川くんならとんでもないことになってしまう。

お酒で熱った体がより一層熱を帯る。



今までこんなにドキドキして布団を被ったことはなかった。




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