Julietta
幻想的な月の光りが夜の絨毯に揺らめいている。
少しだけ開いた出窓からは月の灯りがそっとこぼれ入ってくる。
ベッドの横に立っているウォーターボトルに透けていて、美しい。
ゆっくりとベッドから起き上がって、シルクの生地の上に柔らかい上着を羽織りボトルをかたむけた。
「綺麗…」
半分まで入れたグラスはそのままに、私は出窓の傍に腰を下ろす。
貴方の居る夜は愛おしい。
甘くて優しくて暖かい。
だけどどうしてだろう。
貴方の居ないこんな夜は、切なくて仕方がないの。
苦しくて冷たくて寒々しい。
あんなにロマンティックな月夜でさえ、狂おしいくらい。
白く細い左手には、月の光りがこぼれおちたかのように優しい指輪がかかっている。
私はそっと左手を唇へ持っていき口づけた。
愛おしい貴方を想って愛しい口づけを…
薔薇は薔薇と云う名がなくとも気高く美しい。
愛せない理由は溢れていて、愛する理由はたった一つ。
愛おしい貴方を想い、そっと月に問い掛けた。
「どうして貴方は…」