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この村、全員ラスボス経験者でした。 〜もう二度と世界を救いたくない元最強たちのスローライフ〜  作者: にる


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数えない癖

朝、目が覚めたとき、鐘はまだ鳴っていなかった。


早いのか。

遅いのか。


分からない。


分からないまま、体を起こす。


布団を畳む。

端が、少しずれる。


揃えようとして、やめた。


昨日から、

やめることが増えている。


外に出る。


空は明るい。

でも、音が薄い。


足音が、いつもより響く。


一歩。

二歩。


数えかけて、止める。


止めるのが、前より自然になっている。


畑に向かうと、ガイルがいた。


今日は鍬を持っていない。

代わりに、畝の間を歩いている。


歩幅が一定。

速度も一定。


昨日と同じ。


「今日は、掘らないんですか」


ユウトが聞く。


ガイルは立ち止まらない。


「今日は、見る日だ」


「……見る?」


「動かないと、分かることがある」


それだけ言って、少し先へ行く。


ユウトも、同じ速度で歩いた。


並ぶ。

でも、追いつかない。


距離が、一定。


不思議と、落ち着いた。


昼前。


宿の裏で、アーシャが干し物をしている。


布が揺れる。

揺れ方が、ばらばら。


「今日、風変ですね」


ユウトが言う。


「そう?」


アーシャは首を傾げる。


「昨日も、こんなもんだったよ」


昨日。


その言葉に、少し引っかかる。


でも、確かめない。


「……そうかも」


曖昧に返す。


アーシャは、それ以上追わなかった。


追わないのが、最近多い。


午後。


鍛冶場の前を通る。


ドラムが、地面に何かを並べている。


石。

木片。

古い金具。


規則性は、ない。


「それ、何ですか」


「選別」


短い。


「使えるかどうか」


「見た目じゃ、分からないですね」


「だから、触らない」


ドラムはそう言って、手を引いた。


ユウトも、触らなかった。


触らない理由を、

言葉にしない。


夕方。


広場を通る。


人はいる。

でも、集まっていない。


二人。

三人。

それぞれ、別の方向。


視線が、合う。


すぐ、逸れる。


逸れ方が、揃っている。


偶然だと、思いたかった。


思うのを、やめた。


夜。


部屋に戻る。


床に座る。


昨日、消えた線のあたりを見る。


何もない。


ないはずなのに、

そこだけ、冷たい。


指を伸ばして、

触れる前に、引っ込める。


触らない。


今日は、それでいい。


横になる。


天井を見る。


木目が、交差している。


交点が、少し歪んでいる。


前から、そうだったか。


分からない。


分からないまま、目を閉じる。


呼吸が、浅い。


一回。

二回。


三回目を、数えない。


代わりに、

胸の上下だけを感じる。


外で、風が鳴る。


強くない。

弱くもない。


一定じゃない。


それが、

今は、心地いい。


ユウトは、そのまま眠った。


夢は、見なかった。


正確には、

見た気がするが、残らなかった。


朝、思い出そうとして、

やめた。


数えない癖が、

少しずつ、体に残っている。


理由は分からないが、

数え続けてしまうと何かを引き受けてしまう気がした。


この村で生きるには

悪くない癖だと、なんとなく思った。


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