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壊れた姉の見守り方  作者: 朝露 あじさ(Asatsuyu Ajisa)
第1章「優等生だったはずの人」
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【第2話】「信じていた、強い人」

高校を卒業してから、私たちは別々の道を歩んだ。


私は地元の中小企業に就職して、通勤に時間をかけながらも、なんとか社会に馴染もうと必死だった。

お姉ちゃんは都市部の大学に進学し、そのまま就職して、ちゃんと“キャリアウーマン”の階段を登っていた。


年末年始に実家に戻ってきたときも、

姉は都会的な服を着て、淡いピンクのリップをつけていた。

私よりもずっと大人に見えた。


「会社、楽しいよ。まだ覚えることはいっぱいあるけど、先輩が丁寧で」


そんな言葉を笑顔で言えるのが、さすがだなって思った。


私は疲れ果てて、家ではほとんど喋らなかったから。

「辞めたい」とは言わないけど、「楽しい」なんて口にできるほど余裕もなかった。


やっぱり、しづきは違う。

“私より、なんでもできる人”って思いは、社会に出ても変わらなかった。


……だから、連絡が来たとき、私は一瞬、何かの冗談かと思った。


会社から電話がかかってきたのだ。姉の勤務先から。

名前と所属部署を告げられ、私は一気に緊張した。


「お姉さんが、少し取り乱されていまして……

 今、お仕事ができるような状態ではなくて、ひとまずご家族の方に連絡をと……」


声は穏やかだったけれど、その下にある“異常事態”の重さが、じわじわと伝わってきた。


“取り乱している”って、どういうこと?


しづきは、そういう人じゃない。


しっかりしていて、頭の回転も早くて、

人に迷惑をかけることを一番嫌うような人だった。


電話のあと、私はずっと震えていた。


このときの私はまだ、現実を信じていなかった。


きっと何かの誤解か、少しだけ疲れてるだけ。

それが治れば、また“できるしづき”に戻るんだって。


だって――

“あのお姉ちゃんが壊れる”なんて、

本気で、思ってなかったから。

『壊れた姉の見守り方』

第1話〜第5話まで、一挙公開しています。


以降は、毎日21時頃の更新予定です。

……たまに忘れるかもしれないので、やさしくツッコんでいただけたら嬉しいです☺️

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