表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れた姉の見守り方  作者: 朝露 あじさ(Asatsuyu Ajisa)
第4章『そして、私の日常が壊れた』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/39

【第27話】「二度目のお願い」

その翌月、姉からLINEが届いた。


『また、ちょっとだけ…お金、貸してもらえるかな?』


文章は短くて、まっすぐだった。

けれど私の背筋に、冷たいものが走った。


え? もう次?

返してもらったばかりじゃなかった?

この前は閑散期って言ってたよね?

今月はもう大丈夫って思ってたのに。


戸惑いが頭を支配して、即答できなかった。


――まさか、これが“また繰り返す”ってことなの?


返金できていたことが、逆に安心の材料になっていた。

だから、油断していた。

生活の回復も、精神の安定も、

ほんの一瞬だけだったのかもしれない。


姉に理由を尋ねると、「今月は体調を崩して会社を何日も休んでしまった」と言った。

倒れてしまったから、収入が減ったと。


その言葉に、私は返すべき言葉を失った。


つい先月、お金を貸したばかりだった。

閑散期でシフトが減ったと言っていたが、今月は普通に働けているはずじゃなかったの?

先月は「来月からは返していく」って言っていたのに……。


「えっと……まず、今どんな状況か聞いてもいい?」

私は慎重にLINEを返す。


「収入の入金額と、毎月の出費、あと通帳の写真とか……」

──妹としても、お金の流れが見えなければ判断できない。


姉からは意外と素直に、数枚の画像が送られてきた。

手書きの家計簿のようなメモと、通帳の残高画面の写真。


家賃、電気ガス、水道、携帯、食費、病院代。

そして──やけに高いタバコ代。

通帳には「○○カード」や「△△クレジット」の引き落としが並んでいる。


「ん……クレカ使いすぎかな。でも今どき、現金派の人も少ないし……」

私は一人で納得しようとしていた。


──でも、どこか胸の奥がざわついていた。


念のため、私はいつも相談しているAIに聞いてみることにした。

通帳の入出金の一部を入力し、家計の状態を質問する。


すると数秒後、冷静な文章で返ってきた。


**『キャッシングやリボ払いで生活費を補填しているようです』**


「……え?」


私は、思わず画面を見直した。


**リボ……?**

リボ払いって……あの“借金地獄”みたいな、あれ?


**『複数のクレジット会社からの引き落としが毎月続いており、

支払額が一定であることから、リボ払いを利用している可能性が高いと推測されます。』**


「……そんな……」


私は、心臓を掴まれたような感覚に陥った。


さっきまで「タバコ高いな」とか「食費もう少し抑えれば」とか、

のんきに見ていた自分が、急に愚かしく感じた。


だって──

現金はない。

でも買い物はしている。

その差額を、リボ払いで補っていたとしたら……?


そして、さらにAIは淡々と続けた。


**『このままでは借金が雪だるま式に増える可能性があります。

支援を続ける場合は、返済計画を立てるか、支出制限の協力を要請することをおすすめします。』**


「……嘘でしょ……」


目の前が、じわじわと冷えていく。

姉がまた病状を悪化させたわけじゃない。

けれど──**“違う形で壊れていた”**。


私は、まだ信じたかった。


「違うよね?ちゃんと返すって言ってたし、タバコ代だって気晴らしかもしれないし……」

心の中で、必死に擁護する自分がいた。


**『それなら、お姉さんは大丈夫ですね』**

AIは、もし私がそう言えば、そう答えるだろう。


でも。

私は、もう知ってしまったのだ。


──姉の生活は、すでに破綻している可能性があることを。


そして、それを最初に教えてくれたのは──**私の目ではなく、AIだった**。

次回は、毎日21時に更新予定です。

お気に入りや評価をいただけると、とても励みになります。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ