表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壊れた姉の見守り方  作者: 朝露 あじさ(Asatsuyu Ajisa)
第1章「優等生だったはずの人」
2/13

【第1話】「私より、なんでもできる人」

「月森しづきさん、すごいですねぇ!やっぱり頼りになります!」


姉の名前が呼ばれるたびに、誰かの賞賛が続く。

小学生の頃から、そんな光景を何度も見てきた。


成績はいつも上位。

学級委員や部長にも、自然と選ばれる。

運動会ではリレーの選手に選ばれて、ゴールを駆け抜ける姿がまぶしかった。


そんな姉と、私は双子だ。


だけど、まるで違っていた。

運動神経も、テストの点も、発言の説得力も。

姉の隣にいるだけで、私は“比べられる側”になった。


「妹さんも双子なんだよね?しづきちゃんとそっくりなのに、不思議だよね〜」


笑いながら言われるその言葉に、何度も「そっくりじゃないよ」と思った。

似ているのは顔のつくりだけで、私たちの中身はまるで別物だった。


でも――

私はお姉ちゃんが嫌いじゃなかった。むしろ好きだった。


勉強の仕方を教えてくれたり、

忘れ物をした私を庇ってくれたり、

「しょうがないなー」って笑う顔が、ちょっとだけ大人びて見えた。


ある日、リビングで姉が英語の参考書を広げていた。

ペンを走らせる音が、静かな部屋に心地よく響く。


私は隣で、同じ単語帳を開いて真似してみたけど、

頭に入ってくるのは最初の3つくらいまでだった。


「ひな、音で覚えるといいよ。アルファベット読むより、口で言った方が残りやすいから」


そう言って姉は、私のノートにふりがなを書いてくれた。

さりげなく、でもすごくわかりやすかった。

私はただの“真似”しかできなかったけど、

お姉ちゃんは“人に教えられるほど分かってる人”だった。


私は、お姉ちゃんみたいになりたかった。


でもなれないことも、知っていた。


だから、私はいつのまにか「見上げる側」になっていた。


努力しても届かない、

手を伸ばしても、すり抜けていく光。


月森しづきは、

私より、なんでもできる人だった。


……あの日までは。

『壊れた姉の見守り方』

第1話〜第5話まで、一挙公開しています。


以降は、毎日21時頃の更新予定です。

……たまに忘れるかもしれないので、やさしくツッコんでいただけたら嬉しいです☺️


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ