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壊れた姉の見守り方  作者: 朝露 あじさ(Asatsuyu Ajisa)
第3章「守るって、なんだろう」

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【第17話】「保護されたその場所で」

その後、警官に案内され、保護室へと通された。


しづきは、そこにいた。

椅子に座り、壁を向いて、何かをぶつぶつと呟いていた。

まるで、見えない相手と会話しているように。


「……あっ、それじゃない……いや、でも、そうかも……ふふ……」


私は、その姿を見て凍りついた。


「しづき……?」


声をかけても、彼女は反応しなかった。

ぶつぶつと続けていた言葉は、徐々に変化し、やがて――


「ちがうってば。あんたは“こっち”でしょ? あーもう、うるさい!」


まるで誰かと言い合っているような、激しい口調が混ざってきた。


私の知っている姉じゃなかった。

明らかに、“おかしくなってしまった人”のそれだった。


「妹さん、こちらへ」


別の警官に声をかけられ、私は保護室を後にした。


その後、警察から

「スーパーの入口で明らかに不審な挙動をしていたため、通報があった」と説明された。

さらに、麻薬使用の可能性を考慮し、麻薬捜査官の立ち会いで現場検証を行うことになった。


私は、しづきと一緒に警察の車に乗せられ、スーパーへと向かった。

後部座席には、捜査官も同乗していた。


車内で、彼が私に小さく話しかけてくれた。


「お姉さん、確かに異常な言動をしてましたが……あれは薬物ではない気がしますね。症状の出方が違う」


そう言ってくれたことが、少しだけ救いだった。


スーパーに到着すると、

すでに数人の警察官が、姉の車の周囲で検証を始めていた。

念入りに車内を調べていたが、予想通り――麻薬や違法物品は何も出なかった。


「精神的な疾患の可能性が高いと思います。

病院での受診、可能なら入院を検討された方が……」


一人の警察官が、申し訳なさそうにそう告げてくれた。


帰り道は、私が姉の車を運転した。

助手席では、しづきが静かに外を見つめていた。

けれど、時折、何かに向かって微笑んだり、目を細めたりする。


私は一睡もできない覚悟をして、見守る決意をした。


鍵はすべて私が預かることにした。

もう、姉を“どこかへ行かせる”わけにはいかない。


明日、病院へ行く。

これ以上は、もう――私一人では無理だ。


帰り道の信号待ち。

私はハンドルを握る手に力を込めながら、心の中で強く願っていた。


「どうか、明日は……無事に、連れていけますように」

次回も、毎日21時の更新予定です。

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最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。

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