帰正
「う…。」
次に私が目を覚ますと案の定、あの街に戻っていた。
今は、雨が止んでいる。
しかしまだ暗い。
ただ昼間である事は、間違いなかった。
「これで、戦えってか?」
私は、乳母たちに持たされた錨と鉄砲を見つめる。
詳しくはないが───
私は、鉄砲の事など知らないハズなのにこれが左手用だと分かる。
だから鉄砲を左手に構えた。
残る右手に錨を握りしめる。
「ふん!!」
とりあえず錨を振り回してみた。
重さ500kgを軽く超えるハズの鉄の塊を私は、簡単に振り回す事ができる。
信じられないことに。
「ど…ぉ……せいッ!!」
今度は、鎖を長めに持って両手で振り回す。
持っていた鉄砲は、背中の帯に突っ込んだ。
「うお!」
石畳に叩き付けた錨は、勢い良く炎を噴き上げる。
どうやら何か機械が付けられているみたいだ。
ちっとも仕組みは、分らないけど。
(これが「仕掛け武器」だ。)
ふと誰かが頭の中で、そう囁いたような気がした。
「■■■■■■■■■■ォォォー!!」
私が暴れる音を聞き付けてゾンビたちが集まって来た。
前回の犬と違って今度は、人間のゾンビだ。
でもやっぱり顔は、ヘルペスだらけで病的に崩れている。
「■■■■■■■ァ■!!」
「■■■■■■■■■■ッ!!」
「■■■■!!」
「おいおい、人数多いって!!」
すっかり敵に囲まれた。
でも今回は、ちゃんと武器がある。
「死ねッ!」
私は、錨を振り回し、ゾンビたちを叩きのめす。
動きがのろいから簡単だった。
「あはは…っ。」
ああ、やっぱり殺しは、楽しい。
憎らしい連中を血達磨にすると爽快だ!
私は、この罪深い官能に痙攣するような多幸感を覚えた。
しかし楽しいのは、数秒のことだった。
ゾンビどもは、農業用フォークや鍬、円匙で武装していた。
中には、長い鉄砲を持っている奴までいる。
私がゾンビ一人を挽肉にする間に鉄砲が3~4発当たる。
鋭いフォークの爪や円匙の刃が私を激しく突く。
「痛い、痛ッ!
や、やめてッ!!
やめッ……畜生ッ!!」
私は、石畳の道に倒れこむ。
そこにハンマーや鍬が振り下ろされ、私の灰色の脳ミソが石畳に零れた。
「が…あああッ!」
倒れた私の上に次々と攻撃が降り注ぐ。
それは、いつ終わることなく続き、ゾンビどもは満足するまで離れなかった。