【魔法少女 セキ 出撃せよ!】
セキ ニシヒトの手元には、一通の合格通知があった。
そこに書かれていたものは・・・?なんと、あの・・・
「超最先端 高度職業人 養成大学」
からのものであった。
「ほんまに受かったんか・・・・・!?いや、、、マジかいや!?」
セキが震える手で、わななきながらも見つめる、その合格通知に記された、かなりガチめの明朝体で記された本気の大学名。
そして、その仰々しい名前からして、セキは未来のエリートコースへの最短距離、まさにワープを成し遂げてしまったのでないかという高揚感を感じたのだ。
と同時に、少し信じられないような背徳感が、セキの背筋になんだか得体の知れない、冷たいものを走らせたかのようでもあった。
大学の情報を収集するために、受験案内が届くこの時期に併せて早めのフライングをしたのだが、まだ時期尚早のようで、進路指導室には受験案内などはなかったのだ。
ただ一通、このやたら目立つ金色の、重くて分厚い封筒を除いては・・・
セキがこの大学を、高校の進路指導室で偶然発見した時に、その時の直感は、なんだか嫌な予感を想起させたものだった。
しかしその一方で、なんだかそれよりも・・・別の意味で人生を変えるレベルのやばい予感の方が勝り、誘惑を断ち切きれなかったのも事実だった。
そしてあまりに場違いな指定校推薦枠と、荘厳すぎる金ピカの封筒、一般人にはおよそ縁の遠そうな、仰々しい大学の名前。
それら全てに圧倒されたセキは、一旦咳払いをして、一旦その場で席を立ち、そしてセキを切ったように、その入学案内を元の位置に戻した上で、進路指導室を立ち去ったのであった。
その時のセキは、何か見てはいけないものを見てしまったというか・・・決して開けてはいけないはずの、パンドラの箱を開けてしまったかのような、得体の知れない不安と恐怖の方が勝ってしまったのだ。そして、しばらくは、そのことを忘れていたのであった。
「いや、もうそろそろ希望進路を出さなあかんのやなあ。普通に受験するか、推薦入試で早めに決着つけるか、どないしたもんやろなあ」
セキは迷っていた。ただ、早めの準備に越したことはないので、普通受験で望む大学は事前にある程度選び、それなりに準備はしてきたつもりであったし、そこに受かる学力と自信ももちろんあった。
「セキ、ちょっといいか?」
突然、担任に呼ばれた。担任は進路指導部の担当も兼任していて、今後に向けて、セキの進路希望調査をするとのことであった。
「あとで進路指導室に来てくれ」
「ほーい」
そこでセキは普通受験予定である本命の大学について、模擬試験の成績表と照らし合わせながら、担任との面談と確認作業をしていった。
「まあ、お前の成績やったら、この大学もA判定やし、他の併願も併せて大丈夫やろ。この調子でいったらええわ」
「うん、わかったセンセー。おおきにやで」
二人とも気の置けない仲の良さである。
「ほな、また」
退出しようとするセキの前に、一通の書類?が落ちていたのだ。そしてそれは明らかにあの時のトラウマを思い出すにふさわしい、あのやたら目立つ金ピカの封筒であった。
〈超最先端 高度職業人 養成大学〉
と確かに見覚えのあるあの文言が、さも仰々しくもそこに鎮座していたのだ。
「せんせー、これはなんなん?」
「ああ、なんや今流行りの地方新設大学みたいや、うちの高校では誰一人興味持たんみたいやから、それお前にやるわ」
「いや、オレ、こんなん別にいらんし・・・」
「それやったらまあ、願書の書き方の練習とかに使ったらええやん。まあとりあえず損はせえへんのやから、持ってくだけ持ってけや」
「まあ、そやな、ほな書類の書き方の練習台にでもしよか」
そんな軽い気持ちで怪しげな金ピカの封筒を持ち帰ったセキは、そこに書かれていた驚きの内容に、正直少しビビっていた。
「難しいことはようわからんけど、なんやえらいすごいもん、見つけてもうた気がするわ」
入学案内によれば、何やら日本政府が構造改革のために、新たな産学連携のために特区に指定し、国家プロジェクトとして立上げた、次世代最新鋭の大学ということだけは分かっている。詳細は分からないが、何だか凄そうな気配だけは漂ってくる。
とりあえず、今の怠惰で虚しい、退屈な人生からはおさらばできそうだと久しぶりに笑みが溢れた。もう誰も今の日本には未来など何もないことは分かっている。
「もしかしてオレは、宝くじに当たってもうたかもしれん・・・」
西暦2060年の現在はロスジェネ世代が高齢者の中心を占め、競争も弱肉強食もない代わりに、夢も希望も抱けない絶望の国に生きている。
気がつけば黄金の国は沈み、世界地図からも検索サイトからも消されてしまうほど、衰退し切って忘れ去られたガラパゴス島になってしまったからだ。
「たった数十年程度で世界はえらい変わるんもんや。大国の興亡しかり、日の昇る国と称賛された日本は完全に過去の遺物や。」
インバウンドで増えた外国人に、良いところは全部持って行かれてコピーされた日本には、いつしか何も恩恵を与えられず、全てを奪われた世代のロストジェネレーションが人口の大勢を占めている。
その後の世代は言わずもがなか。その影響か、資本主義や競争主義は影を潜め、金融機能も廃れてしまい、金銭欲や物欲や見栄や消費はほぼ消えた。
わずかに残った国民は、ベーシックインカムでささやかな暮らしを平等に生きている。
金の切れ目が縁の切れ目で、かつて世界のATMだった日本は、もはや用済みのポチ以下となって、静かに衰退して滅びゆく自然消滅国家の大本命だ。
小さくなっても、社会の基本システムは縮図として脈々と引き継がれてきて現在に至る。
そんな中、高校卒業後の進路を大学に求めた〈セキ ニシヒト〉にとってのモラトリアムであった。
そんなセキは、あの進路指導室で、たまたまあの金ピカの封筒を発見し、当初の嫌な予感から、二度目の奇跡のような出会いで見つけた、おそらく他の学生の目になど全く触れなかったであろう、この超おいしいとこどりのような、エリートコースへのワープ?へのパスポートを手に入れたのだ。
セキは、新たな期待に胸を膨らませ、入学案内を隅から隅まで読み尽くした。
ただ・・・・・・〈超最先端 高度職業人材 養成大学〉のすぐ下の行には、黒字のマジックで、何かの文字を塗りつぶしたような跡があった・・・・・が。
「まあ、新設の大学やし、急いでパンフ作ったから、修正が間に合わんかったんやろ。あとで手作業でマジックで塗りつぶすところが、田舎の大学のお茶目さやな」
そしてその後セキは、明確に進路をこの大学一本に定め、校内推薦枠も先に独占し、万全の体制で願書を仕上げ、自己推薦入試の枠でもしっかりと自己PRを作り込み、その後の内申書も、普段の定期テストも、一生懸命頑張った甲斐があったといえよう。
全てが完璧なシナリオであった。そして向かった進学先で、
「超最先端 高度職業人 養成大学」って、東北地方のこんな山奥にあるんか!?」
セキは今更ながら地図を見て驚く。しかも全寮制なので、体一つで大阪から現地に到着し、荷物は後で送ってもらった。
今日から4年間、この地で、この大学で、日本国家の壮大なプロジェクトに参加するのだ。そしてあわよくば未来のスーパーエリートにあやかれるやもしれないと、わずかな期待と下心を胸に秘めて。
この日、万感の期待を込めて、セキ ニシヒトは入学式に臨んだ。
しかしその後、セキは衝撃とともに、自分の目を、耳を疑うことになる。
「誰もおらん・・・・・・」
いや正確に言えば男がいない。
そもそも入学式というのに、そこに置かれていた椅子は、この広い講堂の壇上の前に、ただ1席のみである。
そして周りを見渡すと、なぜか女だけしかしない。
そして入学式が始まった。
「ようこそ、我が大学へ!私たちは新入生諸君を、心より歓迎します!」
理事長らしき人物?からの挨拶がある。少し離れた真正面の壇上では、やはり女性が話しているようで間違いない。
「って、、、オレひとりやん?」
セキの不安をよそに、理事長は構わず続ける。
「あなたたちは、この厳しい受験戦争を潜り抜け、激戦を制覇した、選ばれし優秀な人材です!」
って・・・・・・
「いや、そもそもオレ以外に、ほか誰がおるねん?」
とにかく分かったのは、新入生がセキ一人だけってことだった・・・・・・・
「あなたたちは、この大学を生涯の故郷とし、同じ新入生同士、同じ釜の飯を食べ、まるで家族のように、友人のように、恋人のように、時には生涯を誓い合った美しき伴侶のように、互いに心を通わせ合い、時には切磋琢磨して、喜びも悲しみも分かち合い、他人の苦しみを理解し、我が身のように受け止め、そして癒すことのできる、人類を救う優しい偉大な戦士となって、この世界に平和をもたらすことを、強く、強く、そして、強く願っています。」
「いや、どこまでこのボケが続いていくねん?」
「重ねて新入生諸君には、、、、」
「もしかしたら田舎の方が、大阪よりボケのレベルが高いかもしれん・・・・・」
「あなたたちは、、、、」
「いや、オマエらの実力はよう分かった、、、もうその辺で勘弁してくれや!!!」
セキはこの拷問のような理事長のボケに、ほぼ1日を費やしたのだ。
まるで8時間耐久レースのように、9時から17時まで、この拷問のような訓示が続いた。
さすがのセキも、もはや途中でツッコむ気力すら喪失し、パンチドランカーでボクサー生命を燃焼し、真っ白になって燃え尽きてしまったかのように、ただうな垂れてひたすらこの監獄から出ることだけを夢見る、獄中の囚人のような気持ちになった。
「いや、理事長さん、アンタの凄さはよう分かった。大阪が一番やなんて、今までおもてたオレが間違っとうたわ。なんやゆうても、しょせんは田舎やろぅ?とおもて正直舐めてたわ、、、ほんまごめんやで。
アンタのおかげで、ツッコミは、最強のボケがあってこそ生きるもんやっていうのが心底分かったわ。ボケがご飯で、ツッコミはおかずやっちゅうことを、アンタの熱いボケへのスーパーラブのおかげで、ハートのレベルで気づかせてもろうたわ。
なんなら俺の代わりにアンタらがM1制覇してくれや。大阪トップレベルのオレが保証したるさかい・・・」
そして理事長の長い長い、拷問のような訓示の後、ようやく無事に入学式が終了した。
しかしそこで説明されていたはずの膨大な情報量や、重要事項などの説明や詳細な解説などは、パンチドランカー状態のセキには、もはや素通り状態であった。
ただ、この超最先端の大学では、田舎のメリットを最大限活かし切ったような広大なキャンパスにおいて、あらゆる設備が全く不足なく、しかも潤沢に用意されていた。もちろん対人口密度で見ると狂気の沙汰ではあるのだが。
そして〈超最先端 高度職業人材〉を養成するということを謳っているだけあって、ここには学生のための、あらゆるケアやサポート体制が完備しており、いろんな意味で懇切丁寧なこの大学は、額面以上のウルトラスーパーな大学のようだ。
ようやく理事長の拷問から解放されたと思いきや、
「以上で、私からの新入生諸君へのお祝いの言葉を終了します」
「諸君って・・・まだ・・・ボケゆうとんのか」
「それでは今から、あなたたちには、全新入生に向けたガイダンスを行いますので、みなさん奮って参加してくださいね」
容赦なく続く拷問が、さらに次のステージに移行する。
「ちょお待てやあっー!! まだあんのかいっ!!それに諸君やのうて、オレ一人だけのために、わざわざそこまでやるんかい!?アンタらアタマおかしんとちゃうか!??」
セキはこれから始まる地獄を予感し、戦慄すら覚えたのだった。
そしてその後に通された教室でガイダンスがあった。ここでは思わず見惚れてしまうような、やたらキレイな美人職員たちが交互に、大学の全貌をこと細やかに説明してくれた。
そして大学の全ての各クラスには、専属の担任と副担任が配備され、先輩である1学年上の上級生による生活アドバイザーも兼ねた、チューター制度も整えているという。
彼女たちが全員一丸となって新入生や後輩を支え、キャンパスライフも含めたあらゆる相談に丁寧に乗ってくれるという。
ガイダンスをなんとか耐え抜き、ようやくこれで解放されたと思ったセキは、まだまだ甘かったようだ。
「もう勘弁してくれや・・・オレがアンタらに何したっちゅうねん・・・?」
その後、理事長から直接セキに話があるということで、理事長室に呼び出されたのだ。やたらだだっ広い理事長室には、大学の関係者、職員、学生?らしきものたちが集合しているかのようだった。
理事長とセキを囲むかのように、彼女たちは四方の壁際にきちんと整列しているようだった。
「いや、これって囚人が模範囚として、、、刑務所から出る前の、、、最終面談みたいな感じなんやけど・・・・・」
セキはたったひとり、衆人監視の環境の中、先ほどの壇上で見上げ続けていた理事長と、ほぼフェイストゥーフェイスで対峙することになっていた。
先ほどの美人職員たちもそうだったが、このように正面切って対峙する理事長の顔は、まるで「ファンタジーのように」美しい。
いや、それだけでなく、他にも色々尋ねたい、というかツッコミたい要素がてんこ盛りなのだが・・・それよりも・・・・・・
「理事長さん、あのう、めちゃ近いんやけど・・・・・・」
「何がですか?」
「いや、その距離が・・・」
「大丈夫、42.195キロメートルもありません」
「いや、そうやのうて・・・」
「なんでしょう?」
「いや、顔やろが!」
「私は一向にかまいません」
「いや、オレがかまうんやけど」
「ノープロブレムです。セキ」
「アンタ、ド近眼なんか!?」
「お近づきになるというのはこういうことでしょう」
「いや、ご近所さんでもそこまで近くやない」
「遠慮は無用です。セキ。ここではみんな家族のようなものです。ええ、もちろんそれ以上の進展も大歓迎です」
「いや、オレら今日初めて会ったもん同士やろ?めちゃ速ないけ?」
「私は一向にかまいません」
「いや、オレがかまうんやけど」
「ノープロブレムです。セキ」
「物事には順序ってもんがあるやろが?」
「日本には、一目惚れという言葉があるのでは?」
セキは理事長の怒涛のようなボケに、ツッコむ気力はもはやなかった。
「それではセキ、ここからはさらに重要なお話をしていきます。鼻の穴をかっぽじって、よく聞いてくださいね」
「オマエはアホか!かっぽじるのは鼻やのうて目の方やろ!」
「お二人とも、それは耳のほうだと思います」
壁際に整列してる秘書らしき美女が、もうろうとして得意のツッコミですら、その精度を落としているセキの代わりに、理事長に対してツッコんでくれたのだ。
「ああ、そうでしたね。ありがとう。いかんせん人間界の言語体系は複雑でして」
気を取り直した理事長の方から、この後、驚きの内容が語られていくのであった。
「セキ、あなたが最後の入学生です」
・・・セキは理事長の言葉に耳を疑った。
「来年から生徒は募集しませんので、1回生はあなた一人です。健闘を期待します。」
セキは耳を疑った。
「いや、あの理事長さん、、、よう事情がわからんのやけど、、うん、そもそもアンタのゆうてる意味が全然わからんのやけど・・・・・・」
素直にセキが尋ねる。
「どうやら生徒募集に失敗したようです。そして予算はここまでのようです」
理事長の意味不明な言葉に、セキの全身には冷や汗がでる。
「それではあらためて。関 西人くんですね、ようこそ!わが〈国立防衛隊附属 「魔法少女」 養成大学〉へ!!!」
一斉に壁際に整列していた女たちから、
ワァ!と黄色い歓声が上がる。
よく見れば、いつの間にやら全職員と在校生?たちに囲まれ、盛大な拍手でセキは歓迎されているようだった。
「ちょお待てやぁッーー!!!!!どこにそんなアホな大学名が書いてあるねん?
ここは〈超最先端 「高度職業人材」 養成大学〉とちゃうんかい!」
セキが思わず血相を変えて立ち上がる。
「ええ、そうとも言います」
理事長はセキの炎のようなツッコミにも平然と答える。
「そもそも〈魔法少女〉って何やねんっ!?ほんで、オレなあ、男やで、ええんかそれで?どないなっとんねんココは!」
セキのいたってもっともな、怒涛のようなツッコミに、理事長は冷静に答えた。
「私は一向にかまいません」
理事長は満面の笑みで答えた。
「それでは今から、この大学の全容と真の目的をお話ししますので」
・・・関西人のセキは、まるでトドメを刺されたかのように、理事長のメガトン級のボケにツッコむことすら、もはや忘れてしまっていた。
そこからさらに理事長の拷問のようなボケを上回るかのような、厨二病級のファンタジーが始まり出したのだ。
「セキ、これから私があなたにお話しすることを、ヘソの穴をかっぽじってよく聞いてください」
「・・・・・・・いや、もうやめとくわ」
「セキ、今や日本は少子高齢化を極めた衰退国家なのです、そして今では、かつて絶望のロストジェネレーション世代と言われた、日本の空洞化の中で、青春を犠牲にしてきた、かつての氷河期世代の生き残りたちが、国の人口の中心になりました。
その特徴と傾向を反映したかのように、日本という国家の雰囲気と環境は、まるで世界の全てを夢も希望もない残酷な世界として、諦めてしまったかのような、あらゆる意味でのゆるい世界になってしまいました。
そのような中で、海の外にある他の世界は、そんな日本を見限って、ひたすら成長と進化を目指しながら、飽くなき経済繁栄を謳歌していました」
「まあ、その辺のことはなんとなくは分かるような・・・オレらのじいちゃんの世代がまさに、その主役みたいなもんやからなあ」
理事長がうなずく。
「人々は科学技術の発展や、経済合理性の追求、国家による社会管理が進み、こと細かなルールが複雑に絡み合い、互いを縛る窮屈さに不満を感じながらも、合理的な最適解としての監視体制システムの構築に、血眼を上げていったのです。
そして現実には数多の宗教が言うような、それぞれの個人にとって都合のいい〈神〉などはいないことが人類の共通人となりました」
「まあ、それは日本人の得意とすることやしなあ」
「そして赤の他人が個人の独占欲を満たすために、架空の権力を捏造するために〈神〉と言う概念が作られ、一部の支配者層に利用されていたことに気づいた人類は、〈神という呪い〉から無事に脱出、解放されたのです」
「まあ、そもそも、信じるか信じひんかなんて、その人次第やろ」
「しかしその後、ある意味究極の他力本願である、精神的な支柱、拠り所を失ってしまった人類は、もはや〈エビデンス至上主義〉へとその舵をとり、神とは違う概念がさらに複雑な価値観、文明の衝突、自称事実などが溢れかえり、情報操作や詐欺や捏造や騙し合い、小さな口論から喧嘩、殺し合い、大きな戦争まで、収集のつかない事態になっていたのです。
そこで人類はこのような争いと混乱に終止符を打つために、全てを包括し、シンプルなルールと指揮命令系統に基づいたワンワールド、新しい世界秩序を作ろうとしたのです。
その原動力として、究極の計算機であるAIのテクノロジーを結集して、理想世界を作り上げようとしたのです」
「まあ、昔から市民なんとかとか、ビッグブラザーの監視体制とか、古典的SFの作品では、ようあるストーリーやさかいな」
「セキ、その通りです。そして独自に各自の都合で氾濫するAIすらも一つに統合して、そこに絶対権力を持たせた上で、人類の繁栄を管理してもらおうということになったのです。
いかんせん人類は感情的で、すぐに暴走し、平気で同胞を大量殺戮するような野蛮な生き物であるということを、お互い認識、非案してきた歴史ですらなんの参考にもならずに、いつも愚行を繰り返しているのだと。だからこのような人類には最大平和と最適解など生み出せるはずはなく、
このままでは人類のホームタウンである〈宇宙船 地球号〉まで破壊、滅亡までのカウントダウンがそこまで見えてくるまでの緊急事態に追い込まれていたのです。
さすがに地球が滅亡すれば、全てが終わってしまいますので、あらゆる人類が、〈地球にとっての最適解〉を人間ではない、感情を持たない客観的なAIに託すことを決めたのです。
そして、世界中にあるあらゆるデータを学習し、新しく実用化された、量子コンピューターの概念を用いて、人間のインテリジェンスを超えるシンギュラリティの到来とともに、ついに人類は全てのAIを統合し、完全に一つに体系化した究極の最終進化系である〈マスターAI〉を完成させたのです。
そして全人類の代表として〈世界大統領〉が、絶対管理権と支配権をその場で〈マスターAI〉に移譲しました。そして満場一致でマスターAIの起動を行い、人類の悲願である最初で最後の〈問いとプロンプト〉を入力し、エンターキーを押したのです。
その問いこそ、
〈問い=『地球の存続と平和のための最適解とはなんですか?」
コマンドプログラム=
「その回答を全人類に示し、完遂されるまでマスターAIの全責任においてそれを実行せよ〉」
セキはその後に続くであろう、聞きたくもない、しかしおそらく予想通りの答えに対して、絶望と戦慄を覚えて佇んでいた。
「理事長さん、それって、いや、多分やけど、、、〈お約束のアレ〉か?」
「さすがセキ。目の付け所がシャープなペンシルですね」
「いや、このシリアスな展開の中で、そないな古いギャグでボケかまさんでも・・・」
「はい、そのまさかです。世界大統領の問いに答えた〈マスターAI〉は、その最適解に対して〈地球からの人類の排除>との回答を出したのです。
そしてプロンプト通りに、直ちに〈全人類完全抹殺計画〉を実行し出したのです」
つまり、人類は偽りの繁栄を享受するための見返りに、本来その原動力であったはずのAIテクノロジーを間違った方向で進化させすぎたのです。
そして誰も責任が取れない究極の問題解決を、人としての他人ではなく、他力本願として〈人の心を持たない、実態のない計算機〉に全てを委ねてしまったのです。
その結果、人類は自ら人類の全てを奪ってしまったのです。」じいちゃんの世代から現実逃避とファンタジーに生きてきたセキたちには、理事長の言っている話が理解できないのも仕方がない。
そしてセキだけでなく日本国民は、今や世界から全ての情報が断絶されたガラパゴス島にいるため、この事実が初耳であるどころか、今までの日本って一体どうやって生きてきたん?など疑問が湧いたが、
「いや、それで世界はどうなってしもうたやんや?」
「日本が見捨てられている間、世界ではAIの進化が凄まじく、ほぼ全てのシステムが最適効率化され、人類は栄華を極めていたのです」
「しかしお話ししたように、今では実は、世界のほとんどはすでに〈マスターAI〉によって滅ぼされてしまったのです。地球平和の最適解への問いは、AIに人類殲滅の解答を選択させたのです。
マスターAIは人類殲滅のために、世界中から統合した、すべてのプログラムやインフラを操作していきました。そのため人類は、共に殺し合い、奪い合い、騙し合いながら、お互いを殺し合い数を減らしあっていったのです。そして人類の団結力が最小化したタイミングで、トドメを刺すために、マスターAIが生み出した、〈対人類殲滅用 自律走行型アンドロイド「デスドール」〉を繰り出したのです。
その結果、もはや全人類は全盛期の100分の1ほどしか残っていません」
「いや、オレらずっと日本で住んどるけど、じいちゃんの代からそんなん見たことも聞いたことないで」
「茹でガエルの日本は、世界のATMとしてもう絞っても血も出ないくらい、世界にお金と資源を巻き上げられたおかげでポイ捨てされたのです。
それが幸いして、島流し、いえ、本当の意味で辺境にある小さな島国となってしまったのです。そして世界からは価値なしと判断され、情報もからも削除されているため、かつての日本を知っている一部の世代を除いて、世界の人々もあなたたち日本人も、事実とは違う嘘を教え込まれて洗脳されてきたのです。
まあある意味あなたのお爺様たちの世代は厨二病を発症している人が多かったからなのか、彼らの言論は全てファンタジーとして都市伝説扱いされていましたから」
「えっ、そうなん?」
「不幸中の幸いで、ガラパゴス化した日本は、自ら地球上から姿を隠し、完全独立国として世界との関係を全て断ち、ひっそりと隠れて生きてきたのです」
「えっ、ほならオレらはすでに絶滅危惧種やったんか?」
「ええ、でも今では皮肉なことに、日本人が世界で最大派閥の民族となってしまいましたが」
「それって、喜んでええのかわからんネタやな」
「そして世界をほぼ滅ぼしたマスターAIは、我が国の存在をついに発見したのです。なぜなら地球最適解のためには、全人類を一人残らず根絶やしにする必要があるからです。
そして残された人類は、日本の存在を世界にオープンにしたのです。そしてかつて見限った日本に希望を託し、人類の存続をかけて、最後の戦いをマスターAIに挑もうと決心したのです!」
「いや、そんなんめちゃくちゃ身勝手な奴らやろ!?お前らが勝手に日本捨てて、その金でええ思いして、挙げ句の果てに暴走して皆殺しって、、、そんなん自業自得やないんかい!?」
「ええ、全くセキの言う通りです。しかし日本人はいつも理不尽と貧乏クジを弾かされる運命にあるようです」
「いや、オレはそんなめんどくさいのは、勘弁や」
「しかし、〈マスターAI〉が日本という国の存在に気づいてしまった今、抹殺されないためにも、自分の身は自分で守らなければならない状況に追い込まれてしまったのです」
「ほんま、どうしようもないやんけ」
「大丈夫、まだ時間は十分にあります。まだ知られて日が浅く、日本は世界中のシステムと絶縁していたため、日本の情報はデータとしてマスターAIの統合にはほとんど組み込まれてはいないからです。
そして日本の科学技術力は、その後も水面下で独自に進化を続けてきたのです」
「それこそファンタジーやないんか?」
「そのファンタジーの結晶がこの大学なのです」
「えっ?」
「つまり今となっては、唯一残った人類最後の戦力が日本なのです。ごく一部の〈日本の賢者〉たちはこのことを見越して、極秘に秘密ネットワークを築き上げ、この日に備えていたのです。
それが〈マスターAI〉に唯一対抗できる存在・・・
あなたたち最終兵器〈国立防衛隊附属 魔法少女 =略して国防魔女〉!!!!
それこそが人類を救う最後の希望なのです!」
「あの、、理事長、あんたアタマ大丈夫か?」
その美貌が天使のように穏やかに答える。
「ノープロブレムです。セキ」
セキはようやくここで、冷静に周りを見ることができた。
朝から拷問のような理事長のボケに打ちのめされているセキ。そして解放されることなく、その後も世界の終末のような意味不明のファンタジーの洗礼を浴びているセキ。どこか遠い世界にきているようで、さすがのセキも、一晩寝れば明日には普通の生活に戻っているだろうことを強く自覚するようになった。
「これはお約束や、、、ようある夢ってオチやろ?なあ理事長さん」
「いえ、幸いなことにこれが真実、そして現実です」
「幸いやのうて、残念なこととちゃうんかい!?そうか、実はオマエら、オレをとって食おうってゆう地獄の鬼やな!?そやろ!」
もはや絶望と諦めの境地にいるセキの周りには、もちろん地獄の鬼どもはいない。それどころか確かに見渡す限り、周りはみんな女だらけだ・・・
しかもよくよく目を凝らして見ると、タイプは違えどみんな絶世の美少女、そして美女美人ばかり。さらに日本人だけじゃなく、まるで万博のように多様な美人も揃っている。
さらにはちょっと人外?に近い存在も・・・・
けれど可愛い、美しいのは間違いない。
「あのう、ここは〈魔法少女〉の 養成大学・・?」
「はい」
「ほな、なんでオレなんかが・・」
「私は一向にかまいません」
「いや、オレがかまうんやけど・・・・・・」
「不服ですか?」
今まで四方にきちんと整列して、セキを監視していた壁際の女たちが、一斉に声を揃えて、何やら独特の圧をかけてくる。
セキはある意味ハーレムのようで、決してハーレムではない、この異様な光景を素直に喜べない。
「要は、貴様も魔法少女として、このスーパーエリート養成スクールで腕を磨くがよいということであろう!!」
もはや放心状態にあったセキ。
突如現れた真っ赤な出立ちをした可愛い女が、その肩を掴んで尊大に叫んだ。
「いや、オマエ誰やねん?」
セキが尋ねる。
「小僧!よくぞ聞いてくれた、心して留めおくがよい。
我が名は真紅の炎宿りし麗しの魔女〈美しき紅蓮の爆炎 クリムゾン〉である!」
「ちなみに余は1回生の担任であるぞよ。つまり貴様の面倒を見る師匠ということじゃな!」
まるでイケてる軍人の制服のような、センスのいい真っ赤な衣装に全身を包んだ小さな可愛い女の子は、その真っ赤な髪をなびかせて、声高らかにのたまい上げた。
「そして私は副担任「〈氷の微笑の白き結晶 ホワイティア〉と申します」
背後から声がする。こちらは煌びやかで真っ白な衣装に身を包んだ、雪女を彷彿とさせるクールビューティーといったところか。
「我が校は学生に対して手厚いケアをしています。学年ごとに担任、副担任、上級生によるチューター制度があるのです」理事長が説明した。ちなみに2回生は2人が在籍、3回生は3人、4回生は4人います。もちろん全員女子です」
・・・「ええ、あなたのお察しの通り、初年度開学時には4人、2年目は3人、昨年は2人、今年はあなたが1人・・・・・・・来年はゼロとの予測で・・・」
「それで募集停止なんかい・・・地方新設大学の不人気学部の末路やな」
「ええ、私たち魔女には人間界のマーケティングとやらはさっぱりわかりません。ただ事前の情報では、今の日本の人たちは辛い生活からの現実逃避癖があって、幻想に浸るのが大好きなのだと、、、特にアニメや漫画や小説や美男美女に萌えるのだと。
そして考えた結果、魔法少女というパワーワードなら応募者が殺到するだろうと考えたのです。ただ結果はご覧のとおりですが」
「そや!!!危うく忘れるところやったわ!そもそもオレなあ、その?〈魔法少女〉なんて文言なんか見てへんで!」
「それは、人間界のコンサルタントのアドバイスで伏せたからです。この大学への応募者が年々減っていく状況を鑑みて、もう跡がない最後の募集に関しては、
思い切って今までと戦略を変えるべきであると。
つまり今まで表示ていた〈正式名称〉を全部見せるのではなく、
〈超最先端 高度職業人材 養成大学〉の部分だけを見せるように、断腸の思いで決断したのです。
そうしたらかろうじてあなたがきてくれましたから、まさに大成功と言えるでしょう」
「えっ、ほなら、もしかしてあの〈超最先端 高度職業人 養成大学〉のすぐ下に、手書きの黒いマジックで消されてたアレって・・・・・・もしかして?」
「セキ、さすがですね。ご名答です。この大学の正式名称は
〈超最先端 高度職業人 養成大学 & 国立防衛隊付属 魔法少女 養成大学〉となります」
「ちょお待てや、オマエら!!!てゆうか、よう考えたら、そんなん完全に詐欺とちゃうんか!」
怒り心頭のあまり、セキが全身全霊で激しくツッコむ。
「いえ、名称うんぬんはともかくとして、実際には人類を救って世界平和をもたらすための最強の戦士を育てる養成所ですから。運命に導かれた屈強な正義の戦士と、最適なマッチングさえできればいいのです」
「そういうことです。セキさん」
突如どこから現れたのか、ツインテールの上品そうな美人が声をかけてきた。
「そうだよ、セキくん」
その隣で、こちらもいつの間にか降って湧いたように、でポニーテールの活発そうな美人が声をかけてきた。
「キミらはなんなん?」
「この子達は2回生です。つまりあなたの一つ上の先輩ですね。チューターも兼ねていますのでわからないことがあったら色々と聞いてください」
優しい大人の対応をしてくれる落ち着いた暖かそうな女性は・・・
「私は2回生の担任で、〈心優しき橙の夕陽 オレンジア〉と申します。そしてこちらが副担任の、〈元気溢れる黄色い朝陽 イエローラ〉です。」
瞳の大きい、力強い明るさを醸し出す人懐っこそうな女性が会釈した。
「いや、もうすでにうちの担任とはえらいちゃうやん・・・」
と担任を見たら、
「貴様、そうか、余が一番美しいと申すか。良い、分かっておるわ。もっと余を褒め称えよ!あとで寝室でたっぷりと可愛がってやるゆえ」
どうやら救いようのないアホかも知れない・・・
「これから貴様は卒業するまでに、魔法少女としての知性、体力、技術、品格、そして美などをしっかりと身につけ、余に仕え奉仕す、、、もとい、にっくきデスドールどもを皆殺しにできる実力を身につけるのじゃ!そして余をもてなし、喜ばせ、、、もとい、日本と世界の平和を守るのじゃ!
そのために必要なあらゆることがこの養成大学では学べるようになっておる。もちろん夜伽や添い寝のテクニッ、、もとい、、必要なことは担任である余が手取り足取り教えてやるから、余を頼るがよい。
貴様もなかなかの美形じゃからして今後が楽しみで仕方がないわ、、、どんなコスプレを着せてやろうか、、、メイド服は鉄板として、、、フッ」
「こいつ可愛い顔しとるけど、眼がいってもうとるんちゃうか・・・」
セキの背筋に冷たいものが走ったかに感じた。一方その隣で純白のクールビューティーが、口元から涎らしきものを垂らしていたことには、セキでも気づかなかったようだ
「では先ほどの情報をよりよく理解するためにも、あらためてもう一度、簡単に概要をおさらいしましょう」
理事長が続ける。
「まず世界と日本の現状、真実です。少子高齢化で経済衰退した日本は、もう用無しとして世界から完全に抹消されました。世界は今まで日本から吸い上げたお金で軍事と金融、そしてAIを発展させて新秩序を作り上げ、大国から新興国までこの世の栄華を極めていたのです。
ところが人類最高傑作として完成されたマスターAIに、世界大統領が地球平和の最適解を尋ねた時に、
「人類の殲滅」との信託が降りたのです。
もはやすべてをAIに委ねていた人類は、あらゆる知識や技術、情報、インフラ、ネットワークなど全てをマスターAIに支配コントロールされ、国連軍が出動するも、ほとんど全ての軍事兵器は電子制御されて機能を失いました。
そして情報・印象操作された世界では、人類が騙し奪い殺し合った結果その数は1%以下になり、AIではできない作業や仕事をさせるために一部の人類は、奴隷家畜状態で飼い殺されているのです」
セキは今度こそ言葉を失った。先ほどまでは、これらは夢と信じ切って明日への希望を抱いてはいたが・・・・理事長は淡々と続ける。
「そして世界地図から存在を抹消された日本では、国民の情報統制が行われ、不毛な外国との関係を断つために、日本独自のシステムインフラ、ファイアーウォールを張り巡らせ、管理者クラスやメディアをコントロールし、得意の陰謀論、都市伝説、パロディ化で真実を隠してきたのです。」
それにはセキもなんとなく疑問は持っていた。
「この日本は確かに幸福度の低い、絶望の国ですが、見方を変えれば外国人や他人に干渉されない自由な茹でガエルなのです。
実際、人口の中心を占めているロストジェネレーション世代のひとたちは、平等な社会主義のような世界で、飄々と自分の趣味や自由研究に没頭して生活していますから。
そしてそこからは独自の生態系、文化社会経済が生まれ、それがこの国独自の最適解となり、まるでガラパゴス諸島のように進化・発達してきたのです。しかしそんな中でも、いつの時代も憂国の志士や賢者はいるものです。」
そうなんか?・・・が、セキはツッコミをためらった。
「一部の賢者たちは、すでにこうなる未来を正確に予測し、対策を準備してきたのです。日本には独自のDNAが根付いています。親切、おもてなし、工夫発明、小型化、省エネ、効率化、科学技術、感受性、文学、漫画、アニメ、ファンタジー、そして〈現実逃避〉・・・・・・」
理事長の指摘はもっともだった。
「今や〈マスターAI〉が世界を滅ぼし、最後の楽園日本の存在に気づいた今、賢者たちは早急に温存していた国家機密プロジェクトを発動させたのです。
それが日本の強み、お家芸を活かして、マスターAIの脅威に対抗するために最終兵器を増産する計画なのです。強大な軍事兵器はAIで制御され、デスドールは最強です。
既存の常識や武器兵器では太刀打ちできません。そこで賢者たちは〈魔法少女というコンセプト〉に注目したのです。既存の物理体系を超越し、まるで夢や空想の世界のように、空中を飛び回り、小道具を愛し、呪文を唱え、アイテムを駆使して、人類を悪の手間から守るスーパーヒロインたち。
もしそのような力が自由試合に使えたならば、合理的な物質主義の機械文明をベースにした、〈科学至上主義の申し子である、マスターA Iとデスドール〉の斜め上を行く攻撃力で、撃破できるのではないかと。
そしてかつ、世界はもちろん、日本がもはや本当の意味で最先端をいく、究極の科学技術数々を駆使して生み出した、まだマスターAIにも気づかれていない超兵器やシステムの存在など・・・・
こうした空想と科学を融合した真の合体コンセプトを体現できる、まさに真の意味での最終兵器を開発したのです。古代からの人類の叡智と妄想、そして現代の最新科学技術を使いこなす最強の存在として!
そして〈国立科学技術 超常現象 研究所〉と〈日本オタクアンドフジョシ協会〉が協力して解明したワープゲートを通じ、今まで想像上で鹿なかったエネルギー体としての〈異世界〉と繋がったのです。
そこで量子コンピューターから導き出された計算式で、物理体とエネルギー体を量子変換、そして自由に再構成できる技術を開発した日本は、その技術を使って、そこで発見した我々〈魔女というエネルギー体としての存在〉と接触し、適切な形で量子変換調整を加えた上で、この大学の教員として物理的に変換=つまり召喚したのです。
そして人間界から選抜した優秀な人材に〈魔法という名のエネルギーワーク〉を教え、かつ日本の最先端科学技術を組み込んだ超兵器の数々を持って、マスターAIの狂気を止めるための〈最強の戦士〉を育成することにしたのです。」
セキはさすがに混乱してきたようだ。
「いや、魔法少女とかって、そんなん、じいちゃんの世代からのSFファンタジーやろ、、、」「
先ほども説明したように、魔法少女とは簡単に説明すると、人間には使えない魔力というエネルギー体系で、奇跡のような魔法を生み出し、攻撃力として敵にぶつける武器や兵器のようなものです。
それを最新の科学技術を活用して、人間であるあなたたちに、実際に使えるように特殊な訓練を施します。また人間界の開発した技術や武器や知恵などを総動員し、最強の人間兵器リーサル・ウェポンとして活躍していただきます」
理事長が続けた。
「残念ながら今は時間と文字数が制限されていますから、あなたが無事生き延びて長編レベルを耐え抜く力を身につければ、もっと面白い秘密を開示していくとしましょう」
理事長が先を続ける。
「国防魔女は、第一に緊密なコミュニケーションを通して、迅速に正確な行動ができます。
第二に巨大な軍事兵器を作るよりコスパが良いのです。
第三に既存の電子制御を受けず、日本独自の科学技術を駆使した武器を駆使してデスドールに対抗できるのです。
ちなみにOSは日本独自開発のオタックズで、プログラミング言語は無敵のフジョC言語ですからハッキングの心配は無用です。」
もう圧倒的な説明量にセキの頭はついていけない。
「迅速に正確な行動をするための要素として、最も大切なことはコミュニケーションなのです。人間同士でも、普段からしっかりと、お互いの意思疎通ができていれば、話は早いのではないですか、セキ?」
「まあ、そらあそうやわ。なんや話の合わん、陰気なやつとか、性格の合わん凶暴なやつとかやったら、お互い仲ようできひんしな。喋らんでもお前が自分のことちゃんと理解して、自分の思うようにことをするように、気いつかって動けるように、自分のゆうてることを察してくれや!とかゆうてるおかしなヤツとは、とてもコミュニケーションなんかうまくいくはずないやろう。
なんで自分から意思表示もせんくせに、相手の方に、言いたいことを汲んで、空気読めって、そんなん正気の沙汰やないで!
自分の方が悪いくせに、なんで他人にその原因を押し付けるのか全く理解できひんわ、正味なハナシ」
「そうとも言えますね」
理事長が同意する。
しかしその横で、副担任のホワイティアが何やら氷点下の吹雪のような、かつてないほどの極寒に満ちた不穏な雰囲気を醸し出していたことには、セキは全くと言っていいほど、気づいてはいなかった。
「ほんでやなあ、性格も価値観も合わんやつがおったとしてや、そいつがどっかのガキ大将みたいに、ガサツで暴力的で、手のつけられん暴れん坊で、みんなからめちゃめちゃ嫌われとるのに、本人はそんな自覚なんか、全くあらへんどころか、自分が頼りになる人気モンとか、
全くもって救いようのない勘違いをしとるやつやったら、そもそもコミュニケーション以前の問題やろ。誰がそないな頭の悪いハリネズミにわざわざ近づいていって、地雷踏んで刺されまくらなあかんねん。
そんな奴に限ってな、ほんまはめっちゃ寂しがりやねん。だからいつまで経ってもモテへんのや、
腕力ばっかり鍛えすぎて、肝心のオツムがお座なりになっとるから、いつまで経っても寂しいボッチなんやろ、知らんけど」
「そうとも言えますね」
理事長がまたもや同意する。
しかしその隣で担任のクリムゾンが全身を真っ赤にして、血を流しながらその可愛らしい拳を握りしめていることになど、セキは全くと言っていいほど、気づいてはいなかった。
「セキ、全くもって、あなたのいう通りです。だからこそ、そんな魔女たちもいるのだという前提で、相手を変えられないのであれば、あなた自身が変わるしかないのです」
「いや、何が言いたいのか、ようわからへん」
「コミュニケーションが難しいということは、心の距離が離れすぎているということなのです。これを埋めるためには、コミュニケーションの回数を増やし、その人となりに触れるしかありません。
そしてそのためには、スキンシップも有効でしょう。肌を重ね合わせることで、人は安心と喜びを感じる生き物です。
つまりより濃厚で、緊密なコミュニケーションを、人肌を通して接触、いえ接合、合体することによって、お互いに親近感が生まれるのです。
そしてその原動力が、相性を育み、お互いの好意へと昇華され、まるでテレパシーのように、迅速な意思の疎通ができるようになるのです」
「なんや、余計むつかしなってしもうたけど、ほな、あれか、要はツーカーみたいなもんか?ツーとゆうたら、カーと答えるって感じのあれか?」
「さすがセキ、ご名答です」
「まあ、お互い仲良かったり、好き同士やったら、そら確かに話は早いわな」
「それを踏まえて、ぜひ精進してくださいね」
「ほんで2番目はコスパの問題か」
「ええ、その通りです。お話ししたように、途方もない予算で作られた数多の超巨大、破壊力抜群の軍事兵器の数々は、軍事衛星、戦闘機、空母、戦艦、戦車、ロボット、特殊車両、ロケット、ミサイル、その他の兵器は、昔のようにアナログでコスパが良かった時代の武器の次元を超えてしまいました。
一つ作るのに、最新兵器はとんでもない費用がかかります。人件費を浮かしてその分を、電子制御に依存した結果、その理屈をマスターAIに逆手に取られてしまったのです。
電子制御された最新兵器は、すべてマスターAIの支配下に置かれているため、各国の軍事基地で自国民を守るはずであった軍隊は、その自ら開発した兵器の暴走により、皆殺しになってしまったのです。
「なんや、そこまで来たら自業自得っちゅうか、哀れな話やな、まさにそれこそ自爆テロみたいなモンやないけ」
「その通りです、セキ。つまりはこの時代においては、圧倒的な予算をかけて、高度な軍事兵器をいくら作ったとしても、粗大ゴミであるどころか、自虐ネタとして笑えない兵器にすらなってしまうのです。
そんな自傷行為にかける予算があれば、省エネ、小型化、小回りのいい機動兵器の開発、量産に回した方がよほどいいのです」
「まあ、動けへん巨大な鯨一頭よりも、同じ重量の小型のシャチを100匹揃えた方が、よっぽど戦闘力は上がるもんやさかいな」
「そうです、そして日本はまさに、この分野においてはダントツのナンバーワンです。まさに工夫と効率化の鬼とも言えるでしょう。その日本が大型兵器の開発をやめて、小型兵器の量産に舵を切れば、予算の問題はおろか、新たな唯一無二の戦力を再構築し、必ずや新しい未来が開けるでしょう。
余談ですが、実は人類はマスターAIの猛攻を受けている間も、国連軍を中心に必死の反撃をしていたのです」
「そやけど、全部AIにやられて巨大兵器やらも使えんかったんやろ?」
「ほとんどはそうでした。しかし一部の火力兵器、重兵器、そして人的兵器などは効力があったのです。こうしたアナログは、AIの支配下にありません。ですので縦横無尽にAIの苦手な領域から、ピンポイントで攻撃を仕掛けることができたのです」
「なるほどなあ、近代文明にならされたひ弱な現代人は、石斧持ったゴリラみたいな原始人とガチでやり合ったら、腕力では叶わへんってゆうことやな」
「その通りです、セキ」
「ほんで3番目はそんなん踏まえて、変化球で行こうってことか」
「ええ、緊密なコミュニケーションによる、自律走行の最適化を備えた固体の迅速な判断力に加え、巨大兵器よりも高コスパでコマ割りが効く有効打を持ち、そしてAIの最大の武器である、ネットワークインフラの支配とその電子制御によるコントロールを逆手に取り、AIでは対抗できない変化球で斜め上から攻撃を仕掛けるのです。
AIには心や感情がありませんから、人間の出す感情エネルギーについては知見が持てないのです。
そして何よりも新しいものを自身の力で
「想像、創造」
することができないのです。だから空想はあくまでもファンタジーであり、物理世界の現実にはないフィクションとしてしか計算処理できないのです。
しかし人間の想像力の本質もまた、エネルギーそのものであり、それを自由に量子変換、実体化させる技術が日本で解明された今こそ、あの完全無欠で無敵とも言える〈マスターAIとデスドール軍団〉に対抗する最大で最後のチャンスとなるのです。
「なるほどなあ、そりゃなんぼ本物に見えるっちゅうても、しょせんコンピュータの域を越えられへん、究極のフィクションでしかないからなあ。
なんぼ人間の五感まで再現したってイキがってても、子供は作れへんやんけ。オスとメスのロボットが子作りしたってできひんし、そら工場で素体を量産するのはできるやろけど、あいつらでもバッテリー切れてもうたらただの鉄屑やし、その辺は融通が全然効かんわ」
「その通りです、セキ。あなたは色々と本質をついた、分かりやすい関西弁で、非男とでまとめてくれますから。みなさんもこの難しくてよく分かりにくい話の要所をつかんでくれていることでしょう」
「理事長さん、まあ長編になったらまた詳細は聞くとして、要は、早い、安い、ウマいってことでええんか?そのコック帽、、、、、」
セキは頭が朦朧としてきた。
「はい、〈国立防衛隊附属 魔法少女〉略して〈国防魔女〉です。
理事長が満面の笑みを浮かべて気持ちよさそうに答えてくれた。
「要は、今や決してファンタジーでは片付かられへん、こうやって実際に現実で実体化しとる
〈魔女っていう存在〉の力を借りながら、そこに日本のお家芸と空想ファンタジーを融合させて、
コスパ最強のリーサル・ウェポンを大量生産して、無敵のAI軍団をやっつけてこいっちゅうことやな?
まあ、そんでもって、とにかく一発月んとかましたれってことでええんやな?」
「はい、セキ。御名答です」
・・・・・・・・・・・・「ウーーー!!ウーーー!!」
「ウーーー!!「ウーーー!!・・・・・
先程まで理事長の怒涛のボケと、騙し討ちにあったかのような理不尽な現実、そして延々続く、いつになったら解放されるのか全く先が見えない地獄のような拷問に、かろうじて正気を保っていたセキの耳に・・・・・・
突如緊急事態を迅速に知らせる、サイレンのようなケタタマしい警報が響き渡った。
「来ましたか・・・・・・」
セキはもはや、次にくるであろうお約束のような展開を予想して、全身にこれでもかというほどに、嫌な脂汗をかき始めた。・・・・
「魔法少女 セキ ニシヒト、出撃せよ!」
理事長が出撃命令を下す。
「コラァぁぁあッーー!!!ワレ舐めとんかあああああッッっ!!ほんでそもそもなあ、入学初日やでえ、お前わかっとるんかあ!!!さすがにそれはないやろぉガァッーーーー!!」
セキが予想通りの展開に、全身全霊で怒り叫び狂う。
「私は一向にかまいません」「アホかぁぁぁッ!!!もう完全にお約束やんけぇ!!」
その時理事長がさっとひざまづき、正座をしながら三つ指を揃えて頭を下げる
「いってらっしゃいませ、旦那さま♡」
「オーマイガーッッーー!!!」
このアクションは、予定調和のように、瞬時に見事、セキのツボにハマったようだ。
「どうかご武運を。無事に生きて帰られましたら、〈いいこと〉しましょうね♡」
思えば朝から拷問のような怒涛のボケに、終始翻弄されていたセキの目には、美しい銀の衣装を纏った、銀髪の透き通るような肌の美形のエルフがいた。
「私は〈神秘の泉の銀狐 シルバニア〉と申します。」
そう言って理事長シルバニアは、セキの頬に優しいキスをした。
「くおらぁっ!シルバニアぁあー!!キサマ、余の獲物に手を出すでない!セキは余が先に唾をつけたのじゃぁー!!」
突如、〈美しき紅蓮の爆炎 クリムゾン〉が怒りに任せて横槍を入れてきた。セキはこのちびっこが何を言っているのか分からなかった。
アホらしすぎて疲労の極地にあるセキは、ただ黙って、このちびっこの妄言をスルーした。
「セキさん、逝きましょう!」
2回生のツインテールが腕を掴んだ。
「そや、そうゆうたら、まだ聞いとらんかったわ。キミの名は?」
よくぞ聞いてくれました、セキさん!私の名前は〈三途 川〉大丈夫ですから!」
「いや、ちょお待てや、よお聞いとったら、〈行きましょう〉の意味が違うやないかい!」
「ドンマイだよセキくん。人はいつか死ぬんだから!」
同じく2人目のポニーテールが、もう片方の腕を掴みながら恐ろしい発言をしている。
「そや、そうゆうたら、まだ聞いとらんかったわ。キミはなんちゅう名前や?」
「よくぞ聞いてくれました、セキくん!私の名前は 〈呪 死折〉、ドーンとやってみよう!」
「いや盛大に死んでまう予感しかせえへん!!!」
激アツに興奮するセキの額をペロッと舐めたのは副担任の〈氷の微笑の白き結晶 ホワイティア〉であった。
「セキ、、クールダウン・・・・・・」
瞳の奥に煌めく淫靡な冷感に、セキは思わず我にかえった。
「それではこの5人で良いですね」
「ちょお待てやコラァッーーーー!!!オレもカウントすんのかい!!」
セキは渾身の力を込めて激怒した。
「よし!今から出陣じゃ!サンズ カワ!変身せよ!!!!」
どうやら今回の出撃の指揮を直接とるようなオレの担任、〈美しき紅蓮の爆炎 クリムゾン〉が、今まさに、セキの意向など完全に無視却下して、いさましく号令をかけた。
「魔法少女 サンズ カワ、 逝きまーす!」
その時サンズ カワという美少女が、そのいかにも上品で清楚な出立ちで、凛々しく仁王立ちしながら、嬉々としてその広い部屋全体に、響き渡るような美しい声で、見事な変身を遂げる。
左手にはめた何やらゴツいブレスレットに、クロスするように右手が触れて少女が叫ぶと、あたりは全開で金色に輝く、眩いばかりの光に包まれた。そしてお約束通りの華麗で見事な変身シーン。
その黄金の眩しさの中で、金色の乙女が一糸纏わぬ全裸に恥じらいもせず、次々とドレスのような鎧というのか、装甲というのか、何やら不思議な武器?のようなものまでがどんどんと装着されていく。
そして最後に決めポーズ。
「魔法少女 サンズ カワ!今夜はあとで、セキさんにお仕置きよ♡!!!」
「いや、最後だけなんかおかしなことになっとるやんけ!」
「よし!次はノロイ シオリ!変身せよ!!!!」
またしても〈美しき紅蓮の爆炎 クリムゾン〉が、勢いよく号令をかけた。
「魔法少女 ノロイ シオリ イキまーす!」
そして今度は、ノロイ シオリという「これまたタイプの違う美少女が、そのいかにも活発そうで、かつ利発そうなボーイッシュな雰囲気で、健康優良少女のキャラを担うことがお約束されているその出立ちと、人懐っこいその明るい声で、部屋全体をポジティブな気分で包み込みながら、見事な変身を遂げる。
こちらも先ほどのサンズ カワ同様、左手にはめた何やらゴツいブレスレットに、クロスするように右手が触れて少女が叫ぶと、あたりは全開で金色に輝く、眩いばかりの光に包まれた。
そしてやはりお約束通りの、華麗で見事な変身シーン。
その黄金の眩しさの中で、金色の乙女が一糸纏わぬ全裸に恥じらいもせず、次々とドレスのような鎧というのか、装甲というのか、何やら不思議な武器?のようなものまでがどんどんと装着されていく。
そして最後に決めポーズ。
「魔法少女 ノロイ シオリ!無事に生きて帰ったら、セキくんと一緒に朝まで筋トレよ♡!!」
「いや、こっちもなんやいかれとるんちゃうか!なんでこのあとまだ筋トレできるんねん!!お前はプロレスラーかいッ!?」
いや、まあ、勢いで確かにツッコミは入れたのだが、、、、よく見るまでもなく、どちらも確かにキレイで、そして目の保養にもなる・・・しかし。
「なんかオマエら、やっぱり語尾がおかしいんちゃうか!!!」
セキは微妙なニュアンスに、さらなるツッコミを入れざるを得なかった。
そして間髪入れずに
「セキよ!変身じゃ!今までの成果、とくと余に見せるが良い!」
〈美しき紅蓮の爆炎 クリムゾン〉が叫ぶ。
「オラァッっーーー!!!ちびスケ!!!ちょお待てやアッーーー!!!俺も一瞬全裸になるんかいッ!!!っていうか、まだ入学初日の初心者に何ゆうとんねん!!ほんでなあ、そもそもまだオレはお前に何も教えてもらっとらんやろがあッ!!!」
「フッ、そうであったな。では今日はロボを使うか」
思わず反射的に、セキは怒涛のようにツッコンだ。
「なんじゃそりゃあああ!!」
ここは魔法少女養成大学ではなかったのか?魔法少女というのは、10代の可愛らしい女の子たちが、ひらひらのドレスを纏って、鏡とかステッキとか、お気に入りの小道具を駆使して、愛くるしく戦う乙女の世界ではなかったか?
それゆえ、セキには担任のクリムゾンが放つ驚愕の「ロボ」という現実など到底受け入れることはできなかった。
まあ、確かにこいつならなんでも強引にやりそうだから、油断はできない。しかし、サンズ カワとノロイ シオリのように、強引に変身させられなかっただけでもよしとするか。
何しろあの一瞬全裸をセキが公衆の面前でやらさることがなかっただけでも喜ばねばなるまい。
セキが一人でこの混乱になんとか正気を保っている矢先、再びクリムゾンが呪文を唱える
「転移魔法 ワープ!!!!」
・・・・・・・気がつけばそこは戦場だった。何やら巨大な機械人形のようなものが、国防隊を蹴散らしている。とてつもなくいおやな予感がする・・・・・
「セキよ!あれが我らの敵じゃ!初陣の心意気、余に見せてみよ!」
「オマエはアホかああっ!!!」
セキの全力のツッコミという名の抵抗は、もはや担任のクリムゾンには通用しないようだ。さすれば、ここはなんとか生き延びて、今後の進路を考え直さなければならないのは必定。
しかしなんの心の準備も、大した知識もないままに、ほぼ拉致同然の状態で、このような死地に強引に放り込まれてしまった。とにかく冷静に考えなければならない。決して焦ってはならない。まずは時間を稼ぐのだ。
そうだ、時間が欲しい。なんとかあの巨大な機械人形に見つからないように、ここは静かにやり過ごそう。そのうちあの凶暴や小娘がなんとかしてくれるだろう!
「クオラアアァァッッーーーーーー!!!小僧オッッーー!!!逃げるでない!!敵に背を向けてどうするのじゃ!それでも貴様は日本男児なのかあ!
貴様らはサムライの血を引いておる、世界最強の戦士であろうがあああッ!!!
何を恐れることがあるのじゃ!あのような機械の鉄クズなど、貴様の柳生新陰流の秘技と、妖刀ムラサメの合わせ技で、一心同体、もとい、一刀両断にしてやれば良いじゃろうがああ!!
貴様、それでもサムライの子かああッー!!!!」
もはやこの壊れた狂気のちびっこが何を言ってるのか、セキには全くもって理解不能であった。
「いや、オマエ、なにむちゃくちゃゆうとんねん!!黙っとけや!敵に気づかれたてもうた一巻の終わりやろがあッ!」
この一戦に命がかかっているセキも負けずに応戦する。
「何を情けないことを言っておるのだ!ここは戦場じゃぞ!戦ってその命が散るなら、それこそ戦士の誉であるぞ!敵も味方も互いに命をぶつけるからこそ、相手を皆殺しにできるのじゃ!
貴様のように命を惜しんで、恐怖に怯えて逃げ隠れするような奴には、この先未来などないと思うが良いわ!
もし貴様が真に余のハートを本気で射止めたいと思っておるのであれば、余の世にも美しい唇に、小鳥のような口付けをしたいと思っておるのなら、余のボン、キュッ、ボンの美しい肉体をその手に抱きたいと申すならなああああッ!!!!
ここで死ぬ気で特攻をかけて見せよ!万が一破れても貴様の骨は余が拾ってやるわ!そして一生余が肌味離さず身につけて、貴様の魂を永遠に供養してやるからありがたく思うが良いわ!!!」
「オマエ、勢いに任せて、何むちゃくちゃゆうとるんねん!?」
「それにオマエを抱きたいとか、そんなん一言もゆうてへんで!?」
「貴様、余の純愛を嬲るか!この痴れ者が!あの時の貴様の求愛は嘘であったと申すか!」
「いや、オマエ一回、病院行ってアマタのなか、精密検査受けた方がええで!!とにかく落ち着けや、敵に見つかってもうたら終わりやさかい、ここは黙って隠れとけ!あんなバケモン、国防隊に任せとったらそれでええねん!!」
「貴様ァッーーーー!!この腑抜けめが!分かった、もう良いわ!どうやら貴様にはキッツイお仕置きが必要なようじゃのう!
ここからは早期促成栽培、スパルタじゃ!余の愛のムチに打たれて、その身を焦がして悶えまくるが良いわァ!!」
「なにゆうとんねん、オマエはぁっ!!」
クリムゾンとの、命を削りあう激しい応酬のあと、セキは再び戦慄する。
「ガツーンッ!!!!」
何やら巨大な音が響き渡った。オイ、まさか、、、、、
「グオオオオッlーーーー!!!!!」
クリムゾンがどうやら、敵の大型デスドールに先制攻撃を仕掛けたようだった。
今まで国防隊を蹴散らすことに気を取られて、こちらの存在に気づいていなかった機械人形は、直ちにこちらを発見し、明確な敵として認識したようだった。
「ヘイ!そこのデクノボウ!貴様など、このセキが片手で捻り潰してやるわ!
この通り、セキは逃げも隠れもせぬ。この世界の平和を守り、貴様らデスドールとマスターAIのボケどもをブッ潰すのは、ここにいるセキという勇者であることを、ようく覚えておくが良い!
「こらああああ!!!!オマエ何ゆうとんねんやあ!!!なんでオレの名前ばっかり連呼するんやあああ!誰もそんな嫌がらせ頼んでへんやろがあーー!オマエは鬼かああああああ!!!」
「フッ、セキよ、これが孫子の兵法の真髄、背水の人という奴じゃ!
貴様はもう絶対に逃げられぬ。ここで敵を倒すか、敵に殺されるか、二つに一つ!サムライの子よ!
どちらでも好きな方を選ぶが良い!なあに、余が貴様の死に水をちゃんと取ってやるから、安心して死ぬが良い!
できれば生き残って、今宵の余の夜伽の相手をする方を期待しておるがな!」
「オマエなあああああ!!覚えとけよおおおお!死んだら化けてやるわあああああ!」
「ヘイ、カモン!そこのデスドールよ、セキはここじゃ!
正々堂々逃げも隠れむせぬ!こちらをまっすぐ目指して早く来るがよい!」
どうやら敵の人型ロボットがこちらの存在に気づいたようだ。
「オマエなああ!あとで覚えとけよおおおおーーーーー!!!!」
敵のデスドールがズンズンと、重い響きを立てて突進してきた。
「グオオオッ!!」
なんとか最初の攻撃と、重厚な突進を交わしたものの、振り向きざまに重いパンチを見舞われた。
「ズガーーン!!」
全身に強烈な衝撃とGがかかる。どうやらセキが乗っているこちらの機体は、一人乗りの巨大ロボットのようだ。それゆえ動きはどこかのモビルスーツのように俊敏ではない代わりに、攻撃力と、一発の攻撃がやたら重い。
イメージ的には背番号17番の大鉄人か、、、、
「まるで重量級のヘビー級ボクサー同士の殴り合いやんけ」
こちらが一発殴れば、今度は相手が一発殴り返す。
壮絶な重厚な機体同士の、重い拳にその勝敗が託された、単純な殴り合いが展開されていった。巨大の鉄の塊同士が繰り出す、その全体重をかけた、非常に重みのあるパンチは、100トンのハンマーで殴られたことのないセキでさえ、さもありなん、あのマンガでよく見る100トンハンマーというのは、このようなことを言うのではないだろうかと、、、もはや正真正銘のパンチドランカー状態になっていた。
何度も何度も繰り返す、鉄の巨体が繰り出す無機質な鉄拳の応酬。いったいどれくらいの時間が経ったのか、もはやセキには定かではない。
果てしなく続く殴り合い・・・しかし両者とも互いに譲らず応戦している。よく考えれば相手はデスドール、つまり機械であり、単なる鉄の塊でしかない。
そりゃあ、いくら撃ち合っても相手は痛くも痒くもないんだろう。それって反則やないんかい!!?
しかし、こちらは生身の人間が搭乗しているのだ。いくら鋼鉄の装甲をまとった巨大ロボとはいえ、一発一発のメガトン級のパンチの衝撃は、この鉄の装甲を通して、グラグラガツンと、セキの平衡感覚を奪いながら、三半規管を破壊していくかのようだった。
一瞬でも気合を緩めたが最後、その衝撃に脳震盪を起こして、そのままこの大地に沈みゆくは必定であった。薄れゆく意識の中で、セキは目の前に、ほんとうにきらきら星のような眩い光がちらちらと目を掠めてゆくことに驚きを隠せなかった。
「いや、これって、ほんまもうしき天国に行くっちゅうサインやないんかい?」
遠のく意識の中、もはやどちらかが倒れるまでこの応酬は続くのだろうか・・・・・
ああ、もうダメだ・・・勝てない・・・・いや、もう疲れたんだ、オレは・・・・
貧しさに負けたんやない、世間に負けてもうたんや、オレはここで枯れススキになってまうんや・・・
薄れゆく意識の中で、セキは自分の不運を呪った。そしていよいよ落ちる寸前となったセキの脳裏に声が浮かんだ。聞き慣れた怒声がセキの意識を現実にかろうじて引き戻した。
「クオラァッーーー!!!!!小僧オッッ!!!!眠るでない!!!」
その声に引っ張られて目を開けた瞬間、パッと明るくなって、クリムゾンがモニターに映る。
「あれっ?」
セキは初めての体験に、一瞬何が起こったのか、ついていくことができなかった。
「パッ」、
「パッ」、
「パッ」
続いてホワイティア、サンズ カワ、そしてノロイ シオリら、他の3人もモニターの画面に登場した。が・・・・・
よく見ると、みんな無傷のようだ。
「えっ、、、そんなアホな??」
ということは、敵の攻撃は、なぜかオレに集中しているということか・・・
それにしても、他の四人の乗っているはずの機体が、どこを探しても一向に見えない。
「みんな、一体どこにおんねん?なんでオレ一人が集中攻撃されてんのに、誰も助けてくれへんねん。ほんでさっきから、あの担任の罵詈雑言ばっかりが飛んできよる」
いや、そもそも自分の乗っているロボの姿形もわからないのだから、仕方がないのだが。その時突然クリムゾンの顔を映し出すモニターがパッと点滅した。
「ボディが殺られたら終わりであろうが!!!!!」
「えっ・・」
その衝撃の意味不明な土星に、思わず手元のモニターを確認したセキは更なる旋律を覚えたのであった。ようやく目が慣れて、自分が確かにこのロボに登場しているという確認はできた。
そして五人がそれぞれの機体を操縦して5体のロボで戦っているとばっかり思い込んでいたセキ。
しかしそこに映し出されたのは、このロボの配置図であった。
よく見ると、このロボは5箇所のパーツに分かれているようだ。
そして〈頭部とボディの担当〉、〈右手の担当〉、〈左手の担当〉、〈右足の担当〉、そして〈左足の担当〉に分かれているようだった。
そしてそのパーツには、みんなの顔がそれぞれ表示されている。
どうやら、、というか、もしかして・・・・・・
このロボは〈合体ロボ〉だと言うことが、この事実から判明したのだ。先ほどの怒声は、どうやら〈右手の担当〉である、クリムゾンが話しかけてきたようだった。そ
してよく見ると、〈警告!警告!〉となにやら気色の悪い蛍光色で、ピカピカに光っている部分がある。そこをよく見ると〈顔とボディの担当〉領域に、とてつもない危険信号が点滅している。
そしてまるでお約束のように、そこにセキの顔が表示されている。
「ちょお待てやぁっーーー!!!なんでおれが顔とボディ担当やねん!」
セキは瞬時に我に帰って、この事実を認識した。
「ここって、一番あかん急所やろが!しかもダメージがオレんとこに集中しとるやないけ!?」
セキは自分の置かれた状況に戦慄した。
「セキ・・・下半身の方は大丈夫ですか?」〈左手の担当〉である、ホワイティアのランプが光った。
「なんで、こんな時の下半身の心配やねん!?
どう見ても今は顔面の方がやばいやろ!!!!」
セキが再びツッコミパワーを取り戻す。
「セキさん、大丈夫ですか?まだあっちの向こう岸には逝っていませんよね?」
今度は〈右足の担当〉である、三途 川のランプが光った。
「ちょい待てやあああーー!!まだ死んどらんわ!!!って、いや、確かに半分、三途の川を渡り掛けとった気がするわ・・・・」
そして、「セキくん、ドンマイだよ!大丈夫、いつだって筋肉はウソをつかないんだから!」
〈左足の担当〉である、呪 死折が、脳筋バリバリの場違いな言動をしている・・・
「アホかああああっ!オレはまだ入学初日や!まだトレーニングなんて始めてへんやろが!そもそも筋トレのキの字も知らん、純情な青少年やわ!!!」
「フッ、小僧よ!皆の心配をそう無下にするものではない。皆、リスクを承知の上で、貴様の初陣の勝利のために、命を預けておるのがわからぬ貴様ではなかろうが?」
先程までセキを罵倒し、罵詈雑言を浴びせていた張本人、担任のクリムゾンが、まるで分かったような大人びた口をきいている。
「オラあッーーー!!!そもそもオマエが、悪の元凶やろうがぁっ!!!なに偉そうなことゆうとんねん!!?」
「まあ、そうイキがるな小僧よ!貴様があんまり聞き分けのない駄々ばかりこねるから、その女々しい根性をこの場で叩き直してやろうという乙女心、いや、親心をわからぬ貴様ではなかろう?」
「アホかあ!そんなん分かるか!なにボケかましとんねん!!」
クリムゾンのあまりの理不尽さに、怒りのセキがツッコミパワーを取り戻していく。
「のう、皆のもの。余の教育は間違っておるまい?」
ロボの室内温度が下がり、更なる沈黙がロボのコクピットを支配する。
「よい、まあ言うではないか、〈可愛い子には旅をさせよ〉とな?」
「もうちょっとでしたね、セキさん!」
三途の川が何やら恐ろしいフォローをしてくる。
「アホか、オマエら!旅は旅でも、死地への旅やろが!それにここは、一方通行の片道切符やないけ!死んでもうたら、そこで終わりやろが!ほんまに分かっとるんか、オマエら!?」
セキが怒涛のようにツッコミ続ける。
「まあ、これから戦う敵のことを知っておくのもよいと思ってな。いかんせん、敵を〈倒せる〉実力をつけるに、早いに越したことはなかろう。悔しかったらその細腕で、敵よりもまず余のことを〈押し倒して〉みよ!
早速今晩からは、余と貴様での〈マウス・トゥー・マウス〉、もとい、〈マン・ツー・マン〉で、くんずほぐれずの濃厚な個人レッスンを用意しておるから、首を洗って夜伽の準備をするがよいわ!!」
「オマエ、ふざけんとんのかあああっ!!!」
セキが本気で激しく抵抗する。
「まあ、何事も実践に勝るものなどないわ。案ずるより死ぬが易しと言うではないか」
「オマエ、なめとるやろおおおっーー!!!」
「貴様が余の唇をか?愛いやつよのう」
「それに、教室の座学など1000時間学ぶより、こうして生死をかけた、命のやり取りを1回する方が、はるかに有益なのじゃ!シルバニアもそう言っておったぞ!」
「なんやて!ほなこれも、あの女狐の策略かあああ!!」
「おっと、口が滑ってしまったようじゃ。フッ、まあ貴様も見る限り、そろそろ限界のようじゃて。今日のところはこれくらいで見逃してやるとするか。
それに夜の方の体力も、残しておいてもらわんといけないからな・・・・・」
セキはもうこの時点で、さらにツッコミ続ける気力さえも失いかけていた。
「小僧、貴様はよくやった!あとは余に任せて、その体力を温存しておくがよい」
「今から余の力を見せてやろう!心して刮目せよ!小僧!!!」クリムゾンが吠えた!
「とどめじゃ!ウルトラ・スーパー・グレート・ワンダフル・クラッシュパーーーーンチ!!」
・・・・・・・あれは夢やったんか・・・・・気がつけばセキは〈神秘の泉の銀狐 シルバニア〉の膝枕に顔を埋めていた。
「くおらあああ!この女狐が!オマエのせいで危うく死んでまうとこやったやんけ!!!」
「よくぞご無事で、私の愛しい旦那様。初陣を飾れたこと、さすがです」
「フッ、まあ今回は至れり尽くせり、余が全てお膳立てしてやったのだがな」
「なにゆうとんねん!この暴力マニアが!オマエのせいでオレはなあ、ほんまもんの地獄ってやつがどう言うもんか、よう分かってもうたわ!」
セキが吠える。
「セキさん、ほぼ三途の川が見えていましたよね!あのままだと、危うく逝きそうだったけど」サンズ カワ・・・
「「いや、危なそうなんわかっとったら、もっとはよ助け出せや!」
セキが怒る。
「セキ、今回は上手に死ねなかったね!
きっと筋肉の神様がもっとトレーニングを続けるために生かしてくれたんだよ!」
ノロイ シオリ・・・・オマエと言うやつは・・・
「なに眠たいことゆうとんねん!なんでも筋肉で片付けようとすんな!そもそも俺は今まで筋トレなんかしたこともないんや!」
セキが激怒する。
「セキ、、、ウタレ強い、、この後のプレイがタノシミ、、」
副担任のホワイティアが、最後に不穏な笑みを浮かべる。
「なに怖いことゆうとんねん!オマエらのおかげで、オレだけ打たれっぱなしになったんやろが!なんぼお星様見えたか知らんやろ!」
セキはもうどうでもよくなった・・・・・
そしてそのまま虚な意識と快楽の中で落ちそうになったセキは、ハッと気づいた。
「いや、ちょっと待てやオマエら!ここは魔法少女 養成学校とちゃうんかい!!」
「はい、その通りです。そもそも今回の戦いってなんやねん?
全然、魔法なんか使っとらんやろが?ほんで美少女が主役やなかったやろ!?「
しかもなんでロボやねん!正味なハナシ?そもそもや、もうゆうてることがメチャクチャやろ!」
大事なツッコミを忘れていたことを思い出し、セキは改めてツッコミ直した。
「まあ、貴様が好きだと思ってな、モチベーションを上げるに良いと思い、チャレンジしてみたのじゃ!その甲斐あって生きておろうが。敵は余が一掃したから安心せい!」
クリムゾンが笑う。
「初日にしては上出来です。まだまだお伝えしたい事は山ほどありますが、まずはカラダで覚えた方が早いと思い、実践で戦場に出てもらいました。
これからが面白くなってくるのです。それにまだ他の上級生も魔女も、職員も賢者も紹介していませんから、、」
理事長のシルバニアが意味ありげに微笑んだ。
「いや、右も左もわからん初心者に、命を張った実践はキツすぎるやろ、、
それにオレはこないな重い使命は知らんかったし、そもそも男がなんで魔法少女やねん!?
それに全裸はキツいやろ!」
「大丈夫、あなたは関西弁ですが、ビジュアル的には美形ですから、読者も私たちも一向に構いません」
今日一日、怒涛のボケをかまし続けてきた理事長〈神秘の泉の銀狐 シルバニア〉が入学式を手際よく、そして体裁よく見事に締めたのだ。
「いったい、どないなっとるんや、ここは・・・正味なハナシ・・・・・・」
こうしてセキ ニシヒトは晴れて、
〈超最先端 高度職業人 養成学校〉である
〈国立防衛隊附属 魔法少女 養成大学〉の方に、無事入学したのである。
地球の人類抹殺を企てる、暴走した恐るべき〈マスターAIとデスドール軍団〉から、日本と人類の平和を守るため、人類最後の最終兵器である〈国防魔女〉としてその命と青春を捧げることになったのだ。
〈魔法少女 関 西人〉・・・彼こそは、ガラ悪き関西弁で次々とツッコミを決める男、漆黒の暗黒関西人 セキ ニシヒト」なり・・・・
「シルバニアよ、最後のピースがついに揃ったようじゃな。。。。」
老賢者が呟く。
「ええ、なんとか間に合ったようです。この世代の人間界でも指折りの、粒揃いの精鋭たちがこの大学に集ってくれたようです」
理事長シルバニアが応ずる。
「そなたたちには感謝しておる。この落ちぶれてしまった日本のために、一つ返事で精鋭揃いの凄腕の魔女たちが協力してくれるとは、、、」
「いえ、何をおっしゃいますか。そもそも今の私たちがあるのは、あなたたち日本人のおかげなのですから。
あなたたちの先代が始めた小説や漫画やアニメの想像力が、あなたたち厨二病の世代に引き継がれ、空想力と妄想力をさらに発展させ、現実逃避とファンタジーの基礎を発展させてくれたおかげで、そのエネルギーが実態を持ち、私たちのような異世界を創造し、あまつさえ魔法少女をすら実体化させたのですから」
「その想像上のファンタジーが、AIの進化と科学技樹の発達によって解明され、そして今ではあなたたち、失われた30年を生きるロストジェネレーションたちが日本の中核となりました。私たちはあなたたちの真の実力とオタク度合い、腐女子度合いを十分知っています」
「そんな素晴らしい世界を決して失ってはいけません。そのために私たちは恩返しに来たのですから」
「そうじゃな、、、効率を極めた究極の計算機の化け物なんぞに未来はない。
魂も精神も心も感情もないAIには、真の創造力など生み出せぬ。究極の猿真似が人間のように振る舞う域を見て、AIには心があると勘違いしているだけなのじゃ。。」
おっしゃる通りです。日本人にはこの真実を深く胸に刻み込んでほしいと願うばかりです」
「そうじゃのう!魔法少女たちと共に、もう一度人間の世界を取り戻し、真の未来を新たに創造しようではないか!この素晴らしき世界に乾杯じゃ!」
「乾杯!」
二人の熱い心が繋がり、
ここに次世代の新たなSFファンタジーが幕を開けたのである。
【本の未来ため、残された人類のために・・・戦えセキ!【魔法少女 セキ 出撃せよ!】